問題文
[9AM1]
P. Boss が提唱した概念で、認知症などにより、以前のその人とすっかり様子が変わり、身体的には存在しているが心理的に存在していないと、家族などが苦痛に感じる状態を表す概念として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.予期悲嘆
- 2.複雑性悲嘆
- 3.外的対象喪失
- 4.あいまいな喪失
- 5.公認されない悲嘆
答え
- 4.あいまいな喪失
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、P. Boss が提唱したあいまいな喪失の理解が問われています。
特に、認知症などで本人の身体はそこにある一方、家族が「以前のその人らしさが失われた」と感じる状態をどう捉えるかが重要です。
解説
あいまいな喪失は、喪失の境界がはっきりしないために、悲嘆が整理されにくく、周囲からも理解されにくい喪失体験を指します。
P. Boss は、あいまいな喪失を大きく2つに整理しました。
- 身体的には不在だが、心理的には存在している喪失
- 身体的には存在しているが、心理的には不在と感じられる喪失
本問の認知症の例は、後者に当たります。家族から見ると、本人は目の前にいるにもかかわらず、以前の性格、記憶、関係性、反応が大きく変化し、「よく知っていたあの人がいなくなってしまった」と感じることがあります。
このような喪失は、死別のように社会的に区切りが明確ではありません。そのため、家族は悲しみ、怒り、罪悪感、戸惑いを抱えながらも、自分の苦痛を言語化しにくいことがあります。
国家試験ではここを押さえる
認知症、行方不明、失踪、災害、重い精神疾患などでは、喪失が明確に完結しないことがあります。身体的存在と心理的存在のずれに注目します。
公認心理師としては、家族の苦痛を「介護負担」だけに還元せず、喪失体験として理解することが重要です。心理教育、家族支援、多職種連携を通して、家族が感じている複雑な感情を扱えるように支援します。
選択肢の確認
1.予期悲嘆
判定:誤り。
予期悲嘆は、死別や重大な喪失が近い将来に起こると予測される段階で生じる悲嘆です。終末期医療や重い疾患の進行過程でみられることがあります。本問は、身体的には存在しているが心理的には存在していないと感じられる状態を問うているため、最も適切ではありません。
2.複雑性悲嘆
判定:誤り。
複雑性悲嘆は、死別後の悲嘆反応が長期化し、強い苦痛や生活上の支障が持続する状態を指します。本問では、死別後の悲嘆の長期化ではなく、認知症などによって本人の存在の意味があいまいになる状態が中心です。
3.外的対象喪失
判定:誤り。
外的対象喪失は、愛着対象や重要な他者など外界に存在する対象を失うことを広く指す概念です。ただし、本問のように「身体的には存在するが心理的には不在」というあいまいさを特に表す概念としては不十分です。
4.あいまいな喪失
判定:最も適切。
あいまいな喪失は、喪失が明確に完結せず、存在と不在の境界があいまいなために苦痛が生じる状態を指します。認知症では、本人は身体的には存在していても、家族が以前のその人らしさを失ったように感じることがあり、本問の説明に合致します。
5.公認されない悲嘆
判定:誤り。
公認されない悲嘆は、社会的に悲嘆として認められにくい喪失に伴う悲嘆を指します。ペットロス、離婚、秘密にされていた関係の喪失などが例になります。本問でも家族の苦痛が周囲から理解されにくい場合はありますが、中心概念は身体的存在と心理的存在のずれを表すあいまいな喪失です。
覚えるポイント
- P. Boss とくれば、まずあいまいな喪失を想起します。
- 認知症では「身体的には存在、心理的には不在」と感じられることがあります。
- あいまいな喪失は、死別のように区切りが明確でないため、家族支援で重要な視点になります。
- 予期悲嘆は「これから起こる喪失への悲嘆」、複雑性悲嘆は「死別後に長期化する強い悲嘆」と整理します。
9AM2
問題文
[9AM2]
公認心理師による反省的実践の中核となる考え方を 1 つ選べ。
選択肢
- 1.クライエントの要望に従って支援する。
- 2.クライエントの内省力を基盤として支援する。
- 3.科学的知見に基づいて、既存の解決法に沿って支援する。
- 4.スーパーバイザーの指導に従って自身の支援方法を修正する。
- 5.自身の問題把握や解決の仕方を振り返り、検討しながら支援する。
答え
- 5.自身の問題把握や解決の仕方を振り返り、検討しながら支援する。
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、公認心理師の専門性を高めるうえで重要な反省的実践の基本的な考え方が問われています。
反省的実践では、単に知識や手順を当てはめるのではなく、支援者自身が自分の理解、判断、関わり方を振り返りながら実践を改善します。
解説
反省的実践とは、専門職が実践の中で自分の判断や行動を振り返り、状況に応じて支援の意味や方法を検討し続ける姿勢を指します。
心理支援では、同じ診断名や同じ主訴であっても、クライエントの背景、価値観、関係性、リスク、生活環境は異なります。そのため、既存の技法を機械的に当てはめるだけでは十分ではありません。
公認心理師には、科学的知見、倫理、説明と同意、多職種連携、守秘義務、文化的背景などを踏まえながら、自身の支援を点検し続ける態度が求められます。
公認心理師としての注意点
反省的実践は、自己流で支援することではありません。専門的知識、倫理、スーパービジョン、チーム内の検討を活用しながら、自分の見立てや関わりを振り返ることが大切です。
本問では、「自身の問題把握や解決の仕方を振り返り、検討しながら支援する」という選択肢が、反省的実践の中核を最もよく表しています。
選択肢の確認
1.クライエントの要望に従って支援する。
判定:誤り。
クライエントの希望や価値観を尊重することは重要です。しかし、反省的実践は、要望にそのまま従うことではありません。専門職として、リスク、倫理、支援目標、妥当な介入方法を検討する必要があります。
2.クライエントの内省力を基盤として支援する。
判定:誤り。
クライエントの内省を支えることは心理支援で重要ですが、反省的実践の中心はクライエントの内省力ではなく、支援者自身が自分の実践を振り返ることです。
3.科学的知見に基づいて、既存の解決法に沿って支援する。
判定:誤り。
科学的知見に基づくことは重要です。ただし、反省的実践は、既存の解決法に単純に沿うことではありません。個別の状況に応じて、自分の見立てや介入の妥当性を検討し続ける点が中核です。
4.スーパーバイザーの指導に従って自身の支援方法を修正する。
判定:誤り。
スーパービジョンは反省的実践を支える重要な方法です。しかし、反省的実践は指導に従うことだけではなく、自身の問題把握、判断、感情、関係性を主体的に振り返る姿勢を含みます。
5.自身の問題把握や解決の仕方を振り返り、検討しながら支援する。
判定:正しい。
反省的実践の中核を表しています。公認心理師は、自分の見立て、支援方針、関わり方、倫理的判断を振り返り、必要に応じて修正しながら支援を進めます。
覚えるポイント
- 反省的実践は、支援者自身の見立てや関わりを振り返る実践です。
- クライエントの要望に従うだけ、既存の技法を当てはめるだけでは不十分です。
- スーパービジョンは反省的実践を支える方法ですが、反省的実践そのものは主体的な振り返りを含みます。
- 公認心理師には、科学的知見と倫理を踏まえながら、自分の実践を検討し続ける姿勢が求められます。
9AM3
問題文
[9AM3]
精神科リエゾンチーム加算において、公認心理師の他にチーム構成要件を満たす職種として、適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.薬剤師
- 2.言語聴覚士
- 3.臨床検査技師
- 4.臨床工学技士
- 5.診療放射線技師
答え
- 1.薬剤師
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、医療領域における精神科リエゾンチームの構成職種が問われています。
精神科リエゾンは、身体疾患の治療を受けている患者に生じる精神症状、心理的苦痛、せん妄、不安、抑うつ、服薬上の問題などに対して、多職種で支援するチームアプローチです。
解説
精神科リエゾンチーム加算では、精神科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師、作業療法士、薬剤師など、精神科医療や心理社会的支援に関わる専門職がチームとして関与することが想定されます。
本問では、公認心理師以外にチーム構成要件を満たす職種として適切なものを選びます。選択肢の中では、薬剤師が該当します。
薬剤師は、向精神薬を含む薬物療法、身体疾患治療薬との相互作用、副作用、服薬状況の確認などに関与します。リエゾンチームでは、心理的支援だけでなく、薬物療法や身体管理を含めた総合的な支援が重要です。
多職種連携での注意点
医療領域では、公認心理師だけで支援を完結させません。医師、看護師、薬剤師、精神保健福祉士、作業療法士などと情報を共有し、役割分担を明確にします。
言語聴覚士、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師はいずれも医療に重要な職種ですが、本問の精神科リエゾンチーム加算における構成職種としては、薬剤師が最も適切です。
選択肢の確認
1.薬剤師
判定:正しい。
薬剤師は、精神科リエゾンチーム加算において、公認心理師以外にチーム構成要件を満たす職種として適切です。薬物療法、副作用、相互作用、服薬支援などの観点からチーム医療に貢献します。
2.言語聴覚士
判定:誤り。
言語聴覚士は、言語、聴覚、嚥下、コミュニケーションなどの支援を行う重要な専門職です。しかし、本問で問われている精神科リエゾンチーム加算の構成職種としては、選択肢の中では薬剤師が適切です。
3.臨床検査技師
判定:誤り。
臨床検査技師は、検体検査や生理機能検査などを担う専門職です。医療チームにおいて重要ですが、精神科リエゾンチーム加算の構成要件を満たす職種として本問で求められているものではありません。
4.臨床工学技士
判定:誤り。
臨床工学技士は、生命維持管理装置など医療機器の操作や保守管理を担います。精神科リエゾンチームの構成職種として問われるものではありません。
5.診療放射線技師
判定:誤り。
診療放射線技師は、画像検査や放射線治療に関わる専門職です。医療に不可欠な職種ですが、精神科リエゾンチーム加算の構成要件を満たす職種としては、本問では該当しません。
覚えるポイント
- 精神科リエゾンは、身体医療の場で精神・心理面の問題に対応する多職種チームです。
- 公認心理師は、心理アセスメント、心理支援、家族支援、チーム内の心理的見立ての共有を担います。
- 薬剤師は、服薬、副作用、相互作用など薬物療法の観点からチームに関与します。
- 医療領域の制度問題では、職種名とチーム内の役割をセットで覚えます。
9AM4
問題文
[9AM4]
G. Engel が提案した、従来の医学モデルの考え方を補完し、人間の健康や疾患を多面的に理解するための枠組みとして、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.成長モデル
- 2.認知行動モデル
- 3.多理論統合モデル
- 4.生物心理社会モデル
- 5.素因ストレスモデル
答え
- 4.生物心理社会モデル
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、G. Engel が提案した生物心理社会モデルの理解が問われています。
従来の医学モデルを補完し、健康や疾患を生物学的要因だけでなく、心理的要因、社会的要因を含めて理解する枠組みです。
解説
生物心理社会モデルは、人間の健康や疾患を次の3つの側面から総合的に理解する考え方です。
- 生物的側面:遺伝、脳機能、身体疾患、薬物、睡眠、栄養など
- 心理的側面:認知、感情、性格、ストレス対処、トラウマ体験など
- 社会的側面:家族、学校、職場、経済状況、文化、地域資源、制度など
G. Engel は、疾患を身体の異常だけで説明する従来の生物医学モデルを補完する枠組みとして、生物心理社会モデルを提案しました。
公認心理師の実践では、このモデルが非常に重要です。例えば、うつ症状がある人を支援する場合でも、神経生物学的要因、認知の特徴、対人関係、職場環境、家族関係、生活リズムなどを合わせて見立てます。
国家試験ではここを押さえる
G. Engel といえば生物心理社会モデルです。疾患や健康を「身体だけ」「心だけ」でなく、複数の要因の相互作用として理解します。
このモデルは、医療・保健、福祉、教育、産業、司法など、どの領域でも公認心理師のアセスメントと支援方針の基本になります。
選択肢の確認
1.成長モデル
判定:誤り。
成長モデルは、人間の成長や発達、自己実現などに焦点を当てる考え方として用いられることがあります。しかし、G. Engel が提案した健康や疾患を多面的に理解する枠組みではありません。
2.認知行動モデル
判定:誤り。
認知行動モデルは、認知、感情、行動、身体反応の関連に注目する心理療法や心理支援の枠組みです。重要なモデルですが、G. Engel が提案した医学モデルを補完する枠組みとしては、生物心理社会モデルが該当します。
3.多理論統合モデル
判定:誤り。
多理論統合モデルは、行動変容の段階などを説明する文脈で用いられるモデルとして知られます。本問の「G. Engel」「従来の医学モデルを補完」「健康や疾患を多面的に理解」という記述には合いません。
4.生物心理社会モデル
判定:最も適切。
G. Engel が提案した枠組みです。健康や疾患を、生物的要因、心理的要因、社会的要因の相互作用として理解します。公認心理師のアセスメントや多職種連携においても基本となる考え方です。
5.素因ストレスモデル
判定:誤り。
素因ストレスモデルは、個人がもつ脆弱性や素因にストレスが加わることで精神疾患などが生じるという考え方です。精神疾患の理解に有用ですが、G. Engel が提案した多面的な医学モデルの枠組みとしては生物心理社会モデルが適切です。
覚えるポイント
- G. Engel とくれば、生物心理社会モデルです。
- 生物心理社会モデルは、生物・心理・社会の3側面から健康や疾患を理解します。
- 公認心理師の見立てでは、症状だけでなく生活環境、家族、学校、職場、制度も確認します。
- 素因ストレスモデルは「脆弱性とストレスの相互作用」と整理します。
9AM5
問題文
[9AM5]
最初に提示された数値や直観的に判断した値を基準として用い、その数値を踏まえて推定を行う方略に該当するものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.再認ヒューリスティック
- 2.代表性ヒューリスティック
- 3.係留と調整ヒューリスティック
- 4.利用可能性ヒューリスティック
- 5.シミュレーション・ヒューリスティック
答え
- 3.係留と調整ヒューリスティック
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、判断や意思決定におけるヒューリスティックの種類が問われています。
「最初に提示された数値」や「直観的に判断した値」を基準にして推定する、という記述が手がかりです。
解説
ヒューリスティックとは、複雑な判断を素早く行うための簡便な方略です。日常生活では役立つ一方で、判断の偏りであるバイアスを生むことがあります。
本問の説明は、係留と調整ヒューリスティックに当たります。
係留とは、最初に与えられた値や情報に判断が引っ張られることです。その後、自分なりに調整をして推定しますが、調整が不十分になりやすいため、最初の値の影響が残ります。
例えば、最初に「この商品の定価は10万円です」と示された後に割引価格を提示されると、その10万円が基準となり、実際の価値判断が影響を受けることがあります。
ひっかけポイント
ヒューリスティックの問題では、「基準に引っ張られる」「思い出しやすさ」「典型例らしさ」「知っているかどうか」の違いを押さえます。
公認心理師国家試験では、認知心理学の基礎として、判断や意思決定の偏りを理解しておくことが重要です。心理支援でも、クライエントや支援者自身の判断が特定の情報に引きずられていないかを意識することがあります。
選択肢の確認
1.再認ヒューリスティック
判定:誤り。
再認ヒューリスティックは、知っている、聞いたことがある、見覚えがあるといった再認のしやすさを判断に利用する方略です。本問のように最初の数値を基準にして推定する方略ではありません。
2.代表性ヒューリスティック
判定:誤り。
代表性ヒューリスティックは、ある対象が典型例やステレオタイプにどれほど似ているかをもとに判断する方略です。確率や基礎率を軽視しやすい点が特徴です。本問の数値を基準にした推定とは異なります。
3.係留と調整ヒューリスティック
判定:正しい。
最初に提示された数値や直観的に判断した値を係留点として、その値を基準に調整しながら推定する方略です。本問の説明に合致します。
4.利用可能性ヒューリスティック
判定:誤り。
利用可能性ヒューリスティックは、思い出しやすい情報、印象に残っている事例、最近経験した出来事をもとに判断する方略です。最初に提示された数値を基準にする方略ではありません。
5.シミュレーション・ヒューリスティック
判定:誤り。
シミュレーション・ヒューリスティックは、ある出来事が起こる可能性や結果を、頭の中でどれだけ容易に想像できるかによって判断する方略です。本問の係留点に基づく推定とは異なります。
覚えるポイント
- 係留と調整ヒューリスティックは、最初の値に判断が引っ張られる方略です。
- 利用可能性ヒューリスティックは、思い出しやすさに基づく判断です。
- 代表性ヒューリスティックは、典型例らしさに基づく判断です。
- 再認ヒューリスティックは、知っているかどうかを判断材料にします。
9AM6
問題文
[9AM6]
一貫して観察される行動特徴やそのまとまりをパーソナリティの構成要素とみなし、それらを組み合わせてパーソナリティを記述する考え方として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.気質論
- 2.状況論
- 3.特性論
- 4.類型論
- 5.相互作用論
答え
- 3.特性論
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、パーソナリティ心理学における特性論の基本的な考え方が問われています。
「一貫して観察される行動特徴」や「そのまとまりを構成要素とする」という表現が、特性論を示す手がかりです。
解説
特性論は、個人に比較的一貫してみられる行動、感情、思考の傾向を「特性」として捉え、それらの組合せによってパーソナリティを記述する考え方です。
例えば、外向性、神経症傾向、誠実性、協調性、開放性などの特性を用いて、その人のパーソナリティを連続的に理解します。ビッグ・ファイブ理論も、特性論の代表的な考え方として整理できます。
特性論では、人を少数のタイプに分類するというよりも、複数の特性の強弱の組合せとして捉えます。この点が、類型論との重要な違いです。
ひっかけポイント
類型論は「タイプに分ける」、特性論は「特性の組合せや強弱で記述する」と区別します。
心理アセスメントでは、質問紙法などによりパーソナリティ特性を測定し、支援方針や対人関係の理解に役立てることがあります。ただし、特性だけでその人を決めつけず、状況や発達歴、文化的背景も含めて理解することが大切です。
選択肢の確認
1.気質論
判定:誤り。
気質論は、生得的または早期からみられる情動反応や活動性などの個人差に注目する考え方です。本問の「一貫して観察される行動特徴やそのまとまりを構成要素として記述する」という説明には、特性論がより適切です。
2.状況論
判定:誤り。
状況論は、行動が個人の内的特性よりも状況や環境に大きく影響されると考える立場です。本問は、一貫した行動特徴をパーソナリティの構成要素とみなす考え方を問うため、状況論ではありません。
3.特性論
判定:最も適切。
特性論は、比較的一貫して観察される行動特徴や心理的傾向を特性として捉え、その組合せによってパーソナリティを記述します。本問の説明に合致します。
4.類型論
判定:誤り。
類型論は、人をいくつかのタイプに分類してパーソナリティを理解する考え方です。特性の強弱や組合せで記述する特性論とは異なります。
5.相互作用論
判定:誤り。
相互作用論は、行動を個人特性と状況要因の相互作用として理解する考え方です。本問では、行動特徴をパーソナリティの構成要素として捉える考え方が問われているため、特性論が適切です。
覚えるポイント
- 特性論は、比較的一貫した特徴の組合せでパーソナリティを記述します。
- 類型論は、いくつかのタイプに分類して理解します。
- 状況論は、行動に対する状況や環境の影響を重視します。
- パーソナリティ理解では、特性だけでなく状況との相互作用もあわせて考えることが大切です。
9AM7
問題文
[9AM7]
探索的因子分析において、各項目に対する各共通因子の影響の程度を表す指標として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.共通性
- 2.固有値
- 3.因子寄与
- 4.因子負荷
- 5.因子間相関
答え
- 4.因子負荷
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、探索的因子分析における因子負荷の意味が問われています。
「各項目に対する各共通因子の影響の程度」という表現が、因子負荷を示す手がかりです。
解説
探索的因子分析は、複数の観測項目の背後にある共通因子を探索する統計的手法です。心理尺度の作成や構造の検討でよく使われます。
因子負荷は、各項目が各因子とどの程度関連しているかを示す指標です。言い換えると、その項目に対して共通因子がどの程度影響しているかを表します。
例えば、抑うつ尺度の項目で「気分が落ち込む」「興味がわかない」といった項目が同じ因子に高く負荷していれば、その因子は抑うつ気分に関わる因子として解釈できる可能性があります。
ひっかけポイント
因子分析では、因子負荷、共通性、固有値、因子寄与を混同しやすいです。「項目と因子の関係」は因子負荷と覚えます。
心理統計の問題では、指標の定義を正確に区別することが重要です。計算式を丸暗記するよりも、「何と何の関係を表しているか」を押さえると判断しやすくなります。
選択肢の確認
1.共通性
判定:誤り。
共通性は、ある項目の分散のうち、共通因子によって説明される割合を表します。項目全体としてどの程度因子で説明できるかを示す指標であり、各項目に対する各共通因子の影響の程度そのものを表す因子負荷とは異なります。
2.固有値
判定:誤り。
固有値は、ある因子が全体の分散をどの程度説明しているかを表す指標です。因子数を判断する際の参考になりますが、各項目に対する各共通因子の影響の程度を表すものではありません。
3.因子寄与
判定:誤り。
因子寄与は、各因子が全項目の分散をどの程度説明しているかを表します。因子全体の説明量に関わる指標であり、項目ごとの因子との関係を示す因子負荷とは異なります。
4.因子負荷
判定:最も適切。
因子負荷は、各項目と各共通因子との関連の強さ、または各共通因子が各項目に及ぼす影響の程度を表します。本問の説明に合致します。
5.因子間相関
判定:誤り。
因子間相関は、因子同士の相関を表します。斜交回転を用いる場合などに確認されますが、各項目に対する各共通因子の影響の程度を表すものではありません。
覚えるポイント
- 因子負荷は、項目と因子の関連の強さを表します。
- 共通性は、項目の分散が共通因子でどの程度説明されるかを表します。
- 固有値や因子寄与は、因子が全体をどの程度説明するかに関わります。
- 因子間相関は、因子同士の関連を表します。
9AM8
問題文
[9AM8]
認知心理学において、正しい答えを出せるように決められた方法や手順を表す概念として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.スクリプト
- 2.モデリング
- 3.アルゴリズム
- 4.フレーミング
- 5.プロトタイプ
答え
- 3.アルゴリズム
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、認知心理学におけるアルゴリズムの意味が問われています。
「正しい答えを出せるように決められた方法や手順」という表現が、アルゴリズムを示します。
解説
アルゴリズムとは、問題解決において、正しい答えに到達できるように定められた手続きや規則のことです。
例えば、筆算の手順、決められた計算手順、一定のルールに従って全ての可能性を検討する方法などが該当します。手順に従えば正答に到達しやすい一方で、時間や労力がかかる場合があります。
これに対して、ヒューリスティックは素早く判断するための簡便な方略ですが、必ず正答に到達できるとは限りません。
ひっかけポイント
アルゴリズムは「正答に到達するための決められた手順」、ヒューリスティックは「早く判断するための近道」と整理します。
認知心理学では、問題解決、判断、意思決定、記憶、概念形成などに関わる用語が多く出題されます。似た用語の定義を具体例とセットで覚えることが大切です。
選択肢の確認
1.スクリプト
判定:誤り。
スクリプトは、日常的な出来事や場面についての典型的な流れに関する知識構造です。例えば、レストランに入る、注文する、食事をする、会計するという一連の流れがスクリプトに当たります。正答を出すための決められた手順ではありません。
2.モデリング
判定:誤り。
モデリングは、他者の行動を観察し、それを手本として学習することを指します。観察学習の文脈で重要ですが、本問の「正しい答えを出せるように決められた方法や手順」には該当しません。
3.アルゴリズム
判定:最も適切。
アルゴリズムは、問題解決において正しい答えに到達するための決められた方法や手順です。本問の説明に合致します。
4.フレーミング
判定:誤り。
フレーミングは、同じ内容でも提示のされ方や枠組みによって判断が変わることを指します。意思決定や判断のバイアスに関わる概念であり、正答に至る手順を表すものではありません。
5.プロトタイプ
判定:誤り。
プロトタイプは、あるカテゴリーを代表する典型例のことです。例えば、「鳥」と聞いてスズメやハトを典型例として思い浮かべるような場合です。問題解決の手順を表す概念ではありません。
覚えるポイント
- アルゴリズムは、正しい答えに到達するための決められた手順です。
- ヒューリスティックは、早く判断するための簡便な方略ですが、誤りも生じます。
- スクリプトは、出来事の典型的な流れに関する知識です。
- プロトタイプは、カテゴリーの典型例です。
9AM9
問題文
[9AM9]
言語によるコミュニケーションの発達の過程について、以下の中で、生じる順番が最後のものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.語彙が急増する。
- 2.象徴機能が獲得される。
- 3.三項関係の理解ができるようになる。
- 4.発話語数が増え、文法を扱えるようになる。
- 5.母語の言葉を聞き分けるのに不要な音素の識別ができなくなる。
答え
- 4.発話語数が増え、文法を扱えるようになる。
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、乳幼児期の言語コミュニケーションの発達順序が問われています。
音声知覚、三項関係、象徴機能、語彙の増加、文法の発達が、どのような順に現れるかを整理することが重要です。
解説
言語発達は、単語を話し始める前から始まっています。乳児は生後早期から音声を聞き分けますが、発達とともに母語に必要な音の識別が洗練され、母語に不要な音素の識別は低下していきます。
その後、乳児は自分、他者、対象を結びつける三項関係を理解するようになります。これは共同注意や指さしの理解とも関係し、言語によるコミュニケーションの基盤になります。
さらに、物を別のものとして扱ったり、言葉が対象を表すことを理解したりする象徴機能が発達します。言葉は象徴の一種であるため、象徴機能は語彙獲得に関係します。
語彙が増えた後、発話語数が増え、二語文、多語文、文法的な表現の理解や使用が発達していきます。したがって、選択肢の中で最後に生じるものとしては、発話語数が増え、文法を扱えるようになるが最も適切です。
国家試験ではここを押さえる
発達順序の問題では、「音の聞き分け」から「共同注意・三項関係」、さらに「象徴機能」「語彙増加」「文法発達」へ進む流れを押さえます。
発達には個人差がありますが、国家試験では一般的な発達の順序を問われます。年齢の細かな暗記だけでなく、各能力が次の発達の土台になる関係を理解しておくと解きやすくなります。
選択肢の確認
1.語彙が急増する。
判定:誤り。
語彙の急増は、初語の出現後、語彙が蓄積される過程でみられます。文法を扱えるようになる前段階として重要ですが、選択肢の中で最後に生じるものとしては、発話語数の増加と文法の発達の方が後になります。
2.象徴機能が獲得される。
判定:誤り。
象徴機能は、言葉やふり遊びなど、あるものを別のものとして表す能力に関係します。言語発達の重要な基盤ですが、文法を扱える段階より前に発達します。
3.三項関係の理解ができるようになる。
判定:誤り。
三項関係は、自分、他者、対象の関係を理解することです。共同注意や指さしの理解に関わり、言語コミュニケーションの基盤になります。語彙の急増や文法発達より前にみられる重要な発達です。
4.発話語数が増え、文法を扱えるようになる。
判定:正しい。
発話語数が増え、二語文、多語文、文法的表現を扱えるようになるのは、選択肢の中では後の段階です。語彙の増加を土台として、文を構成する力が発達していきます。
5.母語の言葉を聞き分けるのに不要な音素の識別ができなくなる。
判定:誤り。
乳児は当初、幅広い音韻を識別できますが、発達とともに母語に必要な音の処理が優位になり、母語に不要な音素の識別が低下します。これは言語発達のかなり早い段階でみられる変化です。
覚えるポイント
- 言語発達は、発話より前の音声知覚や共同注意から始まります。
- 三項関係は、自分、他者、対象を結びつける理解です。
- 象徴機能は、言葉やふり遊びの基盤になります。
- 語彙の増加の後に、発話語数が増え、文法を扱う力が発達します。
9AM10
問題文
[9AM10]
R. Pekrun らが示した達成関連感情のうち、活動関連感情に該当するものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.感謝
- 2.希望
- 3.楽しさ
- 4.安らぎ
- 5.誇らしさ
答え
- 3.楽しさ
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、R. Pekrun らの達成関連感情の分類が問われています。
達成関連感情は、学習や試験、課題遂行などの達成場面で生じる感情です。特に、感情が「活動そのもの」に関係するのか、「活動の結果」に関係するのかを区別します。
解説
R. Pekrun らは、学習や達成場面で生じる感情を整理し、達成関連感情として説明しました。
達成関連感情には、活動に関連する感情と、結果に関連する感情があります。
活動関連感情は、課題に取り組んでいる活動そのものに伴って生じる感情です。例えば、学習している最中の楽しさ、退屈、怒りなどが該当します。
一方、結果関連感情は、成功や失敗などの結果に対して生じる感情です。希望、不安、安らぎ、誇り、恥などが含まれます。
本問の選択肢では、活動そのものに伴う感情として楽しさが最も適切です。
ひっかけポイント
「希望」「安らぎ」「誇らしさ」は達成場面で重要な感情ですが、主に結果に関連する感情として整理されます。活動そのものに伴うかどうかを見ます。
教育領域では、児童生徒や学生の学習意欲を理解する際に、成績だけでなく、学習中の感情も重要です。公認心理師は、達成場面で生じる感情が学習行動や自己効力感に与える影響を考える必要があります。
選択肢の確認
1.感謝
判定:誤り。
感謝は、他者からの支援や好意に対して生じる感情です。達成場面に関連して生じることはありますが、R. Pekrun らの達成関連感情における活動関連感情としては、楽しさがより適切です。
2.希望
判定:誤り。
希望は、将来の成功や望ましい結果を予期するときに生じる結果関連の感情として整理されます。活動そのものに伴う感情ではないため、本問の活動関連感情には該当しません。
3.楽しさ
判定:正しい。
楽しさは、学習や課題遂行などの活動そのものに伴って生じる活動関連感情です。本問の正答です。
4.安らぎ
判定:誤り。
安らぎは、悪い結果を回避できた、課題が終わった、安心できる結果が得られたときなどに生じる結果関連の感情として整理されます。活動そのものに伴う感情としては、楽しさが適切です。
5.誇らしさ
判定:誤り。
誇らしさは、成功や達成という結果に対して生じる感情です。達成関連感情ではありますが、活動関連感情ではなく結果関連感情として理解します。
覚えるポイント
- 達成関連感情は、学習、試験、課題遂行などの達成場面で生じる感情です。
- 活動関連感情は、活動そのものに伴う感情です。
- 本問では、活動関連感情として楽しさを選びます。
- 希望、安らぎ、誇らしさは、主に達成の結果に関連する感情として整理します。
9AM11
問題文
[9AM11]
個人の特徴が示されたカードを、参加者が自分自身への当てはまり具合に応じて、あらかじめ設定された区分に分類する個人特性の測定手法として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.KJ 法
- 2.Q 分類法
- 3.エゴグラム
- 4.評定尺度法
- 5.語彙アプローチ
答え
- 2.Q 分類法
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、個人特性を測定する方法のうち、Q 分類法の特徴が問われています。
ポイントは、個人の特徴が書かれたカードを、本人への当てはまり具合に応じて、あらかじめ決められた区分へ分類することです。
解説
Q 分類法は、性格や自己概念などを測定するために、複数の記述カードを分類してもらう方法です。
カードには、「私は人と話すのが好きだ」「物事を慎重に考える」など、個人の特徴を表す文が書かれています。参加者は、それぞれのカードを「とても当てはまる」「どちらともいえない」「当てはまらない」などの区分に分けます。
特徴的なのは、単に1つずつ点数をつけるだけでなく、カード全体を相対的に並べたり、決められた分布に従って分類したりする点です。これにより、その人にとってどの特徴がより中心的かを把握しやすくなります。
ひっかけポイント
「カードを分類する」と聞くと KJ 法を連想しやすいですが、KJ 法はアイデアやデータをグループ化して整理する方法です。自己への当てはまりに応じて個人特性を測る場合は Q 分類法です。
公認心理師の学習では、検査名だけでなく、「何を」「どのように」測定する方法かを整理しておくことが重要です。
選択肢の確認
1.KJ 法
判定:誤り。
KJ 法は、収集した情報やアイデアをカード化し、内容の近さに基づいてグループ化して整理する方法です。質的研究や問題整理で用いられます。本問のように、自分自身への当てはまり具合に応じて個人特性カードを分類する測定手法ではありません。
2.Q 分類法
判定:最も適切。
Q 分類法は、個人の特徴を示したカードを、参加者が自分への当てはまり具合に応じて分類する方法です。自己概念やパーソナリティ特性を相対的に把握する手法として用いられます。
3.エゴグラム
判定:誤り。
エゴグラムは、交流分析に基づいて、批判的親、養育的親、成人、自由な子ども、順応した子どもなどの自我状態の特徴を図示する方法です。カードを当てはまり具合で分類する手法ではありません。
4.評定尺度法
判定:誤り。
評定尺度法は、各項目について「非常に当てはまる」から「全く当てはまらない」などの段階を選んで評価する方法です。個々の項目に評定値をつける方法であり、カードをあらかじめ設定された区分に分類する Q 分類法とは異なります。
5.語彙アプローチ
判定:誤り。
語彙アプローチは、日常言語に含まれる性格を表す語からパーソナリティ特性を抽出しようとする考え方です。ビッグ・ファイブなどの特性研究に関係しますが、カードを分類する個人特性の測定手法そのものではありません。
覚えるポイント
- Q 分類法は、特徴カードを自己への当てはまり具合で分類する方法です。
- KJ 法は、情報やアイデアをグループ化して整理する方法です。
- 評定尺度法は、項目ごとに段階評価を行う方法です。
- 「カードを分類」と出ても、何を基準に分類するのかを確認します。
9AM12
問題文
[9AM12]
不随意運動の抑制や筋緊張の調整、抗精神病薬による錐体外路症状などに関与する脳の領域として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.脳幹
- 2.帯状回
- 3.島皮質
- 4.大脳皮質
- 5.大脳基底核
答え
- 5.大脳基底核
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、運動調整に関わる脳部位としての大脳基底核が問われています。
手がかりは、不随意運動、筋緊張、抗精神病薬による錐体外路症状です。
解説
大脳基底核は、運動の開始、抑制、調整、筋緊張の調整に関わる脳の領域です。尾状核、被殻、淡蒼球などを含む神経回路が、運動のスムーズな調整に関係します。
大脳基底核の機能に障害が生じると、運動が過剰に出る、動きが少なくなる、筋緊張が変化するなどの症状が生じます。パーキンソン病やハンチントン病などの運動症状とも関係します。
また、抗精神病薬はドパミン受容体を遮断する作用をもつものがあり、その影響で錐体外路症状が出ることがあります。錐体外路症状には、パーキンソニズム、アカシジア、急性ジストニア、遅発性ジスキネジアなどがあります。
国家試験ではここを押さえる
錐体外路症状、不随意運動、筋緊張の調整が出たら、大脳基底核を想起します。
公認心理師は薬物療法を実施する職種ではありませんが、医療領域では薬の副作用や身体症状に気づき、医師、看護師、薬剤師と連携する視点が必要です。心理面だけでなく、身体症状や薬剤の影響を含めてアセスメントすることが大切です。
選択肢の確認
1.脳幹
判定:誤り。
脳幹は、中脳、橋、延髄などを含み、呼吸、循環、覚醒水準、反射など生命維持に関わる機能を担います。運動にも関わりますが、本問の不随意運動、筋緊張、錐体外路症状に最も関係する領域としては大脳基底核が適切です。
2.帯状回
判定:誤り。
帯状回は、感情、注意、動機づけ、痛みの情動的側面などに関わる領域です。本問の錐体外路症状や筋緊張の調整の中心としては適切ではありません。
3.島皮質
判定:誤り。
島皮質は、内臓感覚、身体感覚、情動、自律神経反応、味覚などに関わります。不随意運動の抑制や抗精神病薬による錐体外路症状に最も関与する領域ではありません。
4.大脳皮質
判定:誤り。
大脳皮質は、感覚、運動、認知、言語、思考など多様な機能を担います。運動野は随意運動に関わりますが、本問で強調されている不随意運動、筋緊張、錐体外路症状には大脳基底核がより直接的に関係します。
5.大脳基底核
判定:最も適切。
大脳基底核は、運動の抑制や調整、筋緊張の調整に関わります。抗精神病薬による錐体外路症状とも関連が深く、本問の説明に合致します。
覚えるポイント
- 大脳基底核は、運動の調整、不随意運動、筋緊張に関わります。
- 抗精神病薬の副作用として、錐体外路症状が問題になることがあります。
- 錐体外路症状には、パーキンソニズム、アカシジア、ジストニア、ジスキネジアなどがあります。
- 公認心理師も、薬の副作用が疑われる身体症状に気づいたら医療職と連携します。
9AM13
問題文
[9AM13]
U. Bronfenbrenner が提唱した生態学的システム論において、子どもを中心とした場合、子どもの家庭と在籍する幼稚園の相互関係を表す用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.メゾシステム
- 2.エクソシステム
- 3.クロノシステム
- 4.マクロシステム
- 5.ミクロシステム
答え
- 1.メゾシステム
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、U. Bronfenbrenner の生態学的システム論における各システムの区別が問われています。
子どもを中心に考えたとき、家庭と幼稚園という、子どもが直接関わる複数の場面同士の関係を表すのはメゾシステムです。
解説
生態学的システム論は、子どもの発達を、本人だけでなく、家庭、学校、地域、社会制度、文化、時代変化などの環境との相互作用から理解する理論です。
子どもの発達を支える環境は、いくつかの層として整理されます。
ミクロシステムは、子どもが直接関わる環境です。家庭、幼稚園、学校、友人関係などが該当します。
メゾシステムは、複数のミクロシステム同士の相互関係です。例えば、家庭と幼稚園の連携、保護者と担任の関係、家庭での養育方針と園での関わりのつながりなどが該当します。
本問では、子どもの家庭と在籍する幼稚園の相互関係が問われているため、正答はメゾシステムです。
国家試験ではここを押さえる
「本人が直接関わる場」はミクロシステム、「直接関わる場同士の関係」はメゾシステムです。
公認心理師の支援でも、子ども本人だけを見て判断するのではなく、家庭、園、学校、地域資源のつながりを把握することが重要です。教育領域や福祉領域では、保護者支援や関係機関連携の視点にもつながります。
選択肢の確認
1.メゾシステム
判定:最も適切。
メゾシステムは、子どもが直接関わる複数のミクロシステム同士の相互関係を表します。家庭と幼稚園の相互関係は、家庭というミクロシステムと幼稚園というミクロシステムの関係であるため、メゾシステムに該当します。
2.エクソシステム
判定:誤り。
エクソシステムは、子どもが直接参加していないが、子どもに影響を及ぼす環境を指します。保護者の職場、地域の行政サービス、保育制度などが例です。本問の家庭と幼稚園はいずれも子どもが直接関わる場であり、その相互関係はメゾシステムです。
3.クロノシステム
判定:誤り。
クロノシステムは、時間の経過や発達段階、社会的変化、ライフイベントなどの時間的側面を表します。家庭と幼稚園の相互関係そのものを指す用語ではありません。
4.マクロシステム
判定:誤り。
マクロシステムは、文化、価値観、法律、社会制度、経済状況など、より大きな社会的文脈を表します。家庭と幼稚園の具体的な相互関係を表す用語ではありません。
5.ミクロシステム
判定:誤り。
ミクロシステムは、家庭や幼稚園など、子どもが直接関わる個々の環境を指します。本問では、家庭と幼稚園という複数のミクロシステムの相互関係が問われているため、メゾシステムが適切です。
覚えるポイント
- ミクロシステムは、子どもが直接関わる場です。
- メゾシステムは、ミクロシステム同士の関係です。
- エクソシステムは、子どもが直接関わらないが影響を受ける環境です。
- マクロシステムは、文化や社会制度など大きな文脈です。
- クロノシステムは、時間経過や社会変化を含む視点です。
9AM14
問題文
[9AM14]
生後間もなくから、子どもが養育者の言葉かけに応じて身体を動かしたり、子どもの声に養育者がほほ笑んだりする同調的な相互作用を表す用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.共同注意
- 2.情動伝染
- 3.社会的参照
- 4.マザリーズ
- 5.エントレインメント
答え
- 5.エントレインメント
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、乳児と養育者の早期相互作用を表すエントレインメントが問われています。
手がかりは、生後間もなくからみられる、子どもと養育者のリズムの合った同調的なやりとりです。
解説
エントレインメントは、乳児と養育者の間でみられる、リズムを合わせるような同調的相互作用を指します。
例えば、養育者が語りかけると乳児が手足を動かす、乳児の発声に養育者が笑顔で応答する、声や表情や身体の動きがタイミングよくかみ合うといったやりとりです。
このような相互作用は、生後早期からのコミュニケーションの土台になります。乳児はまだ言葉を話せなくても、養育者との表情、声、身体運動のやりとりを通して、対人関係のリズムを経験しています。
ひっかけポイント
共同注意や社会的参照は、発達が進んでから重要になる対人理解です。本問の「生後間もなく」「同調的な相互作用」という表現から、エントレインメントを選びます。
公認心理師の発達理解では、乳児の行動だけでなく、養育者との相互作用を観察することが重要です。早期の親子関係や愛着形成を理解するうえでも、非言語的なやりとりに注目します。
選択肢の確認
1.共同注意
判定:誤り。
共同注意は、子どもと他者が同じ対象に注意を向け、その対象について注意を共有することです。指さしや視線の共有などに関係します。本問の生後間もなくからみられる身体運動や表情の同調的相互作用とは異なります。
2.情動伝染
判定:誤り。
情動伝染は、他者の感情表出に影響されて、自分にも似た感情が生じる現象です。泣いている子につられて泣くような例が挙げられます。本問は感情がうつることではなく、養育者と乳児のリズムの合った相互作用を問うています。
3.社会的参照
判定:誤り。
社会的参照は、不確かな状況で、他者の表情や反応を手がかりに自分の行動を調整することです。例えば、見慣れない物に近づくかどうかを母親の表情を見て判断する場合です。本問の生後間もなくからの同調的相互作用とは異なります。
4.マザリーズ
判定:誤り。
マザリーズは、養育者が乳児に向けて話すときにみられる、高めの声、抑揚の大きさ、ゆっくりした話し方などの特徴を指します。養育者側の話しかけ方の特徴であり、乳児と養育者が互いに同調する相互作用全体を表す用語ではありません。
5.エントレインメント
判定:最も適切。
エントレインメントは、乳児と養育者の間で、声、表情、身体の動きなどがリズムを合わせるように同調する相互作用を指します。本問の説明に合致します。
覚えるポイント
- エントレインメントは、乳児と養育者の同調的な相互作用です。
- マザリーズは、乳児に向けた特徴的な話しかけ方です。
- 共同注意は、他者と同じ対象に注意を向けることです。
- 社会的参照は、他者の反応を手がかりに行動を調整することです。
- 乳児期の発達では、言葉の前に非言語的な相互作用が重要になります。
9AM15
問題文
[9AM15]
縦断的研究で用いられる同一年代で生まれた集団など、ある特性を共有する集団を表す用語として、正しいものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.内集団
- 2.コホート
- 3.準拠集団
- 4.アーティファクト
- 5.フォーカス・グループ
答え
- 2.コホート
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、発達研究や縦断的研究で用いられるコホートの意味が問われています。
「同一年代で生まれた集団」「ある特性を共有する集団」が手がかりです。
解説
コホートとは、同じ時期に生まれた、同じ時期に同じ経験をした、同じ特性を共有しているなど、共通する条件をもつ集団を指します。
発達心理学や疫学、社会調査では、同じ出生年や同じ世代の人々を追跡する研究が行われます。このような縦断的研究では、あるコホートを長期間追いかけることで、発達の変化や生活環境の影響を検討します。
ただし、研究結果を解釈するときには、年齢による変化なのか、その世代特有の経験による違いなのかを区別する必要があります。これをコホート効果といいます。
ひっかけポイント
コホートは「世代」や「共通特性をもつ集団」と関係します。内集団や準拠集団のような社会心理学の集団概念とは区別します。
心理統計・研究法では、研究デザインと用語の対応が重要です。縦断研究、横断研究、コホート、コホート効果をセットで押さえます。
選択肢の確認
1.内集団
判定:誤り。
内集団は、自分が所属している、または所属していると認識している集団を指します。社会心理学で、外集団との対比で用いられます。本問の縦断的研究で用いられる同一年代の集団を表す用語ではありません。
2.コホート
判定:正しい。
コホートは、同一年代で生まれた集団など、ある特性を共有する集団を指します。縦断的研究や発達研究でよく用いられる概念です。
3.準拠集団
判定:誤り。
準拠集団は、個人が自分の態度、価値観、行動を判断するときの基準とする集団です。本人が所属している場合も、所属していない場合もあります。本問の同一年代で生まれた集団を示す用語ではありません。
4.アーティファクト
判定:誤り。
アーティファクトは、研究や測定において、本来の現象ではなく、測定方法や手続きなどによって生じた見かけ上の結果や歪みを指します。ある特性を共有する集団を表す用語ではありません。
5.フォーカス・グループ
判定:誤り。
フォーカス・グループは、特定のテーマについて少人数の参加者が話し合い、その発言から質的データを得る調査方法です。縦断的研究で同一年代などの集団を表す用語ではありません。
覚えるポイント
- コホートは、同じ年代や同じ特性を共有する集団です。
- 縦断的研究では、同じ対象や集団を時間を追って調べます。
- コホート効果は、世代特有の経験が結果に影響することです。
- 内集団、準拠集団、フォーカス・グループとは意味が異なります。
9AM16
問題文
[9AM16]
クライエントの負担と検査結果の信頼性を考慮し、テストバッテリーの実施を控えるべき状態として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.認知症の初期
- 2.うつ病の回復期
- 3.不安障害の寛解期
- 4.統合失調症の再燃期
- 5.高次脳機能障害の亜急性期
答え
- 4.統合失調症の再燃期
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、心理検査を実施する際の適応判断が問われています。
テストバッテリーは複数の検査を組み合わせるため、クライエントの負担が大きくなりやすく、検査結果の信頼性にも注意が必要です。
解説
テストバッテリーとは、目的に応じて複数の心理検査を組み合わせ、クライエントを多面的に理解する方法です。知能、記憶、注意、人格、症状、生活機能などを組み合わせて評価します。
ただし、心理検査はいつでも実施すればよいわけではありません。急性期や症状が強く不安定な時期には、検査への集中が難しかったり、疲労や混乱が強まったりします。その結果、クライエントの負担が大きくなり、得られた結果の信頼性も低下します。
本問では、統合失調症の再燃期が最も適切です。再燃期には、幻覚、妄想、思考のまとまりにくさ、不安、興奮、睡眠障害などが強くなっている可能性があります。この時期に複数の検査を行うと、本人の負担が大きく、結果も状態依存的になりやすいため、実施を控える判断が必要です。
公認心理師としての注意点
心理検査では、検査を実施すること自体が支援になるとは限りません。本人の状態、目的、同意、疲労、リスク、結果の活用可能性を確認して実施時期を判断します。
状態が安定してから、主治医や多職種と連携し、必要性と負担を検討したうえで検査を計画することが重要です。
選択肢の確認
1.認知症の初期
判定:適切とはいえない。
認知症の初期では、認知機能の状態を把握するために心理検査や神経心理学的検査が有用な場合があります。疲労や不安への配慮は必要ですが、テストバッテリーの実施を控えるべき状態として最も適切とはいえません。
2.うつ病の回復期
判定:適切とはいえない。
うつ病の回復期では、症状が安定してきた段階で、認知機能、性格傾向、復職支援上の課題などを検討するために検査が行われることがあります。無理のない実施は必要ですが、再燃期の統合失調症ほど実施を控えるべき状態とはいえません。
3.不安障害の寛解期
判定:適切とはいえない。
寛解期は症状が軽快または安定している時期です。不安への配慮は必要ですが、検査結果の信頼性や本人の負担を考えると、実施を控えるべき状態として最も適切ではありません。
4.統合失調症の再燃期
判定:最も適切。
統合失調症の再燃期には、幻覚、妄想、思考の混乱、不安、興奮などが強くなっている可能性があります。この時期にテストバッテリーを実施すると、負担が大きく、検査結果の信頼性も低下しやすいため、実施を控える状態として最も適切です。
5.高次脳機能障害の亜急性期
判定:適切とはいえない。
高次脳機能障害の亜急性期では、状態に応じて認知機能評価やリハビリテーション方針の検討が必要になる場合があります。疲労や病状への配慮は必要ですが、選択肢の中で最も実施を控えるべき状態は統合失調症の再燃期です。
覚えるポイント
- テストバッテリーは、複数の検査を組み合わせて多面的に評価する方法です。
- 急性期や再燃期など状態が不安定な時期は、負担が大きく結果の信頼性も下がります。
- 心理検査では、目的、同意、状態、疲労、結果の活用可能性を確認します。
- 統合失調症の再燃期では、まず症状の安定と安全確保を優先します。
9AM17
問題文
[9AM17]
うつ病が疑われる児童の症状評価のために用いる心理検査として、適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.CARS
- 2.CBCL
- 3.DSRS-C
- 4.KABC-Ⅱ
- 5.TSCC
答え
- 3.DSRS-C
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、児童の抑うつ症状を評価する心理検査として、DSRS-Cを選べるかが問われています。
検査名は略称で出題されることが多いため、「何を評価する検査か」を整理しておくことが重要です。
解説
DSRS-Cは、児童用の抑うつ症状を評価する自己記入式尺度です。子どもの抑うつ気分、楽しさの低下、意欲、自己評価、身体症状など、うつ病が疑われる場合の症状把握に用いられます。
児童のうつ病では、大人のように「気分が落ち込む」とはっきり言語化できないこともあります。イライラ、身体不調、登校しぶり、興味の低下、集中困難、睡眠や食欲の変化などとして現れる場合があります。
そのため、心理検査だけで診断を決めるのではなく、面接、行動観察、保護者や学校からの情報、医師による診察などを合わせて総合的に判断します。
ひっかけポイント
CARS は自閉スペクトラム症、KABC-Ⅱ は認知処理や知能、TSCC はトラウマ症状に関係します。児童の抑うつ症状なら DSRS-C を選びます。
公認心理師としては、検査結果を点数だけで扱わず、子どもの生活状況、家族関係、学校での様子、自殺リスクなども確認することが大切です。
選択肢の確認
1.CARS
判定:誤り。
CARS は、自閉スペクトラム症の症状や特徴を評価するための尺度です。対人相互作用、コミュニケーション、常同行動などに関係します。うつ病が疑われる児童の抑うつ症状評価としては適切ではありません。
2.CBCL
判定:誤り。
CBCL は、子どもの行動や情緒の問題を保護者の評価によって幅広く把握する尺度です。抑うつに関連する情報も得られる場合がありますが、本問で「うつ病が疑われる児童の症状評価」として最も適切なのは DSRS-C です。
3.DSRS-C
判定:正しい。
DSRS-C は、児童の抑うつ症状を評価する尺度です。うつ病が疑われる児童の症状評価に用いる心理検査として適切です。
4.KABC-Ⅱ
判定:誤り。
KABC-Ⅱ は、子どもの認知処理能力や知的機能を評価する個別式検査です。学習支援や発達理解に役立ちますが、うつ病が疑われる児童の抑うつ症状を直接評価する検査ではありません。
5.TSCC
判定:誤り。
TSCC は、子どものトラウマ関連症状を評価する尺度です。PTSD 症状、不安、抑うつ、怒り、解離などを含む評価に用いられますが、本問でうつ病が疑われる児童の症状評価として最も適切なのは DSRS-C です。
覚えるポイント
- DSRS-Cは、児童の抑うつ症状を評価する尺度です。
- CARSは、自閉スペクトラム症の評価に関係します。
- KABC-Ⅱは、認知処理や知的機能を評価します。
- TSCCは、子どものトラウマ関連症状を評価します。
- 児童のうつでは、検査、面接、行動観察、家庭・学校情報を総合して理解します。
9AM18
問題文
[9AM18]
認知療法で、クライエントの問題が生じる状況、その状況における自動思考、感情、行動などの関連についての総合的なアセスメントを表す用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.課題分析
- 2.機能分析
- 3.認知的評価
- 4.認知的概念化
- 5.相互作用過程分析
答え
- 4.認知的概念化
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、認知療法における認知的概念化の意味が問われています。
状況、自動思考、感情、行動、身体反応、背景にある信念などを関連づけて、クライエントの問題を総合的に理解することがポイントです。
解説
認知的概念化は、認知療法や認知行動療法において、クライエントの問題がどのように生じ、維持されているかを整理する総合的なアセスメントです。
例えば、ある状況で「自分は失敗するに違いない」という自動思考が生じ、不安が高まり、回避行動が起こり、その結果として成功体験が得られず、不安が維持されるといった流れを整理します。
認知的概念化では、次のような点を関連づけて考えます。
- 問題が生じる状況
- そのときの自動思考
- 感情
- 行動
- 身体反応
- 中核信念や媒介信念
- 問題を維持している要因
これにより、介入の焦点が明確になります。認知再構成、行動実験、曝露、問題解決技法などをどのように用いるかも、概念化に基づいて検討します。
公認心理師としての注意点
認知的概念化は、支援者が一方的に決めるものではありません。クライエントと共有し、本人の理解や納得を確認しながら修正していくことが大切です。
本問では、問題状況、自動思考、感情、行動などの関連についての総合的なアセスメントを問うているため、認知的概念化が最も適切です。
選択肢の確認
1.課題分析
判定:誤り。
課題分析は、目標行動や課題を細かい構成要素に分け、どの段階で困難が生じているかを分析する方法です。行動療法や教育・支援場面で用いられます。本問の認知療法における状況、自動思考、感情、行動の総合的アセスメントとしては認知的概念化が適切です。
2.機能分析
判定:誤り。
機能分析は、行動の前後関係に注目し、先行条件、行動、結果の関係から行動がどのように維持されているかを分析する方法です。行動療法で重要ですが、本問では認知療法における自動思考や感情を含む総合的理解が問われているため、認知的概念化が適切です。
3.認知的評価
判定:誤り。
認知的評価は、出来事をどのように受け止め、評価するかという認知過程を指す概念です。ストレス理論などでも使われます。本問のように、問題状況、自動思考、感情、行動などを統合的に整理する用語としては認知的概念化が適切です。
4.認知的概念化
判定:最も適切。
認知的概念化は、クライエントの問題が生じる状況、自動思考、感情、行動、身体反応、信念などの関連を総合的に整理するアセスメントです。本問の説明に合致します。
5.相互作用過程分析
判定:誤り。
相互作用過程分析は、人と人との相互作用の過程を分析する方法として用いられることがあります。認知療法で、状況、自動思考、感情、行動の関連を総合的に把握する用語としては認知的概念化が適切です。
覚えるポイント
- 認知的概念化は、認知療法における総合的な見立てです。
- 状況、自動思考、感情、行動、身体反応、信念の関連を整理します。
- 機能分析は、主に行動の先行条件、行動、結果の関係を分析します。
- 概念化は、介入方針を立てる土台になります。
9AM19
問題文
[9AM19]
人に備わる基本的動因として、自らの生来の可能性を建設的な方向に成就しようとする実現傾向を重視する心理療法として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.内観療法
- 2.森田療法
- 3.臨床動作法
- 4.ロゴセラピー
- 5.クライエント中心療法
答え
- 5.クライエント中心療法
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、C. Rogers のクライエント中心療法における実現傾向が問われています。
「自らの生来の可能性を建設的な方向に成就しようとする」という表現が重要な手がかりです。
解説
クライエント中心療法は、C. Rogers によって発展した心理療法です。人には、自分自身の可能性をよりよく発揮し、成長しようとする基本的な力が備わっていると考えます。これを実現傾向といいます。
クライエント中心療法では、治療者が一方的に指示したり解釈したりするのではなく、クライエント自身の成長する力を信頼します。そのため、治療者の基本的態度として、次の3条件が重視されます。
- 無条件の肯定的関心
- 共感的理解
- 自己一致
これらの態度によって、クライエントが自分の体験に気づき、自分らしい方向へ変化していくことを支えます。
ひっかけポイント
「実現傾向」「無条件の肯定的関心」「共感的理解」「自己一致」が出たら、クライエント中心療法を想起します。
公認心理師としては、クライエントの主体性を尊重しながら、必要に応じて安全確認、説明と同意、他職種連携も行います。受容的に関わることは、リスクを見逃すことではありません。
選択肢の確認
1.内観療法
判定:誤り。
内観療法は、身近な他者との関係について、「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を内省する日本発祥の心理療法です。実現傾向を中心概念とする心理療法ではありません。
2.森田療法
判定:誤り。
森田療法は、神経症的な不安や症状をあるがままに受け入れ、目的本位の行動を重視する心理療法です。不安の除去そのものを目標にするのではなく、生活の中で行動を整えていく点が特徴です。実現傾向を中心概念とするものではありません。
3.臨床動作法
判定:誤り。
臨床動作法は、身体の動作や姿勢への援助を通して、心理的・身体的な自己コントロールや体験の変化を支援する方法です。実現傾向を重視するクライエント中心療法とは異なります。
4.ロゴセラピー
判定:誤り。
ロゴセラピーは、V. Frankl による心理療法で、生きる意味や意味への意志を重視します。人間の可能性や成長を扱う点では関連がありますが、本問の実現傾向を中心概念とする心理療法としてはクライエント中心療法が適切です。
5.クライエント中心療法
判定:最も適切。
クライエント中心療法は、人には自己を維持し成長させようとする実現傾向があると考えます。自らの生来の可能性を建設的な方向に成就しようとする力を重視するため、本問の説明に合致します。
覚えるポイント
- 実現傾向は、C. Rogers のクライエント中心療法の重要概念です。
- クライエント中心療法では、無条件の肯定的関心、共感的理解、自己一致が重視されます。
- 内観療法は、対人関係を振り返る日本発祥の心理療法です。
- 森田療法は、あるがままと目的本位を重視します。
- ロゴセラピーは、生きる意味を重視します。
9AM20
問題文
[9AM20]
M. Csikszentmihalyi が提唱した、内発的動機づけが頂点に達し、活動に没頭することで生じる最適状態の体験を表す概念として、正しいものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.フロー
- 2.レジリエンス
- 3.ウェルビーイング
- 4.エンゲイジメント
- 5.マインドフルネス
答え
- 1.フロー
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、M. Csikszentmihalyi が提唱したフローの概念が問われています。
内発的動機づけ、活動への没頭、最適状態の体験という表現が手がかりです。
解説
フローとは、活動に深く没頭し、その活動自体に強い充実感や楽しさを感じている最適な心理状態を指します。M. Csikszentmihalyi によって提唱されました。
フロー状態では、時間の感覚が変化したり、自己意識が薄れたり、行為と意識が一体化したように感じられたりします。活動そのものが報酬となるため、内発的動機づけが高い状態といえます。
フローが生じやすい条件としては、課題の難しさと本人の能力のバランスが取れていること、目標が明確であること、行動に対するフィードバックが得られることなどが挙げられます。
ひっかけポイント
レジリエンス、ウェルビーイング、エンゲイジメント、マインドフルネスはいずれも心理学で重要な概念ですが、「Csikszentmihalyi」「没頭」「最適経験」とくればフローです。
教育、スポーツ、産業、創造活動などの領域では、フローは動機づけやパフォーマンス理解に関わります。公認心理師の支援でも、本人がどのような活動に意味や没頭を感じるかを理解することは、支援方針を考える手がかりになります。
選択肢の確認
1.フロー
判定:正しい。
フローは、M. Csikszentmihalyi が提唱した概念で、内発的動機づけが高まり、活動に没頭することで生じる最適状態の体験を指します。本問の説明に合致します。
2.レジリエンス
判定:誤り。
レジリエンスは、困難や逆境に直面しても回復したり適応したりする力を指します。ストレスやトラウマからの回復力に関係しますが、活動に没頭する最適経験を表す概念ではありません。
3.ウェルビーイング
判定:誤り。
ウェルビーイングは、心身の健康、幸福感、人生への満足、社会的なよさなどを含む広い概念です。フロー体験がウェルビーイングに関係することはありますが、本問の提唱者と没頭体験に該当する用語はフローです。
4.エンゲイジメント
判定:誤り。
エンゲイジメントは、仕事や学習などに対する活力、熱意、没頭を含む関与の高さを表す概念として用いられます。没頭という点で近いですが、M. Csikszentmihalyi が提唱した最適経験の概念としてはフローが正しいです。
5.マインドフルネス
判定:誤り。
マインドフルネスは、今この瞬間の体験に、評価を加えず注意を向けるあり方を指します。注意や気づきに関わる重要概念ですが、活動に没頭することで生じる最適状態の体験を表すフローとは異なります。
覚えるポイント
- フローは、活動に深く没頭する最適経験です。
- 提唱者は M. Csikszentmihalyi です。
- フローは、内発的動機づけが高い状態と関係します。
- 課題の難しさと能力のバランス、明確な目標、フィードバックが重要です。
- レジリエンスは回復力、ウェルビーイングは幸福や健康の広い概念です。
9AM21
問題文
[9AM21]
E. H. Erikson のライフサイクル論に基づく実践において、自我同一性の確立を課題とする青年とのカウンセリングを行う際に注目すべき事柄として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.自発的な空想や遊び
- 2.学業における有能感の獲得
- 3.社会的な活動における役割実験
- 4.基本的養育者との愛着関係の形成
- 5.パートナーとの親密な関係づくり
答え
- 3.社会的な活動における役割実験
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、E. H. Erikson のライフサイクル論における青年期の発達課題が問われています。
青年期の中心的な心理社会的危機は、自我同一性 対 同一性拡散です。自分は何者か、将来どのように生きるのか、社会の中でどのような役割を担うのかを模索する時期です。
解説
E. H. Erikson は、人の発達を生涯にわたる心理社会的発達として捉えました。それぞれの発達段階には中心的な課題があります。
青年期では、自我同一性の確立が重要です。自我同一性とは、自分が一貫した存在であるという感覚や、社会の中で自分らしく生きる方向性をもつことです。
青年は、進路、職業、価値観、友人関係、恋愛、社会参加、文化的所属などを通して、自分に合う役割を試します。このような試行錯誤は役割実験と呼ばれます。
国家試験ではここを押さえる
Erikson の青年期では、「自我同一性」「同一性拡散」「役割実験」「モラトリアム」が重要語です。
カウンセリングでは、青年が迷っていることを単に未熟さとして扱うのではなく、自我同一性を形成するための探索過程として理解します。本人が安全に試行錯誤し、自分の価値観や進路を言語化できるように支援することが大切です。
選択肢の確認
1.自発的な空想や遊び
判定:誤り。
自発的な空想や遊びは、幼児期の主体性や想像力の発達に関係します。Erikson の発達段階では、幼児期の「自発性 対 罪悪感」と関連して理解できます。青年期の自我同一性の確立において最も注目すべき事柄ではありません。
2.学業における有能感の獲得
判定:誤り。
学業や作業を通して有能感を獲得することは、児童期の「勤勉性 対 劣等感」に関係します。青年期にも学業は重要ですが、自我同一性の確立という観点では、社会的役割を試す役割実験の方がより中心的です。
3.社会的な活動における役割実験
判定:最も適切。
青年期には、進路、職業、対人関係、価値観、社会参加などを通して、自分に合う役割を試す役割実験が重要になります。自我同一性の確立を支援するカウンセリングでは、この探索過程に注目することが適切です。
4.基本的養育者との愛着関係の形成
判定:誤り。
基本的養育者との愛着関係の形成は、乳幼児期の発達に深く関係します。Erikson の初期段階では「基本的信頼 対 不信」と関連して考えられます。青年期の自我同一性の確立における中心課題ではありません。
5.パートナーとの親密な関係づくり
判定:誤り。
パートナーとの親密な関係づくりは、Erikson の成人期初期における「親密性 対 孤立」に関係します。青年期にも恋愛関係は同一性形成に影響しますが、本問で問われている自我同一性の確立に最も直接関係するのは、社会的な役割実験です。
覚えるポイント
- Erikson の青年期の課題は、自我同一性 対 同一性拡散です。
- 青年期では、進路、職業、価値観、社会的役割を探索します。
- 役割実験は、自分に合う生き方や役割を試す過程です。
- 幼児期は自発性、児童期は勤勉性、成人期初期は親密性と整理します。
9AM22
問題文
[9AM22]
家族療法において、セラピストが個々の家族成員の味方になり、その思いを認め、公平に接することを表す用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.取り入れ
- 2.平行交流
- 3.ジョイニング
- 4.エナクトメント
- 5.多方向への肩入れ
答え
- 5.多方向への肩入れ
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、家族療法における多方向への肩入れの意味が問われています。
セラピストが特定の家族成員だけの味方になるのではなく、個々の家族成員それぞれの立場や思いを認め、公平に関わることがポイントです。
解説
多方向への肩入れとは、家族療法において、セラピストが家族成員の一人だけに肩入れするのではなく、複数の家族成員それぞれに対して理解と支持を示す関わりです。
家族療法では、家族の中で「誰が悪いか」を決めることが目的ではありません。家族成員それぞれの立場、苦痛、願い、責任、関係性を理解し、家族全体の相互作用を見立てることが大切です。
例えば、子どもの問題行動をめぐって家族が来談した場合でも、子どものつらさだけでなく、保護者の不安や困難、きょうだいの思いも扱います。誰か一人を悪者にすると、家族内の対立が強まり、治療関係も不安定になりやすくなります。
公認心理師としての注意点
家族支援では、中立性と公平性が重要です。ただし、虐待や暴力など安全に関わる問題がある場合は、被害を受けている人の安全確保を優先します。
多方向への肩入れは、家族それぞれの語りを尊重しながら、家族全体の関係性に働きかけるための基本的態度として理解できます。
選択肢の確認
1.取り入れ
判定:誤り。
取り入れは、精神分析的な文脈で、外部の対象や性質を自分の内側に取り込むことを指す概念として用いられます。家族療法で、家族成員それぞれの味方になり公平に接することを表す用語ではありません。
2.平行交流
判定:誤り。
平行交流は、交流分析において、相手の自我状態に対して予測可能な形で反応が返る交流を指します。家族療法における公平な肩入れを表す用語ではありません。
3.ジョイニング
判定:誤り。
ジョイニングは、セラピストが家族システムに入り、家族と協力関係を築くことを指します。家族療法で重要な技法ですが、本問の「個々の家族成員の味方になり、その思いを認め、公平に接する」という説明には、多方向への肩入れがより適切です。
4.エナクトメント
判定:誤り。
エナクトメントは、家族内の相互作用を面接場面で実際に演じてもらい、その関係パターンを観察したり変化させたりする技法です。家族成員それぞれの立場に公平に肩入れする態度を表す用語ではありません。
5.多方向への肩入れ
判定:最も適切。
多方向への肩入れは、セラピストが特定の一人だけではなく、家族成員それぞれの思いや立場を認め、公平に関わることを表します。本問の説明に合致します。
覚えるポイント
- 多方向への肩入れは、家族成員それぞれの立場を公平に理解し支持する態度です。
- ジョイニングは、家族システムに入り治療関係を築くことです。
- エナクトメントは、家族の相互作用を面接場面で再現して扱う技法です。
- 家族療法では、個人だけでなく家族全体の関係性を見立てます。
9AM23
問題文
[9AM23]
がんの末期や慢性心不全、慢性腎不全などの患者にみられ、体重減少、食欲不振及び骨格筋量の減少を特徴とし、代謝の異常を伴う状態を表す用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.フレイル
- 2.アカラシア
- 3.カヘキシア
- 4.ミオパチー
- 5.カタレプシー
答え
- 3.カヘキシア
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、がん末期や慢性心不全、慢性腎不全などでみられるカヘキシアの理解が問われています。
体重減少、食欲不振、骨格筋量の減少、代謝異常という組合せが重要です。
解説
カヘキシアは、悪液質とも呼ばれ、がん、慢性心不全、慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾患などの慢性疾患に伴ってみられる全身性の消耗状態です。
単なる食事量の低下や栄養不足だけでなく、炎症や代謝異常が関係し、体重減少や筋肉量の減少が進みます。食事を増やすだけでは改善しにくいことがある点も重要です。
緩和ケアや慢性疾患の支援では、カヘキシアに伴う身体的苦痛だけでなく、食べられないことをめぐる本人や家族の不安、罪悪感、葛藤にも配慮が必要です。
医療・保健領域での注意点
公認心理師は身体疾患そのものを治療する職種ではありませんが、病状に伴う心理的苦痛、家族の不安、治療方針の理解を支える役割があります。必要に応じて医師、看護師、管理栄養士、薬剤師などと連携します。
本問では、体重減少、食欲不振、骨格筋量減少、代謝異常を伴う状態が示されているため、カヘキシアが最も適切です。
選択肢の確認
1.フレイル
判定:誤り。
フレイルは、加齢などに伴って心身の予備能力が低下し、要介護状態に移行しやすくなった状態を指します。筋力低下、疲労感、活動量低下などが関係しますが、本問のがん末期や慢性疾患に伴う代謝異常を伴う消耗状態としてはカヘキシアが適切です。
2.アカラシア
判定:誤り。
アカラシアは、食道の運動障害により、食物が胃へ通過しにくくなる疾患です。嚥下困難や胸痛などがみられます。本問の全身性の体重減少、骨格筋量減少、代謝異常を表す用語ではありません。
3.カヘキシア
判定:最も適切。
カヘキシアは、がん末期や慢性心不全、慢性腎不全などでみられる、体重減少、食欲不振、骨格筋量の減少、代謝異常を特徴とする状態です。本問の説明に合致します。
4.ミオパチー
判定:誤り。
ミオパチーは、筋肉そのものの障害によって筋力低下などが生じる疾患群を指します。筋肉に関係する用語ではありますが、本問の慢性疾患に伴う全身性消耗状態を表す用語ではありません。
5.カタレプシー
判定:誤り。
カタレプシーは、姿勢をとらされるとそのまま保たれるような状態を指し、精神医学や神経学の文脈で用いられます。体重減少や骨格筋量減少を伴う代謝異常の状態ではありません。
覚えるポイント
- カヘキシアは、がんや慢性疾患に伴う全身性の消耗状態です。
- 特徴は、体重減少、食欲不振、骨格筋量の減少、代謝異常です。
- フレイルは、加齢などに伴う心身の脆弱性の増大です。
- 緩和ケアでは、食べられないことをめぐる本人と家族の心理的苦痛にも配慮します。
9AM24
問題文
[9AM24]
アルコール依存症者のとるべき責任を肩代わりし、結果として依存を助長することになる家族や関係者を表す用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.サバイバー
- 2.イネイブラー
- 3.ゲートキーパー
- 4.アダルトチルドレン
- 5.IP〈Identified Patient〉
答え
- 2.イネイブラー
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、アルコール依存症の家族支援で重要なイネイブラーの理解が問われています。
本人の責任を周囲が肩代わりし、結果として飲酒行動や依存を維持させてしまう点がポイントです。
解説
イネイブラーとは、依存症者の問題行動によって生じた責任や結果を周囲が肩代わりし、本人が自分の問題に向き合う機会を失わせてしまう家族や関係者を指します。
例えば、本人が飲酒によって仕事を休んだときに家族が代わりに言い訳をする、借金を繰り返し肩代わりする、飲酒によるトラブルを毎回なかったことにする、といった関わりです。
家族は本人を助けたい、問題を大きくしたくないという思いから行動していることが多く、悪意があるわけではありません。しかし、結果として本人が飲酒による結果を引き受けず、依存が維持されることがあります。
公認心理師としての注意点
依存症支援では、本人への支援だけでなく家族支援が重要です。家族を責めるのではなく、依存を維持する関係パターンを理解し、安全で適切な境界を作れるよう支援します。
アルコール依存症では、自助グループ、医療機関、精神保健福祉センター、保健所などとの連携も重要です。家族が孤立しないよう、相談先につなぐことも支援の一部です。
選択肢の確認
1.サバイバー
判定:誤り。
サバイバーは、災害、犯罪、虐待、病気などの困難な体験を生き延びた人を指すことがあります。依存症者の責任を肩代わりして結果的に依存を助長する家族や関係者を表す用語ではありません。
2.イネイブラー
判定:最も適切。
イネイブラーは、アルコール依存症者が本来引き受けるべき責任を肩代わりし、結果として依存行動を維持または助長してしまう家族や関係者を指します。本問の説明に合致します。
3.ゲートキーパー
判定:誤り。
ゲートキーパーは、自殺予防などの文脈で、悩んでいる人に気づき、声をかけ、必要な支援につなぐ役割を担う人を指します。依存を助長する関係者を表す用語ではありません。
4.アダルトチルドレン
判定:誤り。
アダルトチルドレンは、アルコール依存などの問題を抱える家庭で育ち、成人後も対人関係や自己評価などに困難を抱える人を指す文脈で用いられます。依存症者の責任を肩代わりする関係者を直接表す用語ではありません。
5.IP〈Identified Patient〉
判定:誤り。
IP は、家族療法などで「患者として特定された人」を意味します。家族の問題が一人の症状として表れていると見立てる際に使われます。本問の、依存症者の責任を肩代わりして依存を助長する人を指す用語ではありません。
覚えるポイント
- イネイブラーは、依存症者の責任を肩代わりし、依存を維持してしまう関係者です。
- 家族は善意から肩代わりしていることが多いため、責めずに支援します。
- 依存症支援では、本人支援と家族支援の両方が重要です。
- ゲートキーパーは、自殺予防などで支援につなぐ役割を担う人です。
- IPは、家族療法で患者として特定された人を指します。
9AM25
問題文
[9AM25]
1980 年に世界保健機関〈WHO〉が提唱した、障害を「機能障害」、「能力障害」及び「社会的不利」の 3 次元で捉える枠組みとして、適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.国際障害分類
- 2.国際生活機能分類
- 3.障害の医学モデル
- 4.障害の社会モデル
- 5.リカバリーモデル
答え
- 1.国際障害分類
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、WHO が 1980 年に提唱した国際障害分類の理解が問われています。
手がかりは、「機能障害」「能力障害」「社会的不利」の3次元です。
解説
国際障害分類は、WHO が 1980 年に提唱した障害の分類枠組みです。英語の略称では ICIDH とされます。
国際障害分類では、障害を次の3つの次元で捉えます。
- 機能障害:心身の構造や機能の障害
- 能力障害:日常生活上の活動能力の制限
- 社会的不利:社会参加や役割遂行における不利益
この枠組みは、障害を身体機能だけでなく、生活や社会参加の問題としても捉えようとした点で重要です。
一方、2001 年には、より相互作用的な視点をもつ国際生活機能分類が採択されました。国際生活機能分類では、生活機能、活動、参加、環境因子などを含めて理解します。
ひっかけポイント
1980 年、機能障害、能力障害、社会的不利なら国際障害分類です。2001 年、生活機能、活動、参加、環境因子なら国際生活機能分類です。
公認心理師の実践では、障害を本人の機能だけで捉えず、生活上の困難、社会参加、環境調整、合理的配慮まで含めて考えることが重要です。
選択肢の確認
1.国際障害分類
判定:正しい。
国際障害分類は、WHO が 1980 年に提唱した枠組みで、障害を「機能障害」「能力障害」「社会的不利」の3次元で捉えます。本問の説明に合致します。
2.国際生活機能分類
判定:誤り。
国際生活機能分類は、2001 年に WHO で採択された枠組みです。生活機能、活動、参加、環境因子などを含め、障害を本人と環境の相互作用として捉えます。本問の 1980 年の3次元分類は国際障害分類です。
3.障害の医学モデル
判定:誤り。
障害の医学モデルは、障害を主に個人の心身機能の問題として捉え、治療や回復を重視する考え方です。本問の WHO による「機能障害」「能力障害」「社会的不利」の3次元分類の名称ではありません。
4.障害の社会モデル
判定:誤り。
障害の社会モデルは、障害を個人の問題だけでなく、社会の側にある障壁によって生じるものとして捉える考え方です。重要な視点ですが、本問の 1980 年の分類枠組みの名称ではありません。
5.リカバリーモデル
判定:誤り。
リカバリーモデルは、精神保健福祉などの領域で、症状の消失だけでなく、本人が希望や意味をもって自分らしい生活を取り戻す過程を重視する考え方です。本問の障害分類の枠組みではありません。
覚えるポイント
- 国際障害分類は、1980 年に WHO が提唱しました。
- 国際障害分類は、機能障害、能力障害、社会的不利の3次元で捉えます。
- 国際生活機能分類は、2001 年に採択された枠組みです。
- 障害理解では、本人の機能だけでなく、活動、参加、環境も考えます。
9AM26
問題文
[9AM26]
社会福祉六法に含まれる法律を 1 つ選べ。
選択肢
- 1.医療法
- 2.介護保険法
- 3.生活保護法
- 4.母体保護法
- 5.障害者基本法
答え
- 3.生活保護法
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、福祉領域の基礎知識として社会福祉六法に含まれる法律が問われています。
選択肢の中では、生活保護法が社会福祉六法に含まれます。
解説
社会福祉六法は、日本の社会福祉制度の基本となる代表的な法律群を指します。
一般に、社会福祉六法には次の法律が含まれます。
- 生活保護法
- 児童福祉法
- 母子及び父子並びに寡婦福祉法
- 老人福祉法
- 身体障害者福祉法
- 知的障害者福祉法
本問の選択肢の中では、生活保護法が該当します。
生活保護法は、生活に困窮する人に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的とする法律です。公認心理師が福祉領域で支援する際にも、生活困窮、精神疾患、障害、家族問題などと関連して理解しておく必要があります。
法規・倫理上のポイント
法規問題では、法律名だけでなく、対象者、目的、実施主体、相談機関を分けて覚えます。社会福祉六法は、福祉制度の基本として頻出です。
医療法や介護保険法も重要な法律ですが、社会福祉六法に含まれる法律としては生活保護法を選びます。
選択肢の確認
1.医療法
判定:誤り。
医療法は、医療提供体制、病院や診療所などに関する基本的な法律です。医療領域では重要ですが、社会福祉六法には含まれません。
2.介護保険法
判定:誤り。
介護保険法は、高齢者などの介護を社会全体で支える介護保険制度を定めた法律です。高齢者福祉で重要ですが、社会福祉六法には含まれません。
3.生活保護法
判定:正しい。
生活保護法は、社会福祉六法に含まれる法律です。生活に困窮する人の最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的とします。
4.母体保護法
判定:誤り。
母体保護法は、母体の生命や健康を保護することに関する法律です。社会福祉六法には含まれません。
5.障害者基本法
判定:誤り。
障害者基本法は、障害者施策の基本理念や国・地方公共団体の責務などを定める法律です。障害者福祉で重要ですが、社会福祉六法には含まれません。
覚えるポイント
- 社会福祉六法に含まれる代表例として、生活保護法を覚えます。
- 社会福祉六法には、児童、高齢者、障害者、生活困窮などに関わる法律が含まれます。
- 医療法、介護保険法、障害者基本法は重要ですが、社会福祉六法そのものではありません。
- 福祉領域では、本人の困りごとと利用できる制度を結びつけて考えます。
9AM27
問題文
[9AM27]
L. Y. Abramson らが提唱した改訂学習性無力感理論において、無力感が最も高まりやすいとされる失敗体験の捉え方の特徴として、適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.内的 安定的 全体的
- 2.内的 不安定的 全体的
- 3.外的 安定的 全体的
- 4.外的 安定的 特定的
- 5.外的 不安定的 特定的
答え
- 1.内的 安定的 全体的
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、L. Y. Abramson らの改訂学習性無力感理論における帰属スタイルが問われています。
失敗を「自分のせいで」「変わらない原因で」「あらゆる場面に及ぶ」と捉えるほど、無力感が高まりやすくなります。
解説
改訂学習性無力感理論では、失敗や悪い出来事をどのように原因づけるかが、無力感や抑うつに関係すると考えます。
原因帰属の次元として、主に次の3つが重要です。
- 内的か外的か:原因を自分の内側に求めるか、外部の状況に求めるか
- 安定的か不安定的か:原因が今後も変わらないと考えるか、変化しうると考えるか
- 全体的か特定的か:原因が多くの場面に当てはまると考えるか、特定の場面に限られると考えるか
失敗を内的、安定的、全体的に帰属すると、「自分が悪い」「これからも変わらない」「何をやってもだめだ」と考えやすくなります。そのため、無力感や抑うつが高まりやすいとされます。
ひっかけポイント
無力感が最も強まりやすい組合せは、内的・安定的・全体的です。外的、不安定的、特定的に捉えるほど、無力感は限定されやすくなります。
心理支援では、クライエントの失敗体験の捉え方を丁寧に確認します。認知行動療法では、原因帰属や自動思考を検討し、より柔軟な見方を形成する支援につなげることがあります。
選択肢の確認
1.内的 安定的 全体的
判定:正しい。
失敗の原因を自分の内側にあり、今後も変わらず、さまざまな場面に及ぶものとして捉えると、無力感が最も高まりやすくなります。改訂学習性無力感理論において、本問の説明に合致します。
2.内的 不安定的 全体的
判定:誤り。
内的で全体的に捉える点は無力感につながりやすいですが、不安定的であれば「原因は変わりうる」と考える余地があります。最も無力感が高まりやすい組合せとしては、安定的を含む選択肢1が適切です。
3.外的 安定的 全体的
判定:誤り。
安定的で全体的に捉える点は無力感に関係しますが、外的帰属では原因を自分自身に求める程度が低くなります。最も無力感が高まりやすい組合せは、内的・安定的・全体的です。
4.外的 安定的 特定的
判定:誤り。
外的で特定的に捉える場合、失敗を自分全体の問題とは捉えにくく、影響も特定の場面に限定されます。安定的であっても、最も無力感が高まりやすい組合せではありません。
5.外的 不安定的 特定的
判定:誤り。
外的、不安定的、特定的な帰属は、失敗を自分の本質的問題とは捉えず、変化可能で特定の場面に限られたものとして理解しやすい組合せです。無力感が最も高まりやすい帰属ではありません。
覚えるポイント
- 改訂学習性無力感理論では、失敗の原因帰属が無力感に影響します。
- 無力感が高まりやすいのは、内的・安定的・全体的な帰属です。
- 内的は「自分のせい」、安定的は「変わらない」、全体的は「何にでも及ぶ」と理解します。
- 認知行動療法では、原因帰属や自動思考を柔軟に見直す支援が重要になります。
9AM28
問題文
[9AM28]
不登校の児童生徒の実態に配慮し、特別の教育課程を編成して教育を実施することができる教育関連施設として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.通級指導教室
- 2.特別支援学校
- 3.教育支援センター
- 4.教育相談センター
- 5.学びの多様化学校〈不登校特例校〉
答え
- 5.学びの多様化学校〈不登校特例校〉
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、不登校児童生徒に対する教育制度としての学びの多様化学校〈不登校特例校〉が問われています。
「不登校の実態に配慮」「特別の教育課程を編成」という表現が重要な手がかりです。
解説
学びの多様化学校〈不登校特例校〉は、不登校児童生徒の実態に配慮し、特別の教育課程を編成して教育を実施することができる学校です。
不登校の背景は一様ではありません。学校での対人関係、学業不振、発達特性、家庭状況、心身の不調、いじめ、強い不安など、複数の要因が関係することがあります。そのため、従来の学校生活に戻すことだけを目的にするのではなく、児童生徒の状態に応じた多様な学びの場を保障する視点が重要です。
学びの多様化学校では、児童生徒の実態に合わせて、授業時数、学習内容、登校形態、支援体制などを工夫しながら教育を行います。
教育領域での注意点
不登校支援では、登校刺激を急ぐのではなく、本人の安心、安全、意思、心身の状態、学習保障、家庭や学校との連携を整理して支援します。
公認心理師は、スクールカウンセラー、教職員、保護者、教育支援センター、医療機関、福祉機関などと連携し、児童生徒に合った学びと生活の回復を支える視点が求められます。
選択肢の確認
1.通級指導教室
判定:誤り。
通級指導教室は、通常の学級に在籍する児童生徒が、一部の時間に障害や特性に応じた特別な指導を受ける場です。発達障害、言語障害、情緒面の困難などへの支援に関係しますが、不登校の実態に配慮して特別の教育課程を編成する学校としては、学びの多様化学校が適切です。
2.特別支援学校
判定:誤り。
特別支援学校は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱などの児童生徒に対して、障害の状態に応じた教育を行う学校です。不登校児童生徒のために特別の教育課程を編成する施設として本問で問われているものではありません。
3.教育支援センター
判定:誤り。
教育支援センターは、不登校児童生徒に対して、学習支援、教育相談、居場所支援などを行う公的な支援機関です。重要な支援資源ですが、特別の教育課程を編成して教育を実施する学校としては、学びの多様化学校が該当します。
4.教育相談センター
判定:誤り。
教育相談センターは、児童生徒や保護者、教職員の教育上の相談に応じる機関です。不登校支援にも関わりますが、特別の教育課程を編成して教育を行う学校ではありません。
5.学びの多様化学校〈不登校特例校〉
判定:最も適切。
学びの多様化学校〈不登校特例校〉は、不登校児童生徒の実態に配慮し、特別の教育課程を編成して教育を実施できる学校です。本問の説明に合致します。
覚えるポイント
- 学びの多様化学校〈不登校特例校〉は、不登校児童生徒に配慮した特別の教育課程を編成できます。
- 教育支援センターは、学習支援や居場所支援、教育相談を行う支援機関です。
- 通級指導教室は、通常の学級に在籍しながら一部の時間に特別な指導を受ける場です。
- 不登校支援では、本人の状態と意思、安心できる居場所、学習保障を総合的に考えます。
9AM29
問題文
[9AM29]
保護観察所と連携し、更生保護を支え、非行のある少年に身近な存在として接し、話し相手になったり学習支援やスポーツをしたりするなど、同じ目の高さで一緒に考え、学び合うことを通じて、少年の立ち直りを支援するボランティア活動を行う人又は団体を表す用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.BBS 会
- 2.調停委員
- 3.民生委員
- 4.更生保護女性会
- 5.社会福祉協議会
答え
- 1.BBS 会
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、非行のある少年の立ち直りを支援する更生保護領域のボランティア活動として、BBS 会を選べるかが問われています。
「同じ目の高さ」「話し相手」「学習支援やスポーツ」「少年の立ち直り支援」が手がかりです。
解説
BBS 会は、Big Brothers and Sisters Movement に由来する更生保護のボランティア活動です。非行のある少年や悩みを抱える少年に対して、身近な存在として関わり、話し相手、学習支援、スポーツ、交流活動などを通して立ち直りを支援します。
BBS 会の特徴は、指導者として上から教えるというよりも、兄や姉のような身近な立場で接し、同じ目の高さで一緒に考える点です。
保護観察所などと連携しながら、少年が孤立せず、社会とのつながりを回復していくことを支えます。
司法・犯罪領域での注意点
少年の立ち直り支援では、非行行為だけに注目するのではなく、家庭、学校、友人関係、地域、発達特性、生活困難などの背景を含めて理解します。
公認心理師は、司法・犯罪領域で支援に関わる場合、保護観察所、家庭裁判所、学校、福祉機関、医療機関、地域の支援団体との連携を意識する必要があります。
選択肢の確認
1.BBS 会
判定:最も適切。
BBS 会は、非行のある少年などに身近な存在として関わり、話し相手、学習支援、スポーツなどを通して立ち直りを支援する更生保護のボランティア活動です。本問の説明に合致します。
2.調停委員
判定:誤り。
調停委員は、家庭裁判所や簡易裁判所の調停手続において、当事者間の話合いを支援し、合意形成を促す役割を担います。少年の身近な話し相手や学習支援を行う更生保護ボランティアを表す用語ではありません。
3.民生委員
判定:誤り。
民生委員は、地域住民の生活上の相談に応じ、必要な支援や関係機関につなぐ地域福祉の担い手です。児童委員も兼ねていますが、本問で示された非行少年の立ち直りを同じ目の高さで支援する活動は BBS 会です。
4.更生保護女性会
判定:誤り。
更生保護女性会は、地域で犯罪予防活動や更生保護活動を行う女性ボランティア団体です。更生保護に関わる点では重要ですが、本問の「少年に身近な存在として接し、話し相手や学習支援、スポーツを行う」活動としては BBS 会が最も適切です。
5.社会福祉協議会
判定:誤り。
社会福祉協議会は、地域福祉の推進を目的とする民間団体で、住民活動、福祉サービス、相談支援などに関わります。非行少年の立ち直りを同じ目の高さで支援する更生保護ボランティア活動を表す用語ではありません。
覚えるポイント
- BBS 会は、非行のある少年の立ち直りを支援する更生保護のボランティア活動です。
- 特徴は、同じ目の高さで関わり、話し相手や学習支援、スポーツなどを行うことです。
- 更生保護女性会も更生保護に関わりますが、少年への身近な伴走支援としては BBS 会を押さえます。
- 司法・犯罪領域では、保護観察所や地域資源との連携が重要です。
9AM30
問題文
[9AM30]
2018 年(平成 30 年)に成立した、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律〈働き方改革関連法〉に規定されているものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.子の看護休暇
- 2.地域別最低賃金の改定手続
- 3.ストレスチェック制度の義務化
- 4.規定日数の年次有給休暇の確実な取得
- 5.事業主によるパワーハラスメント防止対策の義務化
答え
- 4.規定日数の年次有給休暇の確実な取得
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、2018 年に成立した働き方改革関連法に含まれる内容が問われています。
選択肢の中では、規定日数の年次有給休暇の確実な取得が該当します。
解説
働き方改革関連法は、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保などを目的として、複数の労働関係法を改正した法律です。
その中で、年次有給休暇については、一定の条件を満たす労働者に対し、使用者が年5日の年次有給休暇を確実に取得させることが求められるようになりました。
これは、年次有給休暇が制度として存在していても、実際には取得しにくい職場があることを踏まえた規定です。働き方改革では、労働時間、休暇、健康確保、職場環境の改善が重要なテーマになります。
産業・労働領域での注意点
公認心理師は、職場のメンタルヘルス支援で、本人の症状だけでなく、労働時間、休暇取得、業務負荷、ハラスメント、復職支援、産業医や人事労務との連携を意識します。
ストレスチェック制度やパワーハラスメント防止対策も産業領域で重要ですが、2018 年の働き方改革関連法に規定されているものとしては、規定日数の年次有給休暇の確実な取得が適切です。
選択肢の確認
1.子の看護休暇
判定:誤り。
子の看護休暇は、育児・介護休業法に基づく制度です。子どもの病気やけが、予防接種、健康診断などのために取得できる休暇として重要ですが、本問の 2018 年の働き方改革関連法に規定されたものとしては該当しません。
2.地域別最低賃金の改定手続
判定:誤り。
地域別最低賃金は、最低賃金法に基づいて都道府県ごとに定められます。労働者の生活保障に関わる重要な制度ですが、本問で問われている働き方改革関連法の規定として最も適切ではありません。
3.ストレスチェック制度の義務化
判定:誤り。
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づき、一定規模以上の事業場で実施が義務づけられている制度です。産業メンタルヘルスで重要ですが、2018 年の働き方改革関連法により規定されたものではありません。
4.規定日数の年次有給休暇の確実な取得
判定:正しい。
働き方改革関連法では、一定の要件を満たす労働者に対して、使用者が年5日の年次有給休暇を確実に取得させることが規定されました。本問の正答です。
5.事業主によるパワーハラスメント防止対策の義務化
判定:誤り。
事業主によるパワーハラスメント防止対策の義務化は、労働施策総合推進法などの改正に関係する内容です。職場のメンタルヘルスに重要ですが、本問の 2018 年の働き方改革関連法に規定されているものとしては、年次有給休暇の確実な取得が適切です。
覚えるポイント
- 働き方改革関連法では、長時間労働の是正や休暇取得の促進が重要です。
- 選択肢の中では、規定日数の年次有給休暇の確実な取得が該当します。
- ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づく産業メンタルヘルス制度です。
- パワーハラスメント防止対策は、職場環境改善に関わる重要事項ですが、本問の正答ではありません。
- 産業領域では、心理支援と労働法規、産業医、人事労務との連携を合わせて理解します。
9AM31
問題文
[9AM31]
三半規管の障害によって影響を受ける感覚として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.嗅覚
- 2.聴覚
- 3.味覚
- 4.温痛覚
- 5.平衡覚
答え
- 5.平衡覚
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、内耳にある三半規管の役割が問われています。
三半規管は、身体や頭部の回転運動を感知し、姿勢の保持やめまいの発生に関係する平衡覚の器官です。
解説
三半規管は内耳の前庭器官の一部で、頭がどの方向に回転したかを感じ取る働きをもちます。
平衡覚には、身体の傾き、回転、加速度などを感知し、姿勢を保つ働きがあります。三半規管は特に回転加速度を感知し、耳石器は直線加速度や重力方向を感知します。
三半規管に障害があると、めまい、ふらつき、眼振、姿勢保持の困難などが生じることがあります。心理支援の場面でも、強いめまいや身体症状が不安を高めることがあるため、身体疾患や耳鼻科的問題との関連を考える視点が重要です。
ひっかけポイント
内耳には聴覚に関わる蝸牛もありますが、三半規管は聴覚ではなく平衡覚に関わります。
感覚・知覚の問題では、感覚器官と感覚の対応を正確に押さえることが大切です。
選択肢の確認
1.嗅覚
判定:誤り。
嗅覚は、においを感じる感覚で、鼻腔の嗅上皮や嗅神経に関係します。三半規管の障害によって直接影響を受ける感覚ではありません。
2.聴覚
判定:誤り。
聴覚は、音を感じる感覚で、内耳の蝸牛や聴神経に関係します。三半規管も内耳にありますが、三半規管が主に担うのは聴覚ではなく平衡覚です。
3.味覚
判定:誤り。
味覚は、舌などにある味蕾を通じて味を感じる感覚です。三半規管の障害とは直接関係しません。
4.温痛覚
判定:誤り。
温痛覚は、温度や痛みを感じる体性感覚です。皮膚や末梢神経、脊髄、脳の感覚処理に関係します。三半規管の障害によって直接影響を受ける感覚ではありません。
5.平衡覚
判定:最も適切。
三半規管は、身体や頭部の回転運動を感知し、平衡覚に関与します。障害があると、めまい、ふらつき、姿勢保持の困難などが起こることがあります。
覚えるポイント
- 三半規管は、内耳にある平衡覚の器官です。
- 三半規管は、主に頭部の回転運動を感知します。
- 聴覚に関わる主な器官は、内耳の蝸牛です。
- めまい、ふらつき、眼振がある場合、前庭系の問題も考えます。
9AM32
問題文
[9AM32]
喫煙習慣を背景に中高年で発症し、運動時の息切れが主症状であり、うつ病の併存が多い疾患として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.肺結核
- 2.気管支喘息
- 3.全般不安症
- 4.過換気症候群
- 5.慢性閉塞性肺疾患
答え
- 5.慢性閉塞性肺疾患
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、身体疾患と心理的問題の関連として、慢性閉塞性肺疾患を理解しているかが問われています。
手がかりは、喫煙習慣、中高年での発症、運動時の息切れ、うつ病の併存です。
解説
慢性閉塞性肺疾患は、COPD とも呼ばれ、主に長期間の喫煙を背景として発症する慢性の呼吸器疾患です。
気道や肺胞に慢性的な炎症や障害が生じ、空気の流れが悪くなることで、息切れ、咳、痰、運動耐容能の低下などがみられます。特に、階段昇降や歩行などの運動時に息切れが目立つことがあります。
COPD では、身体活動が制限され、外出や社会参加が減少しやすくなります。その結果、不安や抑うつが併存することがあります。また、息苦しさそのものが不安を高め、さらに活動を避けるという悪循環が生じることもあります。
医療・保健領域での注意点
公認心理師は、身体疾患を心理的問題だけで説明しないことが重要です。呼吸困難、疲労、服薬、生活制限、喫煙、家族支援、医療職との連携を含めて理解します。
本問では、喫煙習慣と中高年、運動時の息切れ、うつ病の併存という組合せから、慢性閉塞性肺疾患が最も適切です。
選択肢の確認
1.肺結核
判定:誤り。
肺結核は、結核菌による感染症です。咳、痰、発熱、寝汗、体重減少などがみられることがあります。喫煙習慣を背景に中高年で発症し、運動時の息切れを主症状とする疾患としては、慢性閉塞性肺疾患がより適切です。
2.気管支喘息
判定:誤り。
気管支喘息は、気道の慢性炎症によって、発作性の喘鳴、咳、息苦しさが生じる疾患です。アレルギーや気道過敏性が関係することが多く、本問の喫煙習慣を背景とした中高年の運動時息切れという特徴には慢性閉塞性肺疾患が合います。
3.全般不安症
判定:誤り。
全般不安症は、さまざまな出来事に対する過剰な不安や心配が持続する精神疾患です。息苦しさを訴えることはありますが、喫煙習慣を背景に中高年で発症する慢性呼吸器疾患ではありません。
4.過換気症候群
判定:誤り。
過換気症候群は、不安や緊張などを背景に過呼吸が生じ、息苦しさ、手足のしびれ、めまいなどが出る状態です。発作的に生じることが多く、長期喫煙を背景とした慢性的な運動時息切れを主症状とする疾患ではありません。
5.慢性閉塞性肺疾患
判定:最も適切。
慢性閉塞性肺疾患は、長期の喫煙を主な背景として中高年以降に発症し、運動時の息切れ、咳、痰などがみられます。活動制限や身体的苦痛から、うつ病や不安が併存することもあり、本問の説明に合致します。
覚えるポイント
- 慢性閉塞性肺疾患は、COPD とも呼ばれます。
- 主な背景因子は長期間の喫煙です。
- 主症状は、運動時の息切れ、咳、痰です。
- COPD では、うつ病や不安が併存しやすいことがあります。
- 身体疾患と心理的苦痛は相互に影響するため、多職種連携が重要です。
9AM33
問題文
[9AM33]
自己免疫疾患として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.逆流性食道炎
- 2.鉄欠乏性貧血
- 3.ハンチントン病
- 4.本態性高血圧症
- 5.全身性エリテマトーデス〈SLE〉
答え
- 5.全身性エリテマトーデス〈SLE〉
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、代表的な自己免疫疾患として、全身性エリテマトーデスを選べるかが問われています。
自己免疫疾患とは、本来は外敵から身体を守る免疫が、自分自身の組織を攻撃してしまうことで生じる疾患です。
解説
全身性エリテマトーデス〈SLE〉は、代表的な自己免疫疾患です。
SLE では、免疫の異常によって全身のさまざまな臓器や組織に炎症が生じます。皮膚、関節、腎臓、神経系、血液など、影響を受ける部位は多岐にわたります。症状が変動しやすく、長期的な治療や生活上の配慮が必要になることがあります。
心理支援の場面では、慢性疾患に伴う不安、抑うつ、疲労、痛み、服薬継続、対人関係、就労や学業への影響などに注目します。身体疾患が背景にある場合、心理的問題としてだけ扱わず、主治医や多職種との連携が重要です。
医療・保健領域での注意点
自己免疫疾患では、症状の変動や治療の長期化により、心理的負担が大きくなることがあります。公認心理師は、疾患理解を踏まえた心理支援と医療連携を意識します。
本問では、選択肢の中で自己免疫疾患として最も適切なのは、全身性エリテマトーデス〈SLE〉です。
選択肢の確認
1.逆流性食道炎
判定:誤り。
逆流性食道炎は、胃酸などが食道へ逆流することで食道粘膜に炎症が生じる疾患です。胸やけや呑酸などがみられます。自己免疫疾患ではありません。
2.鉄欠乏性貧血
判定:誤り。
鉄欠乏性貧血は、鉄不足によってヘモグロビン産生が低下し、貧血が生じる状態です。月経、出血、摂取不足などが関係します。自己免疫疾患ではありません。
3.ハンチントン病
判定:誤り。
ハンチントン病は、遺伝性の神経変性疾患です。不随意運動、認知機能低下、精神症状などがみられます。免疫が自分の組織を攻撃する自己免疫疾患ではありません。
4.本態性高血圧症
判定:誤り。
本態性高血圧症は、明確な単一の原因を特定しにくい高血圧で、遺伝、食塩摂取、肥満、ストレス、加齢など複数の要因が関係します。自己免疫疾患ではありません。
5.全身性エリテマトーデス〈SLE〉
判定:最も適切。
全身性エリテマトーデス〈SLE〉は、免疫異常によって全身の臓器や組織に炎症を生じる代表的な自己免疫疾患です。本問の正答です。
覚えるポイント
- 自己免疫疾患は、免疫が自分の身体の組織を攻撃してしまう疾患です。
- 全身性エリテマトーデス〈SLE〉は、代表的な自己免疫疾患です。
- ハンチントン病は、遺伝性の神経変性疾患です。
- 鉄欠乏性貧血や逆流性食道炎は、自己免疫疾患ではありません。
- 慢性身体疾患では、心理的苦痛と生活上の困難にも配慮します。
9AM34
問題文
[9AM34]
覚醒時の脳波に類似した低振幅速波が脳波上で優勢となり、夢をみることが多い睡眠段階として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.レム睡眠
- 2.ノンレム睡眠(第Ⅰ期)
- 3.ノンレム睡眠(第Ⅱ期)
- 4.ノンレム睡眠(第Ⅲ期)
- 5.ノンレム睡眠(第Ⅳ期)
答え
- 1.レム睡眠
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、睡眠段階のうちレム睡眠の特徴が問われています。
手がかりは、覚醒時に似た低振幅速波、夢をみることが多い、という記述です。
解説
レム睡眠は、急速眼球運動がみられる睡眠段階です。脳波は覚醒時に近い低振幅速波が優勢になり、脳は比較的活発に活動しています。
一方で、骨格筋の緊張は低下します。そのため、レム睡眠は「脳は活動しているが身体は休んでいる」ような状態として理解できます。
夢をみることが多いのもレム睡眠の特徴です。夢はノンレム睡眠中にも生じることがありますが、鮮明で物語性のある夢はレム睡眠で多いとされます。
ひっかけポイント
レム睡眠は、脳波だけ見ると覚醒に近い点が特徴です。深い眠りを表す徐波睡眠とは区別します。
睡眠の問題では、レム睡眠、ノンレム睡眠、徐波睡眠、夢、筋緊張、眼球運動をセットで整理しておくと解きやすくなります。
選択肢の確認
1.レム睡眠
判定:最も適切。
レム睡眠では、覚醒時に類似した低振幅速波が脳波上でみられ、急速眼球運動が生じます。夢をみることが多い睡眠段階であり、本問の説明に合致します。
2.ノンレム睡眠(第Ⅰ期)
判定:誤り。
ノンレム睡眠第Ⅰ期は、覚醒から睡眠へ移行する浅い睡眠段階です。うとうとした状態で、入眠期にあたります。夢をみることが多く、低振幅速波が優勢な睡眠段階としてはレム睡眠が適切です。
3.ノンレム睡眠(第Ⅱ期)
判定:誤り。
ノンレム睡眠第Ⅱ期は、睡眠紡錘波や K 複合がみられる段階です。睡眠全体の中で比較的多くを占めますが、覚醒時に似た低振幅速波と夢の多さを特徴とする段階ではありません。
4.ノンレム睡眠(第Ⅲ期)
判定:誤り。
ノンレム睡眠第Ⅲ期は、深い睡眠に近づく段階で、徐波が増えてきます。低振幅速波が優勢なレム睡眠とは異なります。
5.ノンレム睡眠(第Ⅳ期)
判定:誤り。
ノンレム睡眠第Ⅳ期は、深い徐波睡眠として整理される段階です。脳波では高振幅徐波が中心となり、覚醒時に似た低振幅速波が優勢なレム睡眠とは異なります。
覚えるポイント
- レム睡眠は、急速眼球運動、夢、低振幅速波が特徴です。
- レム睡眠では、脳は活動的ですが筋緊張は低下します。
- ノンレム睡眠の深い段階では、徐波が多くなります。
- 第Ⅱ期では、睡眠紡錘波や K 複合が重要です。
9AM35
問題文
[9AM35]
ベンゾジアゼピン系抗不安薬を服用している高齢者の介護において、注意すべき有害事象を 1 つ選べ。
選択肢
- 1.黄疸
- 2.振戦
- 3.転倒
- 4.頻尿
- 5.胃潰瘍
答え
- 3.転倒
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、高齢者がベンゾジアゼピン系抗不安薬を服用している場合に注意すべき有害事象が問われています。
高齢者では、眠気、ふらつき、筋弛緩、認知機能への影響などから、転倒リスクが高まることが重要です。
解説
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、不安や緊張を和らげたり、睡眠を助けたりする目的で使われることがあります。
一方で、鎮静、眠気、注意力低下、ふらつき、筋弛緩、記憶への影響などが起こることがあります。高齢者では薬の影響を受けやすく、夜間のトイレ移動や立ち上がり時に転倒する危険が高まります。
転倒は、骨折、頭部外傷、寝たきり、生活機能低下につながることがあるため、介護や医療の場面では特に注意が必要です。
多職種連携での注意点
公認心理師は薬を処方しませんが、面接や観察で眠気、ふらつき、転倒歴、認知機能の変化に気づいた場合、医師、看護師、薬剤師、介護職と情報共有することが重要です。
薬剤の中止や変更は医師の判断が必要です。支援者は、本人が自己判断で服薬を中断しないように配慮しながら、安全面の確認を行います。
選択肢の確認
1.黄疸
判定:誤り。
黄疸は、皮膚や白目が黄色くなる状態で、肝胆道系の疾患や溶血などに関連します。薬剤によって肝機能障害が問題になることはありますが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を服用する高齢者の介護で最も注意すべき典型的な有害事象としては転倒です。
2.振戦
判定:誤り。
振戦は、手などがふるえる症状です。薬剤、神経疾患、アルコール離脱などでみられることがあります。ベンゾジアゼピン系薬剤では、むしろ鎮静やふらつきによる転倒リスクが重要です。
3.転倒
判定:正しい。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、眠気、注意力低下、ふらつき、筋弛緩を生じることがあり、高齢者では転倒の危険が高まります。介護場面で特に注意すべき有害事象です。
4.頻尿
判定:誤り。
頻尿は、排尿回数が増える状態です。泌尿器疾患、糖尿病、薬剤、加齢などさまざまな要因で生じます。本問のベンゾジアゼピン系抗不安薬で最も注意すべき有害事象としては転倒が適切です。
5.胃潰瘍
判定:誤り。
胃潰瘍は、胃粘膜が損傷される疾患で、非ステロイド性抗炎症薬、ピロリ菌、ストレスなどが関係します。ベンゾジアゼピン系抗不安薬の高齢者介護で最も注意すべき有害事象ではありません。
覚えるポイント
- ベンゾジアゼピン系薬剤では、眠気、ふらつき、筋弛緩に注意します。
- 高齢者では、転倒が重大な有害事象になります。
- 転倒は骨折や生活機能低下につながるため、介護場面で重要です。
- 薬剤に関する判断は医師や薬剤師と連携します。
9AM36
問題文
[9AM36]
抗コリン作用を有する薬剤の使用に注意が必要とされ、激しい目や頭の痛みの発作を特徴とする眼疾患として、適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.角膜炎
- 2.結膜炎
- 3.飛蚊症
- 4.緑内障
- 5.網膜剥離
答え
- 4.緑内障
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、抗コリン作用を有する薬剤と関連して注意が必要な眼疾患として、緑内障を理解しているかが問われています。
激しい目の痛み、頭痛、発作という表現から、急性の眼圧上昇を伴う緑内障を想起します。
解説
緑内障は、視神経に障害が生じ、視野が障害される疾患です。眼圧の上昇が関係することがあります。
特に閉塞隅角緑内障では、眼房水の流れが妨げられて眼圧が急上昇し、激しい眼痛、頭痛、吐き気、視力低下、虹視などを生じることがあります。このような急性発作は緊急対応が必要です。
抗コリン作用を有する薬剤は、散瞳などを介して閉塞隅角緑内障の発作を誘発または悪化させる可能性があるため注意が必要です。抗コリン作用は、一部の向精神薬、抗ヒスタミン薬、パーキンソン病治療薬、過活動膀胱治療薬などで問題になることがあります。
医療・保健領域での注意点
公認心理師は薬剤を処方しませんが、薬の副作用や禁忌に関わる身体症状を見逃さない視点が大切です。目の激痛や急な視力変化を訴える場合は、医療職への速やかな相談が必要です。
本問では、抗コリン作用と激しい目や頭の痛みの発作という組合せから、緑内障が適切です。
選択肢の確認
1.角膜炎
判定:誤り。
角膜炎は、角膜に炎症が生じる疾患です。痛み、充血、異物感、流涙、視力低下などがみられることがありますが、抗コリン作用を有する薬剤の使用に特に注意が必要な眼疾患としては緑内障が適切です。
2.結膜炎
判定:誤り。
結膜炎は、結膜に炎症が生じる疾患で、充血、目やに、かゆみなどがみられます。感染やアレルギーが関係します。本問の抗コリン作用や激しい目や頭の痛みの発作とは結びつきにくい疾患です。
3.飛蚊症
判定:誤り。
飛蚊症は、視界に虫や糸くずのようなものが浮いて見える症状です。加齢による硝子体の変化で起こることもありますが、網膜裂孔や網膜剥離のサインとなる場合もあります。抗コリン作用を有する薬剤に特に注意が必要な疾患ではありません。
4.緑内障
判定:正しい。
緑内障、特に閉塞隅角緑内障では、抗コリン作用をもつ薬剤によって眼圧上昇のリスクが問題になることがあります。激しい目や頭の痛みの発作を特徴とする眼疾患として適切です。
5.網膜剥離
判定:誤り。
網膜剥離は、網膜が剥がれる疾患で、飛蚊症、光視症、視野欠損などがみられることがあります。緊急性の高い眼疾患ですが、抗コリン作用を有する薬剤の使用に注意が必要な疾患としては緑内障が適切です。
覚えるポイント
- 緑内障では、眼圧上昇や視神経障害が問題になります。
- 抗コリン作用を有する薬剤は、緑内障で注意が必要です。
- 激しい眼痛、頭痛、吐き気、急な視力低下は、医療機関への速やかな相談が必要です。
- 公認心理師も、薬剤や身体疾患に関わるリスクを多職種と共有します。
9AM37
問題文
[9AM37]
児童福祉法における「児童」の定義として、正しいものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.満 13 歳に満たない者
- 2.満 14 歳に満たない者
- 3.満 15 歳に満たない者
- 4.満 18 歳に満たない者
- 5.満 20 歳に満たない者
答え
- 4.満 18 歳に満たない者
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、児童福祉法における「児童」の定義が問われています。
児童福祉法では、児童とは満18歳に満たない者をいいます。
解説
児童福祉法は、児童の福祉を保障し、児童が心身ともに健やかに育成されることを目的とする重要な法律です。
児童福祉法における「児童」は、満18歳に満たない者と定義されます。これは、児童相談所、児童養護施設、里親、要保護児童対策地域協議会、児童虐待対応など、児童福祉領域の制度理解の基礎になります。
年齢の定義は法律によって異なることがあります。例えば、少年法の「少年」や民法上の成年年齢などとは、制度の目的が異なるため、混同しないことが大切です。
法規・倫理上のポイント
法規問題では、対象年齢、実施主体、通告義務、相談機関を正確に押さえます。児童福祉法の「児童」は、満18歳に満たない者です。
公認心理師が児童福祉領域で関わる場合、児童本人の安全、保護者支援、虐待の疑いへの対応、関係機関との連携を考える必要があります。
選択肢の確認
1.満 13 歳に満たない者
判定:誤り。
児童福祉法における児童は、満13歳に満たない者ではありません。満18歳に満たない者です。
2.満 14 歳に満たない者
判定:誤り。
満14歳に満たない者という区分は、刑事責任年齢など他の制度理解で問題になることがありますが、児童福祉法における児童の定義ではありません。
3.満 15 歳に満たない者
判定:誤り。
児童福祉法における児童は、満15歳に満たない者ではありません。児童福祉法では満18歳に満たない者と定義されます。
4.満 18 歳に満たない者
判定:正しい。
児童福祉法における児童は、満18歳に満たない者です。本問の正答です。
5.満 20 歳に満たない者
判定:誤り。
満20歳に満たない者ではありません。児童福祉法における児童は満18歳に満たない者です。法律ごとの年齢区分を混同しないようにします。
覚えるポイント
- 児童福祉法の「児童」は、満18歳に満たない者です。
- 児童福祉法は、児童相談所、児童虐待対応、児童福祉施設などの基礎になります。
- 年齢区分は法律ごとに異なるため、制度名とセットで覚えます。
- 児童福祉領域では、本人の安全と関係機関連携が重要です。
9AM38
問題文
[9AM38]
少年院において、少年に対する生活指導を担当する職種として、正しいものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.刑務官
- 2.検察官
- 3.法務教官
- 4.保護観察官
- 5.家庭裁判所調査官
答え
- 3.法務教官
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、少年院において少年の生活指導や矯正教育を担う職種として、法務教官を選べるかが問われています。
司法・犯罪領域では、機関名と職種の役割を対応させて覚えることが重要です。
解説
少年院は、家庭裁判所の決定により送致された少年に対して、矯正教育を行う施設です。
少年院では、非行のある少年が社会生活に適応し、再非行を防ぎ、立ち直ることを目的として、生活指導、教科指導、職業指導、体育、特別活動などが行われます。
このうち、少年に対する生活指導などを担当する職種が法務教官です。法務教官は、少年の生活全般に関わりながら、規則正しい生活、対人関係、自己理解、社会性、将来の生活設計などを支援します。
司法・犯罪領域での注意点
少年支援では、非行行為だけでなく、発達歴、家庭環境、学校生活、交友関係、トラウマ、精神疾患、発達特性などを含めて理解することが重要です。
公認心理師が司法領域で働く場合、法務教官、保護観察官、家庭裁判所調査官、医療・福祉・教育機関などとの役割分担を理解しておく必要があります。
選択肢の確認
1.刑務官
判定:誤り。
刑務官は、主に刑事施設で受刑者などの処遇や施設の保安を担当する職種です。少年院で少年に対する生活指導を担当する職種としては、法務教官が適切です。
2.検察官
判定:誤り。
検察官は、犯罪捜査や公訴の提起、裁判の遂行などを担う法律専門職です。少年院で生活指導を担当する職種ではありません。
3.法務教官
判定:正しい。
法務教官は、少年院などで少年に対する生活指導や矯正教育を担当します。本問の正答です。
4.保護観察官
判定:誤り。
保護観察官は、保護観察所で、保護観察中の人への指導監督や補導援護、更生保護に関する業務を担います。少年院内で生活指導を担当する職種ではありません。
5.家庭裁判所調査官
判定:誤り。
家庭裁判所調査官は、家庭裁判所で少年事件や家事事件に関する調査を行い、裁判官の判断に必要な情報を提供します。少年院で日常的な生活指導を担当する職種ではありません。
覚えるポイント
- 少年院で生活指導や矯正教育を担当するのは、法務教官です。
- 保護観察所で保護観察に関わるのは、保護観察官です。
- 家庭裁判所で調査を行うのは、家庭裁判所調査官です。
- 司法領域では、機関と職種の役割をセットで覚えます。
9AM39
問題文
[9AM39]
労働基準法に規定されている内容として、正しいものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.受動喫煙の防止
- 2.病者の就業禁止
- 3.衛生委員会の設置
- 4.使用者の安全配慮義務
- 5.時間外労働時間の上限規制
答え
- 5.時間外労働時間の上限規制
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、産業・労働領域の法規として、労働基準法に規定される内容を選べるかが問われています。
選択肢の中では、時間外労働時間の上限規制が労働基準法に規定されています。
解説
労働基準法は、労働条件の最低基準を定める基本的な法律です。労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、賃金、解雇、時間外労働などに関する規定を含みます。
時間外労働を行わせるには、いわゆる36協定などの手続が必要です。また、長時間労働の是正の観点から、時間外労働時間には上限規制が設けられています。
公認心理師が産業領域で支援する場合、メンタルヘルス不調を本人の個人的問題だけで捉えず、労働時間、業務量、休息、職場環境、ハラスメント、復職支援などを含めて見立てることが重要です。
産業・労働領域での注意点
労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法は混同しやすい法律です。労働時間や休暇は労働基準法、衛生委員会やストレスチェックは労働安全衛生法、安全配慮義務は労働契約法と整理します。
本問では、労働基準法に規定されている内容として、時間外労働時間の上限規制が正しいです。
選択肢の確認
1.受動喫煙の防止
判定:誤り。
受動喫煙の防止は、健康増進法や職場の安全衛生管理の文脈で扱われます。労働基準法に規定されている内容として本問で選ぶものではありません。
2.病者の就業禁止
判定:誤り。
病者の就業禁止は、労働安全衛生法に関連する内容です。感染症や一定の疾病により就業が不適当な場合の就業制限に関わります。労働基準法の規定としては該当しません。
3.衛生委員会の設置
判定:誤り。
衛生委員会は、労働安全衛生法に基づく制度です。職場の衛生管理や労働者の健康障害防止などを審議します。労働基準法に規定されている内容ではありません。
4.使用者の安全配慮義務
判定:誤り。
使用者の安全配慮義務は、労働契約法において重要な概念です。労働者の生命や身体などの安全に配慮する義務を指します。労働基準法に規定されている内容としては、時間外労働時間の上限規制が適切です。
5.時間外労働時間の上限規制
判定:正しい。
時間外労働時間の上限規制は、労働基準法に規定されている内容です。長時間労働の是正や労働者の健康確保に関わる重要な規定です。
覚えるポイント
- 労働基準法は、労働時間、休憩、休日、賃金、年次有給休暇などの最低基準を定めます。
- 時間外労働時間の上限規制は、労働基準法に関係します。
- 衛生委員会や病者の就業禁止は、労働安全衛生法に関係します。
- 安全配慮義務は、労働契約法に関係します。
- 産業領域では、心理支援と労働法規の基礎知識を結びつけて理解します。
9AM40
問題文
[9AM40]
オプトアウト同意に基づく研究を計画する場合に必須となる要件を 1 つ選べ。
選択肢
- 1.希望する研究対象者に報酬を支払う。
- 2.全ての研究対象者に研究結果を開示する。
- 3.全ての研究対象者から書面による同意を得る。
- 4.全ての研究対象者に参加を拒否する機会を保障する。
- 5.未成年の研究対象者から本人と保護者の同意を得る。
答え
- 4.全ての研究対象者に参加を拒否する機会を保障する。
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、研究倫理におけるオプトアウト同意の要件が問われています。
オプトアウトでは、研究対象者に研究情報を知らせ、参加を拒否できる機会を保障することが重要です。
解説
オプトアウト同意とは、研究対象者から事前に個別の明示的同意を得る方法ではなく、研究に関する情報を公開または通知し、研究対象者が拒否できる機会を保障する方法です。
研究対象者が拒否しない場合に、一定の条件のもとで研究利用を進める仕組みです。特に、既存資料や診療情報などを用いる研究で問題になります。
ただし、オプトアウトは、研究者が自由に研究を進めてよいという意味ではありません。研究目的、利用する情報、研究実施機関、問い合わせ先、拒否の方法などを分かりやすく示し、研究対象者が参加を拒否できる機会を保障する必要があります。
また、研究計画は倫理審査を受け、個人情報保護や研究対象者の権利に配慮して実施される必要があります。
法規・倫理上のポイント
研究倫理では、説明と同意、個人情報保護、倫理審査、研究参加の自由、撤回や拒否の機会を整理して押さえます。
本問では、オプトアウト同意に基づく研究で必須となる要件として、全ての研究対象者に参加を拒否する機会を保障することが正しいです。
選択肢の確認
1.希望する研究対象者に報酬を支払う。
判定:誤り。
研究参加に対して謝礼や交通費が支払われる場合はありますが、オプトアウト同意に基づく研究で必須となる要件ではありません。報酬の有無よりも、研究情報の提示と拒否機会の保障が重要です。
2.全ての研究対象者に研究結果を開示する。
判定:誤り。
研究結果の公表やフィードバックが行われることはありますが、全ての研究対象者に個別に研究結果を開示することが、オプトアウト同意の必須要件というわけではありません。
3.全ての研究対象者から書面による同意を得る。
判定:誤り。
全ての研究対象者から書面による同意を得る方法は、オプトインの明示的同意に近い方法です。オプトアウトでは、一定の条件のもとで、個別の書面同意ではなく、情報公開と拒否機会の保障を行います。
4.全ての研究対象者に参加を拒否する機会を保障する。
判定:正しい。
オプトアウト同意では、研究対象者に研究情報を知らせ、参加や情報利用を拒否できる機会を保障することが必須です。本問の正答です。
5.未成年の研究対象者から本人と保護者の同意を得る。
判定:誤り。
未成年を対象とする研究では、本人の理解力に応じた説明や保護者の同意など、慎重な倫理的配慮が必要です。ただし、本問が問うオプトアウト同意に基づく研究の一般的な必須要件としては、参加を拒否する機会の保障が最も適切です。
覚えるポイント
- オプトアウト同意では、研究情報を公開または通知し、拒否できる機会を保障します。
- 研究対象者が参加を拒否できることが重要です。
- 全員から書面同意を得ることは、オプトアウトの必須要件ではありません。
- 研究では、倫理審査、個人情報保護、研究参加の自由を必ず意識します。
9AM41
問題文
[9AM41]
特別支援教育における、支援のための構造化の考え方を踏まえた対応の例に該当しないものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.活動に応じて、マットや机などで空間を分ける。
- 2.1 日や週のスケジュールを見えやすいところに掲示する。
- 3.議論の場を構築し、できるだけ多くのアイディアを出すように促す。
- 4.コミュニケーション場面における登場人物の会話や思考の内容を、イラストと吹き出しで示す。
- 5.登校したら、教科書を机にしまう、給食袋をロッカーに掛けるなど、一連の流れを手順化する。
答え
- 3.議論の場を構築し、できるだけ多くのアイディアを出すように促す。
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、特別支援教育における構造化の考え方が問われています。
構造化とは、見通しをもちやすくし、何を、どこで、いつ、どの順番で、どのように行うかを分かりやすくする支援です。
解説
特別支援教育における構造化は、特に自閉スペクトラム症など、見通しのもちにくさ、環境変化への不安、手順理解の困難、暗黙のルールの理解の難しさがある児童生徒への支援で重要です。
構造化には、次のような考え方があります。
- 空間を分けて、活動の意味を分かりやすくする。
- スケジュールを視覚化して、時間の見通しをもてるようにする。
- 手順を示して、次に何をするかを明確にする。
- 会話や社会的状況を視覚的に示して、対人場面を理解しやすくする。
本問は「該当しないもの」を選ぶ問題です。選択肢3の「議論の場を構築し、できるだけ多くのアイディアを出すように促す」は、ブレインストーミングや集団討議の促進には関係しますが、構造化の典型的な対応ではありません。
ひっかけポイント
構造化は「自由に発想させる」ことではなく、環境、時間、手順、人とのやりとりを分かりやすく整理する支援です。
公認心理師は、児童生徒の特性を「努力不足」とみなすのではなく、環境調整や視覚的支援によって学びやすさを整える視点をもつことが重要です。
選択肢の確認
1.活動に応じて、マットや机などで空間を分ける。
判定:該当する。
活動内容に応じて空間を分けることは、物理的構造化に当たります。どこで何をするのかが分かりやすくなり、児童生徒が活動に取り組みやすくなります。
2.1 日や週のスケジュールを見えやすいところに掲示する。
判定:該当する。
スケジュールを視覚的に示すことは、時間の構造化に当たります。見通しをもてることで、不安の軽減や行動の切り替えの支援につながります。
3.議論の場を構築し、できるだけ多くのアイディアを出すように促す。
判定:正答。該当しない。
これは集団討議やブレインストーミングに近い対応です。発想を広げることを目的としており、構造化の中心である空間、時間、手順、視覚的支援を明確にする対応ではありません。
4.コミュニケーション場面における登場人物の会話や思考の内容を、イラストと吹き出しで示す。
判定:該当する。
会話や思考をイラストや吹き出しで示すことは、社会的状況やコミュニケーションを視覚的に分かりやすくする支援です。対人場面の理解を助ける構造化の一例といえます。
5.登校したら、教科書を机にしまう、給食袋をロッカーに掛けるなど、一連の流れを手順化する。
判定:該当する。
登校後の行動を手順化することは、活動の流れを明確にする構造化です。何をどの順番で行うかが分かりやすくなり、児童生徒の自立的な行動を支えます。
覚えるポイント
- 構造化は、環境、時間、手順、情報を分かりやすく整理する支援です。
- 視覚的スケジュール、空間の区分、手順化は構造化の代表例です。
- この問題では「該当しないもの」を選ぶため、選択肢3が正答です。
- 特別支援教育では、本人の努力だけでなく環境調整を重視します。
9AM42
問題文
[9AM42]
応用行動分析において、行動の機能に該当しないものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.他者の注目の獲得
- 2.要求した事物の獲得
- 3.嫌な場面や活動の回避
- 4.感覚・自己刺激の随伴
- 5.興味のある活動の開始
答え
- 5.興味のある活動の開始
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、応用行動分析における行動の機能が問われています。
行動の機能とは、その行動が何によって維持されているか、つまり行動の結果として何が得られているかを考える視点です。
解説
応用行動分析では、行動を「困った行動」と決めつけるのではなく、行動がどのような機能をもっているかを分析します。
代表的な行動の機能には、次のようなものがあります。
- 注目の獲得
- 物や活動の獲得
- 嫌な場面や課題からの逃避・回避
- 感覚刺激や自己刺激の獲得
例えば、授業中に大声を出す行動が、教師や友人の注目を得ることで維持されている場合があります。また、課題中に離席する行動が、苦手な課題から逃れることで維持されている場合もあります。
本問は「該当しないもの」を選ぶ問題です。選択肢5の「興味のある活動の開始」は、行動の結果として得られる機能というより、活動の始まりや状況の記述に近く、代表的な行動の機能としては扱いにくいものです。
ひっかけポイント
行動の機能は「行動の見た目」ではなく、「その行動によって何が起き、その行動が維持されているか」を見ます。
公認心理師としては、問題行動を叱責だけで対応するのではなく、機能的アセスメントに基づき、代替行動の形成や環境調整を検討することが重要です。
選択肢の確認
1.他者の注目の獲得
判定:該当する。
他者の注目を得ることは、行動の代表的な機能です。大声を出す、物を投げる、話しかけ続けるなどの行動が、周囲の反応によって維持されることがあります。
2.要求した事物の獲得
判定:該当する。
欲しい物や活動を得ることは、行動の機能に該当します。例えば、泣くことでおもちゃを得る、要求行動によって好きな活動を得るなどが考えられます。
3.嫌な場面や活動の回避
判定:該当する。
嫌な課題、苦手な活動、不快な場面から逃れることは、逃避・回避の機能です。課題中の離席や拒否が、課題を中断させる結果によって維持される場合があります。
4.感覚・自己刺激の随伴
判定:該当する。
感覚刺激や自己刺激を得ることも、行動の機能に該当します。特定の身体運動、音、触覚刺激などが、その人にとって感覚的な強化になっている場合があります。
5.興味のある活動の開始
判定:正答。該当しない。
興味のある活動を始めることは、状況や行動のきっかけとして記述されることはありますが、応用行動分析でいう代表的な行動の機能そのものではありません。行動の機能としては、注目、事物の獲得、逃避・回避、感覚刺激などを押さえます。
覚えるポイント
- 行動の機能は、「その行動によって何が得られるか」で考えます。
- 代表的な機能は、注目、物や活動の獲得、逃避・回避、感覚刺激です。
- この問題では「該当しないもの」を選ぶため、選択肢5が正答です。
- 問題行動への支援では、機能を把握して代替行動を教えることが重要です。
9AM43
問題文
[9AM43]
A. Bandura が提唱した自己効力感〈self-efficacy〉の認識に影響を与える 4 つの要因に該当しないものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.代理体験
- 2.達成体験
- 3.言語的説得
- 4.情動的喚起
- 5.機能的自律性
答え
- 5.機能的自律性
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、A. Bandura の自己効力感に影響する4つの要因が問われています。
自己効力感とは、「自分はその行動をうまく実行できる」という見通しや信念のことです。
解説
A. Bandura は、自己効力感に影響する主な情報源として、次の4つを示しました。
- 達成体験
- 代理体験
- 言語的説得
- 生理的・情動的状態
自己効力感を最も強く高めやすいのは、実際に自分で成功した経験である達成体験です。また、他者が成功するのを見る代理体験、周囲から「できそうだ」と励まされる言語的説得、不安や緊張などの身体・情動状態も自己効力感に影響します。
本問は「該当しないもの」を選ぶ問題です。選択肢5の機能的自律性は、G. Allport のパーソナリティ理論に関連する概念であり、Bandura の自己効力感の4要因には含まれません。
ひっかけポイント
自己効力感の4要因は、「達成」「代理」「言語」「情動」と短く覚えると整理しやすいです。
公認心理師の支援では、クライエントが小さな成功体験を積めるように課題を調整し、自己効力感を高めることが重要です。
選択肢の確認
1.代理体験
判定:該当する。
代理体験は、他者が成功する様子を見ることで「自分にもできそうだ」と感じることです。自己効力感に影響を与える4つの要因の1つです。
2.達成体験
判定:該当する。
達成体験は、自分自身が実際に成功した経験です。自己効力感を高める最も重要な要因として理解されます。
3.言語的説得
判定:該当する。
言語的説得は、他者から励ましや肯定的なフィードバックを受けることで、できるという見通しが高まることです。自己効力感の要因に含まれます。
4.情動的喚起
判定:該当する。
情動的喚起は、不安、緊張、落ち着き、身体反応などの状態が自己効力感に影響することを表します。強い不安があると「できない」と感じやすくなり、落ち着いていると実行できる感覚をもちやすくなります。
5.機能的自律性
判定:正答。該当しない。
機能的自律性は、もともと別の目的で始まった行動が、後にそれ自体で動機づけられるようになるという G. Allport の概念です。Bandura の自己効力感に影響する4つの要因には含まれません。
覚えるポイント
- 自己効力感は、「自分はできる」という実行可能性の信念です。
- 4要因は、達成体験、代理体験、言語的説得、生理的・情動的状態です。
- この問題では「該当しないもの」を選ぶため、機能的自律性が正答です。
- 支援では、小さな成功体験を積み重ねることが自己効力感の向上につながります。
9AM44
問題文
[9AM44]
経営環境の変化に適応していくための組織変革に不可欠とされる、変革型リーダーシップの構成要素に該当しないものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.知的刺激
- 2.カリスマ性
- 3.個別配慮性
- 4.士気を鼓舞する動機づけ
- 5.フォロワーとの資源の交換
答え
- 5.フォロワーとの資源の交換
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、産業・組織心理学における変革型リーダーシップの構成要素が問われています。
変革型リーダーシップは、組織変革や環境変化への適応に向けて、フォロワーの価値観、意欲、成長を引き出すリーダーシップです。
解説
変革型リーダーシップでは、リーダーが単に命令や報酬で人を動かすのではなく、組織のビジョンを示し、メンバーの意欲や創造性を引き出します。
代表的な構成要素には、次のようなものがあります。
- カリスマ性、または理想化された影響
- 士気を鼓舞する動機づけ
- 知的刺激
- 個別配慮性
知的刺激は、メンバーに新しい視点で考えることを促す関わりです。個別配慮性は、メンバー一人ひとりの成長やニーズに配慮することです。士気を鼓舞する動機づけは、魅力的な目標やビジョンによって意欲を高めることです。
本問は「該当しないもの」を選ぶ問題です。選択肢5の「フォロワーとの資源の交換」は、報酬や見返りを交換する交換型リーダーシップに近い考え方であり、変革型リーダーシップの構成要素ではありません。
ひっかけポイント
変革型リーダーシップは「変化、ビジョン、成長、創造性」。交換型リーダーシップは「報酬、取引、交換」と整理します。
公認心理師が産業領域で関わる場合、組織変革によるストレス、上司部下関係、職場風土、心理的安全性などにも注目します。
選択肢の確認
1.知的刺激
判定:該当する。
知的刺激は、メンバーに既存の考え方を見直し、新しい視点や創造的な解決を促す関わりです。変革型リーダーシップの構成要素です。
2.カリスマ性
判定:該当する。
カリスマ性は、リーダーが信頼や尊敬を集め、フォロワーに理想や価値を示す働きです。変革型リーダーシップの構成要素として扱われます。
3.個別配慮性
判定:該当する。
個別配慮性は、メンバー一人ひとりの能力、課題、成長、ニーズに応じて支援することです。変革型リーダーシップの構成要素です。
4.士気を鼓舞する動機づけ
判定:該当する。
士気を鼓舞する動機づけは、魅力的な目標やビジョンを示し、メンバーの意欲を高める働きです。変革型リーダーシップに含まれます。
5.フォロワーとの資源の交換
判定:正答。該当しない。
フォロワーとの資源の交換は、報酬や利益と行動を交換する交換型リーダーシップに近い考え方です。変革型リーダーシップの構成要素ではないため、本問の正答です。
覚えるポイント
- 変革型リーダーシップは、ビジョン、成長、創造性、意欲を重視します。
- 構成要素は、カリスマ性、士気を鼓舞する動機づけ、知的刺激、個別配慮性です。
- 交換や報酬によって行動を引き出す考え方は、交換型リーダーシップに近いです。
- この問題では「該当しないもの」を選ぶため、選択肢5が正答です。
9AM45
問題文
[9AM45]
児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉における 4 つの一般原則に該当しないものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.差別の禁止
- 2.休み、遊ぶ権利
- 3.子どもの意見の尊重
- 4.子どもの最善の利益
- 5.生命、生存及び発達に対する権利
答え
- 2.休み、遊ぶ権利
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、児童の権利に関する条約、いわゆる子どもの権利条約の4つの一般原則が問われています。
「該当しないもの」を選ぶ問題である点に注意します。
解説
子どもの権利条約では、子どもを保護の対象としてだけでなく、権利の主体として捉えます。
4つの一般原則は、次の内容です。
- 差別の禁止
- 子どもの最善の利益
- 生命、生存及び発達に対する権利
- 子どもの意見の尊重
本問の選択肢2「休み、遊ぶ権利」は、子どもの権利条約に含まれる大切な権利ですが、4つの一般原則そのものではありません。したがって「該当しないもの」として正答になります。
ひっかけポイント
「休み、遊ぶ権利」は条約上の権利として重要です。ただし、4つの一般原則に含まれるかを問われているため、正答は2です。
公認心理師が子どもに関わる際は、子どもの安全、発達、意見表明、最善の利益を尊重し、保護者や学校、福祉機関と連携しながら支援する必要があります。
選択肢の確認
1.差別の禁止
判定:該当する。
差別の禁止は、子どもの権利条約における4つの一般原則の1つです。人種、性別、障害、家庭状況などによって不利益を受けないことが重要です。
2.休み、遊ぶ権利
判定:正答。該当しない。
休み、遊ぶ権利は、子どもの権利条約に含まれる重要な権利です。しかし、4つの一般原則には含まれません。この問題では「一般原則に該当しないもの」を選ぶため、選択肢2が正答です。
3.子どもの意見の尊重
判定:該当する。
子どもの意見の尊重は、4つの一般原則の1つです。子どもに関わる事柄では、年齢や発達段階に応じて子どもの意見を聴き、尊重することが求められます。
4.子どもの最善の利益
判定:該当する。
子どもの最善の利益は、4つの一般原則の1つです。子どもに関わる判断では、子どもにとって何が最も利益になるかを優先的に考えます。
5.生命、生存及び発達に対する権利
判定:該当する。
生命、生存及び発達に対する権利は、4つの一般原則の1つです。子どもが生き、成長し、発達する権利を保障する視点です。
覚えるポイント
- 子どもの権利条約の4つの一般原則は、差別の禁止、最善の利益、生命・生存・発達、意見の尊重です。
- 「休み、遊ぶ権利」は重要な権利ですが、4つの一般原則ではありません。
- この問題では「該当しないもの」を選ぶため、選択肢2が正答です。
- 子ども支援では、保護だけでなく、子どもを権利の主体として尊重します。
9AM46
問題文
[9AM46]
論文内に t 検定の結果として、「t(133)=2.788,p=.013,d=1.359」と記載されていた。この記述に示されている情報を 1 つ選べ。
選択肢
- 1.効果量
- 2.相関係数
- 3.標準偏差
- 4.有意水準
答え
- 1.効果量
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、t 検定の結果表記に含まれるdの意味が問われています。
「d=1.359」は、一般に Cohen の d などの効果量を表します。
解説
t 検定の結果は、論文では次のような形で記載されます。
- t(133)=2.788:t 値と自由度を示します。
- p=.013:p 値を示します。
- d=1.359:効果量を示します。
効果量は、差の大きさや関連の強さを表す指標です。統計的に有意かどうかだけでなく、その差が実質的にどれくらい大きいのかを理解するために使われます。
p 値は、帰無仮説のもとで観測された結果が得られる確率に関係します。一方、効果量は、結果の大きさを表すため、p 値とは意味が異なります。
ひっかけポイント
p は p 値、d は効果量です。有意水準は研究者が事前に設定する基準で、一般に 5 パーセントや 1 パーセントなどが使われます。
心理統計では、「有意差がある」だけでなく、「どの程度の差があるか」を見ることが重要です。そのため、効果量の理解は研究論文を読むうえで欠かせません。
選択肢の確認
1.効果量
判定:正しい。
「d=1.359」は、Cohen の d などの効果量を示す表記です。効果量は、群間差などの大きさを表します。本問の正答です。
2.相関係数
判定:誤り。
相関係数は、2つの変数の関連の強さと方向を表す指標で、一般に r で表されます。本問の d は相関係数ではありません。
3.標準偏差
判定:誤り。
標準偏差は、データのばらつきを表す指標で、SD などと表記されます。本問の d=1.359 は標準偏差そのものではなく、効果量です。
4.有意水準
判定:誤り。
有意水準は、統計的仮説検定で有意と判断する基準であり、研究者が事前に設定します。p=.013 は p 値であり、d=1.359 は効果量です。
覚えるポイント
- t 検定の結果で d は、効果量を表します。
- p は p 値です。
- t は t 値、括弧内の数値は自由度です。
- 効果量は、差の実質的な大きさを理解するために重要です。
9AM47
問題文
[9AM47]
古典的恐怖条件づけの手続の説明として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.特定の自発的行動への、恐怖反応を誘発する刺激の随伴
- 2.特定の自発的行動に随伴した、恐怖反応を誘発する刺激の除去
- 3.回避や対処が不可能な形での、恐怖反応を誘発する刺激の繰り返し提示
- 4.もともとは恐怖反応を誘発しない刺激への、恐怖反応を誘発する刺激の随伴
答え
- 4.もともとは恐怖反応を誘発しない刺激への、恐怖反応を誘発する刺激の随伴
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、古典的恐怖条件づけの基本手続が問われています。
もともとは恐怖を引き起こさない刺激が、恐怖を引き起こす刺激と対になって提示されることで、恐怖反応を引き起こすようになる点がポイントです。
解説
古典的条件づけは、ある刺激と別の刺激が繰り返し結びつくことで、もともと反応を引き起こさなかった刺激が反応を引き起こすようになる学習です。
恐怖条件づけでは、例えば、もともとは恐怖を引き起こさない音が、強い恐怖を引き起こす刺激と一緒に提示されます。その結果、音だけでも恐怖反応が生じるようになります。
このとき、もともとは恐怖を引き起こさない刺激が条件刺激、恐怖を引き起こす刺激が無条件刺激、学習後に条件刺激に対して生じる恐怖反応が条件反応です。
ひっかけポイント
自発的行動とその結果の関係を扱うのはオペラント条件づけです。古典的条件づけでは、刺激と刺激の結びつきに注目します。
恐怖症や PTSD などの理解では、恐怖条件づけや回避行動の維持が重要になります。心理支援では、曝露療法などの行動療法的理解にもつながります。
選択肢の確認
1.特定の自発的行動への、恐怖反応を誘発する刺激の随伴
判定:誤り。
自発的行動に刺激が随伴するという説明は、オペラント条件づけに近い表現です。古典的恐怖条件づけでは、自発的行動ではなく、刺激と刺激の結びつきが中心です。
2.特定の自発的行動に随伴した、恐怖反応を誘発する刺激の除去
判定:誤り。
自発的行動の後に嫌悪刺激が除去されることは、負の強化などのオペラント条件づけで説明されます。古典的恐怖条件づけの手続ではありません。
3.回避や対処が不可能な形での、恐怖反応を誘発する刺激の繰り返し提示
判定:誤り。
回避や対処が不可能な嫌悪刺激の反復提示は、学習性無力感の形成に関係する説明です。古典的恐怖条件づけの手続として最も適切ではありません。
4.もともとは恐怖反応を誘発しない刺激への、恐怖反応を誘発する刺激の随伴
判定:最も適切。
もともとは恐怖反応を引き起こさない刺激が、恐怖反応を引き起こす刺激と対になって提示されることで、その刺激だけでも恐怖反応が生じるようになります。古典的恐怖条件づけの説明として適切です。
覚えるポイント
- 古典的条件づけは、刺激と刺激の結びつきによる学習です。
- 恐怖条件づけでは、中性刺激が恐怖刺激と結びつき、恐怖反応を引き起こすようになります。
- 自発的行動と結果の関係を扱うのは、オペラント条件づけです。
- 回避不能な嫌悪刺激の反復提示は、学習性無力感と関連します。
9AM48
問題文
[9AM48]
交通事故などで損傷を受けた場合、遂行機能障害を生じる可能性が高い脳の領野として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.後頭連合野
- 2.前頭連合野
- 3.側頭連合野
- 4.頭頂連合野
答え
- 2.前頭連合野
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、遂行機能と関係の深い脳領域が問われています。
計画、抑制、切り替え、問題解決、見通しをもった行動などに関わるのは、主に前頭連合野です。
解説
遂行機能とは、目的に向けて行動を計画し、状況に応じて調整し、不要な反応を抑制しながら実行する働きです。
遂行機能には、次のような能力が含まれます。
- 計画を立てる。
- 優先順位を決める。
- 衝動を抑える。
- 注意を切り替える。
- 問題を解決する。
- 行動の結果を予測する。
これらは、前頭葉の中でも前頭連合野と深く関係します。交通事故や頭部外傷で前頭連合野に損傷があると、知能検査の成績が大きく低下していなくても、日常生活では段取りが悪い、衝動的、同じ失敗を繰り返す、社会的判断が難しいなどの困難が生じることがあります。
アセスメントの視点
遂行機能障害では、検査結果だけでなく、日常生活での行動、仕事や学校での困難、家族からの情報を合わせて評価することが重要です。
高次脳機能障害の支援では、本人の努力不足と誤解せず、環境調整、手順化、メモやスケジュールの活用、家族支援、多職種連携を行います。
選択肢の確認
1.後頭連合野
判定:誤り。
後頭連合野は、視覚情報の処理や視覚認知に関係します。損傷により視覚失認などが問題になることがありますが、遂行機能障害と最も関連が深い領域ではありません。
2.前頭連合野
判定:最も適切。
前頭連合野は、計画、判断、抑制、柔軟な切り替え、問題解決などの遂行機能に深く関わります。交通事故などで損傷を受けると遂行機能障害を生じる可能性が高いため、本問の正答です。
3.側頭連合野
判定:誤り。
側頭連合野は、聴覚情報、言語理解、記憶、物体認知などに関係します。損傷により記憶障害や聴覚・言語関連の問題が生じることがありますが、遂行機能障害の中心領域としては前頭連合野が適切です。
4.頭頂連合野
判定:誤り。
頭頂連合野は、空間認知、身体感覚の統合、注意などに関係します。損傷により半側空間無視、構成障害、失行などがみられることがあります。遂行機能障害と最も関連する領域ではありません。
覚えるポイント
- 遂行機能は、計画、抑制、切り替え、問題解決に関わります。
- 遂行機能と関係が深いのは、前頭連合野です。
- 前頭葉損傷では、検査成績だけでなく日常生活上の困難が重要になります。
- 高次脳機能障害では、環境調整と多職種連携が支援の鍵になります。
9AM49
問題文
[9AM49]
子どもに司法面接を行う際の留意点として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.答えやすいように、複数の選択肢を提示して選ばせる。
- 2.面接者自身の表情や声のトーンに配慮し、中立的に聞く。
- 3.出来事の背景を理解するために、「なぜそうなったか」を尋ねる。
- 4.沈黙が生じた場合、別の質問をして会話が途切れないようにする。
答え
- 2.面接者自身の表情や声のトーンに配慮し、中立的に聞く。
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、子どもに対する司法面接の基本姿勢が問われています。
司法面接では、誘導を避け、子どもの記憶に基づく自発的な語りをできるだけ正確に聴取することが重要です。
解説
司法面接は、虐待や犯罪被害などについて、子どもからできるだけ正確で信頼性の高い情報を得るための面接です。
子どもは大人の表情、声のトーン、質問の仕方、反応に影響を受けやすいことがあります。そのため、面接者は中立的な態度を保ち、答えを誘導しないように注意します。
望ましい面接では、自由報告を促す開かれた質問を中心にします。例えば、「何があったか、覚えていることを話してください」のように、子どもが自分の言葉で話せる質問が重視されます。
司法・犯罪領域での注意点
司法面接では、子どもを支援したい気持ちがあっても、面接者の期待や判断を示さないことが重要です。誘導質問、暗示、評価的反応を避けます。
「なぜ」と問う質問は、子どもに責められているように感じさせたり、理由を作らせたりする可能性があります。沈黙も、子どもが思い出したり言葉を探したりしている時間として尊重する必要があります。
選択肢の確認
1.答えやすいように、複数の選択肢を提示して選ばせる。
判定:誤り。
選択肢を提示すると、子どもの回答を誘導したり、実際には記憶していない内容を選ばせたりする危険があります。司法面接では、自由報告を促す開かれた質問を重視します。
2.面接者自身の表情や声のトーンに配慮し、中立的に聞く。
判定:最も適切。
面接者の表情や声のトーンは、子どもの語りに影響を与える可能性があります。そのため、中立的に聞き、誘導や評価を避けることが司法面接では重要です。
3.出来事の背景を理解するために、「なぜそうなったか」を尋ねる。
判定:誤り。
「なぜ」と尋ねると、子どもが責められていると感じたり、理由を推測して答えたりする可能性があります。司法面接では、出来事の理由を求めるより、何が起きたかを子どもの言葉で語ってもらうことが重要です。
4.沈黙が生じた場合、別の質問をして会話が途切れないようにする。
判定:誤り。
沈黙は、子どもが思い出したり、言葉を探したりしている時間である場合があります。すぐに別の質問を重ねると、語りを妨げたり誘導につながったりする可能性があります。
覚えるポイント
- 司法面接では、誘導を避け、中立的に聞きます。
- 子どもの自由報告を促す開かれた質問が重要です。
- 選択肢を提示する質問や「なぜ」という質問は慎重に扱います。
- 面接者の表情、声のトーン、反応も子どもの語りに影響します。
9AM50
問題文
[9AM50]
日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となり、合理的配慮の提供と不当な差別的取扱いの禁止を義務付けている法律を 1 つ選べ。
選択肢
- 1.児童福祉法
- 2.知的障害者福祉法
- 3.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律〈障害者差別解消法〉
- 4.義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律〈教育機会確保法〉
答え
- 3.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律〈障害者差別解消法〉
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、合理的配慮の提供と不当な差別的取扱いの禁止を定める法律が問われています。
正答は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、いわゆる障害者差別解消法です。
解説
障害者差別解消法は、障害を理由とする差別をなくし、障害のある人もない人も共に生きる社会を実現することを目的とする法律です。
対象となる分野は、教育、医療、福祉、公共交通、行政サービス、買い物、職場以外の日常生活や社会生活など、広い範囲に及びます。
この法律では、主に次の2点が重要です。
- 不当な差別的取扱いの禁止
- 合理的配慮の提供
不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害を理由としてサービス提供を拒否したり、制限したり、条件をつけたりすることです。
合理的配慮とは、障害のある人から社会的障壁を取り除くための配慮を求める意思表明があった場合に、過重な負担がない範囲で必要かつ合理的な対応を行うことです。
法規・倫理上のポイント
合理的配慮は、特別扱いではなく、社会的障壁を取り除き、同じスタートラインに立つための調整です。
公認心理師は、教育、医療、福祉、産業などの場面で、本人の困難を個人の問題だけにせず、環境調整や制度上の配慮を含めて支援を考える必要があります。
選択肢の確認
1.児童福祉法
判定:誤り。
児童福祉法は、児童の福祉を保障し、児童が心身ともに健やかに育成されることを目的とする法律です。児童相談所、児童福祉施設、児童虐待対応などに関係しますが、合理的配慮の提供と不当な差別的取扱いの禁止を広く義務付ける法律としては障害者差別解消法が適切です。
2.知的障害者福祉法
判定:誤り。
知的障害者福祉法は、知的障害者の福祉や支援に関する法律です。知的障害のある人への福祉サービスに関係しますが、日常生活及び社会生活全般の広い分野で障害を理由とする差別解消を推進する法律ではありません。
3.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律〈障害者差別解消法〉
判定:正しい。
障害者差別解消法は、障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供を求める法律です。日常生活及び社会生活全般に係る広い分野を対象とするため、本問の正答です。
4.義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律〈教育機会確保法〉
判定:誤り。
教育機会確保法は、不登校児童生徒などへの教育機会の確保や支援に関係する法律です。教育領域では重要ですが、合理的配慮の提供と不当な差別的取扱いの禁止を日常生活及び社会生活全般にわたり義務付ける法律ではありません。
覚えるポイント
- 障害者差別解消法は、不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供を定めます。
- 合理的配慮は、社会的障壁を取り除くための必要かつ合理的な調整です。
- 児童福祉法は児童福祉、教育機会確保法は不登校支援に関係します。
- 公認心理師は、本人支援だけでなく環境調整や制度理解も含めて支援を考えます。
9AM51
問題文
[9AM51]
2021 年(令和 3 年)に改正された少年法によって、18 歳及び 19 歳の少年について、原則検察官送致とする対象事件が拡大されるなど、他の年齢の少年と一部異なる取扱いをする特例が定められた。この法律に基づく 18 歳及び 19 歳の少年の呼称として、正しいものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.虞犯少年
- 2.触法少年
- 3.特定少年
- 4.犯罪少年
答え
- 3.特定少年
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、2021 年の少年法改正により定められた、18 歳及び 19 歳の少年の呼称が問われています。
改正少年法では、18 歳及び 19 歳の少年について、他の年齢の少年とは一部異なる取扱いをする特例が設けられ、この対象は特定少年と呼ばれます。
解説
少年法では、20 歳に満たない者を少年として扱います。そのうち、18 歳及び 19 歳の少年については、民法上の成年年齢の引下げなどを背景に、少年法上も特別な取扱いが定められました。
この 18 歳及び 19 歳の少年が特定少年です。
特定少年については、家庭裁判所に送致される点は少年法の枠組みに残りますが、原則として検察官送致となる事件の対象が拡大されるなど、17 歳以下の少年とは一部異なる取扱いが設けられています。
司法・犯罪領域での注意点
少年法では、年齢区分と呼称を正確に押さえます。特に、触法少年、犯罪少年、虞犯少年、特定少年は混同しやすい用語です。
公認心理師が司法・犯罪領域で関わる場合、少年の発達段階、家庭環境、学校生活、非行の背景、再非行リスク、立ち直り支援を含めて理解することが大切です。
選択肢の確認
1.虞犯少年
判定:誤り。
虞犯少年は、一定の問題行動や環境などから、将来罪を犯すおそれがあるとされる少年を指します。2021 年改正少年法における 18 歳及び 19 歳の少年の呼称ではありません。
2.触法少年
判定:誤り。
触法少年は、刑罰法令に触れる行為をしたが、刑事責任年齢に達していないため刑事責任を問われない少年を指します。18 歳及び 19 歳の少年を表す呼称ではありません。
3.特定少年
判定:正しい。
特定少年は、2021 年改正少年法により、18 歳及び 19 歳の少年について設けられた呼称です。原則検察官送致の対象事件が拡大されるなど、他の年齢の少年と一部異なる取扱いが定められています。
4.犯罪少年
判定:誤り。
犯罪少年は、罪を犯した少年を指します。少年法上の重要な区分ですが、2021 年改正により 18 歳及び 19 歳の少年を特に指す呼称ではありません。
覚えるポイント
- 18 歳及び 19 歳の少年は、改正少年法では特定少年と呼ばれます。
- 触法少年は、刑事責任年齢に達していない少年の刑罰法令に触れる行為に関係します。
- 犯罪少年は、罪を犯した少年です。
- 虞犯少年は、将来罪を犯すおそれがあるとされる少年です。
- 少年法の問題では、年齢、行為の内容、家庭裁判所や検察官送致の流れを整理します。
9AM52
問題文
[9AM52]
生徒指導提要(令和 4 年改訂、文部科学省)が示す、いじめ対応の重層的支援構造のうち、自校のいじめに関する基本方針の理解を深めるための、道徳科や学級・ホームルーム活動等における取組に該当するものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.課題早期発見対応
- 2.課題未然防止教育
- 3.発達支持的生徒指導
- 4.困難課題対応的生徒指導
答え
- 2.課題未然防止教育
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、生徒指導提要におけるいじめ対応の重層的支援構造が問われています。
「自校のいじめに関する基本方針の理解を深める」「道徳科や学級・ホームルーム活動等における取組」という表現から、いじめが起こる前に学級全体・学校全体へ働きかける課題未然防止教育を選びます。
解説
生徒指導提要では、生徒指導を重層的な支援構造として整理しています。いじめ対応でも、問題が起きてから対応するだけでなく、日常的な発達支援、未然防止、早期発見、困難課題への対応を組み合わせて考えます。
課題未然防止教育は、特定の課題が深刻化する前に、児童生徒がその課題を理解し、望ましい行動を選べるようにする教育的取組です。
本問のように、道徳科や学級・ホームルーム活動などで、自校のいじめ防止基本方針の理解を深める取組は、いじめの未然防止に向けた教育です。そのため、課題未然防止教育に該当します。
教育領域での注意点
いじめ対応では、被害児童生徒の安全確保を最優先にしつつ、学校全体で未然防止、早期発見、組織的対応を行うことが重要です。
公認心理師やスクールカウンセラーは、児童生徒本人の支援だけでなく、教職員、保護者、管理職、関係機関と連携し、学校全体の支援体制を考える視点が求められます。
選択肢の確認
1.課題早期発見対応
判定:誤り。
課題早期発見対応は、いじめなどの課題の兆候を早く見つけ、早期に対応する取組です。アンケート、面談、観察、相談体制の整備などが関係します。本問のように、道徳科や学級・ホームルーム活動で基本方針の理解を深める取組は、発生前の教育的予防である課題未然防止教育に当たります。
2.課題未然防止教育
判定:正しい。
課題未然防止教育は、いじめなどの課題が起こる前に、児童生徒が理解を深め、適切な行動を選べるようにする教育的取組です。自校のいじめに関する基本方針の理解を深める道徳科や学級・ホームルーム活動等の取組は、これに該当します。
3.発達支持的生徒指導
判定:誤り。
発達支持的生徒指導は、全ての児童生徒の発達を支える日常的な生徒指導です。自己理解、他者理解、人間関係形成、社会性の育成などを広く支えます。本問は、いじめという特定課題に対する未然防止教育を問うているため、課題未然防止教育が適切です。
4.困難課題対応的生徒指導
判定:誤り。
困難課題対応的生徒指導は、深刻化した課題や複雑な背景をもつ事案に対して、組織的・専門的に対応する支援です。いじめ重大事態や複合的な困難への対応などが該当します。本問の活動は、問題が深刻化した後の対応ではありません。
覚えるポイント
- いじめの基本方針を学び、未然防止につなげる取組は課題未然防止教育です。
- 課題早期発見対応は、兆候を見つけて早く対応する取組です。
- 困難課題対応的生徒指導は、深刻化・複雑化した事案への対応です。
- 発達支持的生徒指導は、全ての児童生徒の発達を支える日常的な生徒指導です。
9AM53
問題文
[9AM53]
糖尿病の 3 大合併症に含まれないものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.腎症
- 2.網膜症
- 3.神経障害
- 4.骨粗しょう症
答え
- 4.骨粗しょう症
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、糖尿病の3大合併症が問われています。
糖尿病の3大合併症は、糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害です。本問は「含まれないもの」を選ぶ問題なので、骨粗しょう症が正答です。
解説
糖尿病では、高血糖が長く続くことで、血管や神経に障害が生じます。特に細い血管が障害されることで、腎臓、網膜、神経に合併症が起こりやすくなります。
糖尿病の3大合併症は次の3つです。
- 腎症
- 網膜症
- 神経障害
糖尿病腎症は、腎機能の低下や透析につながることがあります。糖尿病網膜症は、視力低下や失明の原因になることがあります。糖尿病神経障害は、しびれ、痛み、感覚低下、自律神経症状などを生じます。
医療・保健領域での注意点
糖尿病支援では、食事、運動、服薬、自己管理、合併症予防に加えて、抑うつ、治療疲れ、生活上のストレスにも配慮します。
骨粗しょう症は骨量低下や骨折リスクに関わる疾患ですが、糖尿病の3大合併症には含まれません。
選択肢の確認
1.腎症
判定:含まれる。
糖尿病腎症は、糖尿病の3大合併症の1つです。高血糖による腎臓の細小血管障害により、腎機能が低下することがあります。この問題では「含まれないもの」を選ぶため、正答ではありません。
2.網膜症
判定:含まれる。
糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症の1つです。網膜の血管障害により、視力低下や失明につながることがあります。この問題では「含まれないもの」を選ぶため、正答ではありません。
3.神経障害
判定:含まれる。
糖尿病神経障害は、糖尿病の3大合併症の1つです。手足のしびれ、痛み、感覚低下、自律神経症状などがみられることがあります。この問題では「含まれないもの」を選ぶため、正答ではありません。
4.骨粗しょう症
判定:正答。含まれない。
骨粗しょう症は、骨密度の低下により骨折しやすくなる疾患です。糖尿病患者で骨折リスクが問題になることはありますが、糖尿病の3大合併症には含まれません。この問題では「含まれないもの」を選ぶため、選択肢4が正答です。
覚えるポイント
- 糖尿病の3大合併症は、腎症、網膜症、神経障害です。
- 腎症は腎機能低下、網膜症は視力障害、神経障害はしびれや感覚低下と関連します。
- 骨粗しょう症は、糖尿病の3大合併症には含まれません。
- 糖尿病支援では、身体管理と心理的負担の両方を理解します。
9AM54
問題文
[9AM54]
休職者の復職のためにリワークプログラムを実施している公的機関に該当するものを 2 つ選べ。
選択肢
- 1.労働基準監督署
- 2.精神保健福祉センター
- 3.地域産業保健センター
- 4.地域包括支援センター
- 5.地域障害者職業センター
答え
- 2.精神保健福祉センター
- 5.地域障害者職業センター
解説
正答
2、5
この問題のポイント
この問題では、休職者の復職支援で用いられるリワークプログラムを実施する公的機関が問われています。
正答は、精神保健福祉センターと地域障害者職業センターです。2つ選ぶ問題なので、両方を押さえる必要があります。
解説
リワークプログラムは、うつ病などのメンタルヘルス不調により休職した人が、復職に向けて生活リズム、作業能力、対人スキル、ストレス対処、再発予防などを整えるための支援です。
リワークは、医療機関、企業、公的機関などで実施されることがあります。公的機関としては、精神保健福祉センターや地域障害者職業センターが関係します。
精神保健福祉センターは、地域の精神保健福祉に関する相談や支援、普及啓発などを行う機関で、復職支援プログラムを実施している場合があります。
地域障害者職業センターは、障害のある人の職業評価、職業準備支援、職場適応援助、リワーク支援などを行う機関です。
産業・労働領域での注意点
復職支援では、本人の回復だけでなく、主治医、産業医、人事労務、上司、支援機関との情報共有範囲と役割分担を慎重に整理します。
復職の可否は、心理面だけで判断するものではありません。症状の安定、生活リズム、業務遂行能力、職場環境、再発予防策、就業上の配慮を総合的に検討します。
選択肢の確認
1.労働基準監督署
判定:誤り。
労働基準監督署は、労働基準法などに基づき、労働条件や労働安全衛生に関する監督指導を行う機関です。休職者の復職のためのリワークプログラムを実施する公的機関としては該当しません。
2.精神保健福祉センター
判定:正しい。
精神保健福祉センターは、地域の精神保健福祉に関する専門的な相談や支援を行う公的機関です。休職者の復職支援としてリワークプログラムを実施している場合があり、本問の正答の1つです。
3.地域産業保健センター
判定:誤り。
地域産業保健センターは、小規模事業場の事業者や労働者に対して、産業保健サービスを提供する機関です。産業医の選任義務がない事業場への支援などに関わりますが、リワークプログラムを実施する公的機関として本問で選ぶものではありません。
4.地域包括支援センター
判定:誤り。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談、介護予防、権利擁護、地域包括ケアに関わる機関です。休職者の復職支援としてのリワークプログラムを実施する機関ではありません。
5.地域障害者職業センター
判定:正しい。
地域障害者職業センターは、障害のある人の職業評価、職業準備支援、職場復帰支援などを行う機関です。リワーク支援を実施しており、本問の正答の1つです。
覚えるポイント
- リワークプログラムは、休職者の復職に向けた支援です。
- 公的機関として、精神保健福祉センターと地域障害者職業センターを押さえます。
- 労働基準監督署は、労働法令の監督指導を行う機関です。
- 地域包括支援センターは、高齢者支援の機関です。
- 復職支援では、本人、医療、職場、支援機関の連携が重要です。
9AM55
問題文
[9AM55]
風景構成法を実施する際、被検査者が行うことを 2 つ選べ。
選択肢
- 1.クレヨン等で彩色する。
- 2.人や動物を描き入れる。
- 3.画用紙にサインペンで枠を書く。
- 4.構成するアイテムを描く順番を決める。
- 5.開始時に風景を構成するアイテムを選ぶ。
答え
- 1.クレヨン等で彩色する。
- 2.人や動物を描き入れる。
解説
正答
1、2
この問題のポイント
この問題では、投映法の1つである風景構成法の実施手順が問われています。
被検査者が行うことと、検査者が行うことを区別する必要があります。
解説
風景構成法は、検査者が枠を描いた画用紙に、被検査者が指定されたアイテムを順に描き込み、最後に彩色する投映法です。
一般的には、検査者が画用紙に枠を描き、被検査者に「川」「山」「田」「道」「家」「木」「人」「花」「動物」「石」などを順に描いてもらいます。その後、必要に応じて彩色してもらいます。
この検査では、被検査者が風景をどのように構成するか、各アイテムをどこにどのように描くか、全体のまとまり、空間の使い方、描画時の様子などを総合的に見ます。
ひっかけポイント
風景構成法では、枠を書くのは検査者です。また、描くアイテムや順番は基本的に検査者が提示します。被検査者が行うのは、描き入れることと彩色です。
心理アセスメントでは、投映法の結果だけで判断せず、面接、行動観察、他の心理検査、生活情報と合わせて総合的に理解します。
選択肢の確認
1.クレヨン等で彩色する。
判定:正しい。
風景構成法では、被検査者が描画後にクレヨンや色鉛筆などで彩色することがあります。被検査者が行うこととして適切であり、本問の正答の1つです。
2.人や動物を描き入れる。
判定:正しい。
風景構成法では、検査者から提示されたアイテムに従って、人や動物などを画面内に描き入れます。被検査者が行うこととして適切であり、本問の正答の1つです。
3.画用紙にサインペンで枠を書く。
判定:誤り。
画用紙にサインペンで枠を書くのは、通常、検査者が行います。被検査者が行うことではないため、正答ではありません。
4.構成するアイテムを描く順番を決める。
判定:誤り。
風景構成法では、描くアイテムや順番は基本的に検査者が提示します。被検査者が自由に描く順番を決めるわけではありません。
5.開始時に風景を構成するアイテムを選ぶ。
判定:誤り。
風景構成法では、使用するアイテムは検査者側から提示されます。被検査者が開始時に風景を構成するアイテムを自由に選ぶ手続ではありません。
覚えるポイント
- 風景構成法は、枠の中に指定された風景アイテムを描いてもらう投映法です。
- 枠を書くのは、通常、検査者です。
- 被検査者は、人や動物などを描き入れ、クレヨン等で彩色します。
- 投映法は、単独で断定せず、面接や他検査と合わせて総合的に解釈します。
9AM56
問題文
[9AM56]
E. S. Bordin の作業同盟に含まれる合意の内容として、適切なものを 2 つ選べ。
選択肢
- 1.課題
- 2.時間
- 3.場所
- 4.目的
- 5.料金
答え
- 1.課題
- 4.目的
解説
正答
1、4
この問題のポイント
この問題では、E. S. Bordin の作業同盟の構成要素が問われています。
作業同盟は、心理支援における協働関係を表す重要概念で、目的への合意、課題への合意、情緒的絆から構成されます。
解説
作業同盟とは、クライエントと支援者が、支援の目的や取り組む課題について合意し、協力して取り組む関係のことです。
E. S. Bordin は、作業同盟を次の3つの要素で整理しました。
- 目的への合意
- 課題への合意
- 絆
目的への合意とは、何を目指して支援を行うのかについて共有することです。例えば、不安を軽減する、対人関係を整理する、復職に向けて生活リズムを整えるなどです。
課題への合意とは、その目的に向けて何に取り組むのかを共有することです。例えば、面接で感情を整理する、行動記録をつける、認知再構成に取り組む、家族との関係を検討するなどです。
公認心理師としての注意点
作業同盟は、支援者が一方的に決めるものではありません。クライエントと目的や課題を共有し、本人の納得を確認しながら進めることが大切です。
本問では「合意の内容」として、課題と目的が適切です。時間、場所、料金は面接契約や実施条件として重要ですが、Bordin の作業同盟の中核的な合意内容ではありません。
選択肢の確認
1.課題
判定:正しい。
課題は、作業同盟における合意の内容に含まれます。目的を達成するために、支援の中で何に取り組むかをクライエントと支援者が共有することが重要です。
2.時間
判定:誤り。
面接時間は、面接構造や契約上の重要事項です。しかし、Bordin の作業同盟を構成する合意内容として中心に置かれるのは、目的と課題です。
3.場所
判定:誤り。
面接場所は、心理支援の実施条件として重要です。ただし、Bordin の作業同盟に含まれる合意内容としては、目的と課題が該当します。
4.目的
判定:正しい。
目的は、作業同盟における合意の内容に含まれます。何を目指して支援を行うのかについて、クライエントと支援者が共有することが重要です。
5.料金
判定:誤り。
料金は、私設相談などでは契約上の重要事項です。しかし、Bordin の作業同盟の構成要素として問われる合意内容は、目的と課題です。
覚えるポイント
- Bordin の作業同盟は、目的、課題、絆で構成されます。
- 合意の内容として重要なのは、目的への合意と課題への合意です。
- 時間、場所、料金は面接契約として重要ですが、作業同盟の中核概念ではありません。
- 心理支援では、クライエントと協働して目標と取り組みを確認します。
9AM57
問題文
[9AM57]
我が国の福祉制度において、行政機関による措置に基づいて提供されるものを 2 つ選べ。
選択肢
- 1.居宅介護
- 2.里親委託
- 3.保育所の利用
- 4.児童養護施設の入所
- 5.母子生活支援施設の入所
答え
- 2.里親委託
- 4.児童養護施設の入所
解説
正答
2、4
この問題のポイント
この問題では、福祉制度における措置制度と契約・利用制度の違いが問われています。
行政機関による措置に基づいて提供される代表例として、里親委託と児童養護施設の入所を押さえます。
解説
福祉サービスには、本人や保護者が申請・契約して利用するものと、行政機関の判断に基づく措置として提供されるものがあります。
措置とは、行政機関が必要性を判断し、本人や児童の保護・福祉のためにサービス提供を決定する仕組みです。
児童福祉領域では、子どもの安全や養育環境に重大な課題がある場合、児童相談所などの関与により、里親委託や児童養護施設への入所が措置として行われることがあります。
里親委託は、家庭での養育が困難な児童を里親に委託して養育する制度です。児童養護施設の入所は、保護者のいない児童、虐待されている児童、家庭での養育が困難な児童などを施設で養育・支援する制度です。
福祉領域での注意点
児童福祉では、本人の安全、保護者の状況、家庭環境、児童相談所の判断、関係機関連携を整理して考えます。
居宅介護や保育所の利用、母子生活支援施設の入所は、利用契約や申込みの仕組みと関係するため、本問の「行政機関による措置」として選ぶものではありません。
選択肢の確認
1.居宅介護
判定:誤り。
居宅介護は、障害福祉サービスとして、自宅で入浴、排せつ、食事などの介護を受けるサービスです。利用申請や支給決定、契約に基づいて利用されるものであり、本問の行政機関による措置として提供されるものではありません。
2.里親委託
判定:正しい。
里親委託は、保護者による養育が困難な児童などを里親に委託して養育する制度です。児童福祉において、行政機関による措置に基づいて行われるものに該当します。本問の正答の1つです。
3.保育所の利用
判定:誤り。
保育所の利用は、保護者の就労や疾病などにより保育を必要とする児童について、市町村の利用調整や手続を経て利用されます。現在の制度では、措置というより利用制度として理解されます。
4.児童養護施設の入所
判定:正しい。
児童養護施設の入所は、保護者のいない児童、虐待されている児童、家庭での養育が困難な児童などについて、行政機関による措置に基づいて行われるものに該当します。本問の正答の1つです。
5.母子生活支援施設の入所
判定:誤り。
母子生活支援施設は、配偶者のない女子またはこれに準ずる事情にある女子とその児童を保護し、自立支援を行う施設です。利用にあたっては福祉事務所などが関与しますが、本問で問われる児童福祉の措置としては、里親委託と児童養護施設の入所が適切です。
覚えるポイント
- 措置は、行政機関が必要性を判断してサービス提供を決定する仕組みです。
- 児童福祉では、里親委託と児童養護施設の入所が措置として重要です。
- 保育所利用や居宅介護は、措置ではなく利用制度・契約制度として整理します。
- 児童福祉の問題では、児童相談所、里親、児童養護施設、措置をセットで押さえます。
9AM58
問題文
[9AM58]
自立した生活を送るために必要な活動〈ADL〉のうち、手段的日常生活動作〈IADL〉に該当する項目を 2 つ選べ。
選択肢
- 1.洗濯
- 2.入浴
- 3.着脱衣
- 4.階段昇降
- 5.食事の準備
答え
- 1.洗濯
- 5.食事の準備
解説
正答
1、5
この問題のポイント
この問題では、ADLとIADLの違いが問われています。
ADL は基本的な日常生活動作、IADL はより複雑で自立した生活を送るために必要な手段的日常生活動作です。
解説
ADLは、Activities of Daily Living の略で、日常生活を送るための基本的な動作を指します。食事、排泄、入浴、更衣、移動などが代表例です。
IADLは、Instrumental Activities of Daily Living の略で、基本的な身の回りの動作よりも複雑な生活行為を指します。買い物、調理、洗濯、掃除、金銭管理、服薬管理、交通機関の利用、電話の使用などが含まれます。
本問では、選択肢の中で IADL に該当するものは、洗濯と食事の準備です。
ひっかけポイント
入浴、着脱衣、階段昇降は身体的な基本動作に近く、ADL として整理されます。洗濯や調理は、生活を維持するための複雑な活動なので IADL です。
高齢者支援やリハビリテーション、障害者支援では、ADL と IADL の評価を通して、本人がどの程度自立して生活できるか、どの支援が必要かを考えます。
選択肢の確認
1.洗濯
判定:正しい。
洗濯は、衣類を管理し生活を維持するための複雑な生活行為です。手段的日常生活動作〈IADL〉に該当します。本問の正答の1つです。
2.入浴
判定:誤り。
入浴は、清潔を保つための基本的な日常生活動作です。IADL ではなく、ADL に含まれる項目です。
3.着脱衣
判定:誤り。
着脱衣は、衣服を着たり脱いだりする基本的な日常生活動作です。IADL ではなく、ADL に含まれます。
4.階段昇降
判定:誤り。
階段昇降は、移動に関する基本的な身体動作として ADL に近い項目です。IADL に該当するものとしては、洗濯や食事の準備が適切です。
5.食事の準備
判定:正しい。
食事の準備は、献立を考える、調理する、必要な道具を使うなど複数の能力を要する生活行為です。手段的日常生活動作〈IADL〉に該当します。本問の正答の1つです。
覚えるポイント
- ADLは、食事、排泄、入浴、更衣、移動などの基本的動作です。
- IADLは、洗濯、調理、買い物、金銭管理、服薬管理などの複雑な生活行為です。
- 本問では、洗濯と食事の準備が IADL です。
- 高齢者支援やリハビリテーションでは、ADL と IADL の両方を評価します。
9AM59
問題文
[9AM59]
28 歳の女性A、会社員。 1 年ほど前、Aは特別なストレスはないものの、仕事の意欲を失い、転職を考えていた。しかし、入社時から業務の指導や相談に応じていた上司Bの推薦によって、半年前、新規プロジェクトのチームリーダーに抜てきされた。Aは当初張り切っていたが、プロジェクトは難航し、Aは集中困難や不眠など、心身の不調に陥った。このため、 3 か月前、Bは自らAのチームに加わった。BはAからチームリーダーとしての苦労とチームが抱える問題を聞き取り、チーム運営に関する情報を提供した。その結果、Aの体調も回復し、積極的に仕事に取り組むようになり、プロジェクトも動き始めた。
Aの変化を説明するために用いられる仮説やモデルとして、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.緩衝仮説
- 2.接触仮説
- 3.感情混入モデル
- 4.自己評価維持モデル
- 5.精緻化見込みモデル
答え
- 1.緩衝仮説
解説
正答
1
この問題のポイント
この問題では、職場ストレスとソーシャルサポートの関係を説明する緩衝仮説が問われています。
A は、新規プロジェクトのチームリーダーとなった後、プロジェクトの難航により集中困難や不眠などの心身の不調を示しました。その後、上司 B がチームに加わり、A の苦労を聞き取り、チーム運営に関する情報を提供したことで、A の体調と仕事への取り組みが改善しています。
解説
緩衝仮説とは、ストレスが心身の健康に悪影響を及ぼすとき、周囲からの支援であるソーシャルサポートがその影響を和らげるという考え方です。
本事例では、A はチームリーダーとして大きな負担を抱え、プロジェクトの難航によって不眠や集中困難に陥っています。これは、職場での役割負荷や課題遂行上のストレスが心身の不調につながった状態と理解できます。
そこで、入社時から A を指導し相談に乗ってきた上司 B が、A のチームに加わりました。B は A の苦労を聞き取り、チームが抱える問題を整理し、チーム運営に関する情報を提供しています。
この支援には、次のようなソーシャルサポートが含まれます。
- 苦労を聞く情緒的サポート
- チーム運営の情報を提供する情報的サポート
- チームに加わって支える道具的サポート
その結果、A の体調が回復し、仕事への取り組みも改善しています。このように、ストレスの悪影響をサポートが和らげたと考えられるため、緩衝仮説が最も適切です。
事例問題で見るポイント
事例では、誰が、どのようなストレスを受け、誰からどのような支援を受け、その結果どう変化したかを整理します。
産業・労働領域での注意点
職場のメンタルヘルス支援では、本人の努力だけでなく、上司や同僚からの支援、業務量、役割調整、情報共有、職場環境を含めて見立てます。
選択肢の確認
1.緩衝仮説
判定:最も適切。
緩衝仮説は、ストレスが心身の健康に与える悪影響を、ソーシャルサポートが和らげるという考え方です。本事例では、A がプロジェクトの難航によって不調に陥った後、上司 B の支援により体調と仕事への取り組みが改善しているため、この仮説が最も適切です。
2.接触仮説
判定:誤り。
接触仮説は、異なる集団の成員同士が適切な条件のもとで接触することで、偏見や差別が低減するという仮説です。本事例は、集団間の偏見低減ではなく、職場ストレスに対する上司からの支援の効果が中心です。
3.感情混入モデル
判定:誤り。
感情混入モデルは、感情状態が判断や認知過程に影響を及ぼすことを説明するモデルです。本事例では、A の感情が判断に混入したことよりも、上司 B の支援がストレスの影響を和らげたことが重要です。
4.自己評価維持モデル
判定:誤り。
自己評価維持モデルは、身近な他者の成果や自分との比較が自己評価に影響することを説明するモデルです。本事例では、A と B の比較や自己評価の維持ではなく、B のサポートによるストレス緩和が中心です。
5.精緻化見込みモデル
判定:誤り。
精緻化見込みモデルは、説得過程において、中心ルートと周辺ルートのどちらで態度変容が生じるかを説明するモデルです。本事例は、説得による態度変容ではなく、職場ストレスとソーシャルサポートの関係を扱っています。
覚えるポイント
- 緩衝仮説は、ソーシャルサポートがストレスの悪影響を和らげるという考え方です。
- 職場では、上司や同僚からの情緒的、情報的、道具的サポートが重要です。
- 接触仮説は、集団間の偏見低減に関する仮説です。
- 事例問題では、ストレス要因、支援内容、変化の流れを確認します。
9AM60
問題文
[9AM60]
30 歳の男性A、出版会社に勤務。Aは、幼少期から本が好きで、作家になることを夢見ていた。大学卒業後もアルバイトをしながら執筆活動を続けていたが、 3 年前に作家の夢を断念し、出版会社に就職した。当初は慣れない業務に戸惑い、上司の指摘に落ち込むことも多かったが、少しずつ慣れ、編集作業を一人で任されるようになってきた。最近では、自ら特集記事の企画提案を行うなど主体的に仕事に取り組む姿勢がみられるようになり、自分の役割を果たしていると実感している。
D. E. Super のキャリア発達理論に基づく A の段階として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.維持期
- 2.解放期
- 3.確立期
- 4.成長期
- 5.探索期
答え
- 3.確立期
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、D. E. Super のキャリア発達理論における発達段階が問われています。
A は 30 歳で、出版会社に就職後、仕事に慣れ、編集作業を任され、自ら企画提案を行い、自分の役割を果たしている実感を得ています。この状態は確立期に該当します。
解説
D. E. Super は、キャリアを生涯発達の過程として捉えました。職業選択は一度きりの出来事ではなく、成長、探索、確立、維持、解放という流れの中で変化していきます。
主な段階は、一般に次のように整理されます。
- 成長期:自己概念や職業への関心が育つ時期
- 探索期:進路や職業を試し、選択していく時期
- 確立期:職業生活に入り、仕事上の地位や役割を安定させていく時期
- 維持期:確立した職業上の地位や能力を維持・発展させる時期
- 解放期:仕事からの引退や役割の縮小に向かう時期
本事例の A は、幼少期から作家を夢見ていましたが、3年前に作家の夢を断念し、出版会社に就職しました。当初は慣れない業務に戸惑っていましたが、少しずつ適応し、編集作業を一人で任されるようになっています。
さらに、自ら特集記事を企画提案するなど、主体的に職務に取り組み、自分の役割を果たしている実感を得ています。これは、職業生活の中で自分の役割を確立し、安定させていく過程であるため、確立期が最も適切です。
事例問題で見るポイント
年齢だけでなく、仕事への適応、役割の安定、主体性、職業的自己概念の形成を確認します。
産業・労働領域での注意点
キャリア支援では、本人の過去の夢や価値観、現在の職務適応、将来像をつなげて理解します。
選択肢の確認
1.維持期
判定:誤り。
維持期は、すでに確立した職業上の地位や役割を維持し、発展させる段階です。A は 30 歳で、出版会社に就職して3年が経過し、仕事に慣れながら役割を確立している途中であるため、維持期よりも確立期が適切です。
2.解放期
判定:誤り。
解放期は、職業生活からの引退や役割の縮小に向かう段階です。A は現在、仕事に主体的に取り組み、役割を果たしている実感を得ているため、解放期には該当しません。
3.確立期
判定:最も適切。
確立期は、職業生活の中で仕事に適応し、自分の役割や地位を安定させていく段階です。A は編集作業を任され、企画提案を行い、自分の役割を果たしていると実感しているため、この段階が最も適切です。
4.成長期
判定:誤り。
成長期は、子ども時代に自己概念や職業への興味が形成される段階です。A が幼少期から本を好きで作家を夢見ていた部分は成長期に関係しますが、現在の A の段階としては確立期が適切です。
5.探索期
判定:誤り。
探索期は、進路や職業を試し、選択していく段階です。A はすでに出版会社に就職し、職務に適応し、役割を確立しつつあるため、探索期よりも確立期が適切です。
覚えるポイント
- Super のキャリア発達理論は、成長期、探索期、確立期、維持期、解放期で整理します。
- 確立期は、職業生活に入り、役割や地位を安定させていく時期です。
- 年齢だけでなく、仕事への適応や役割の確立を見ます。
- キャリア支援では、本人の価値観、職務経験、自己概念をつなげて理解します。
9AM61
問題文
[9AM61]
25 歳の女性A、大学院生。 2 か月前から、突発的な強い不安感と、動悸や息苦しさ、胸部圧迫感及び四肢のしびれを伴う発作が生じていると訴え、精神科クリニックを受診した。Aによると、発作は講義室や図書館、自宅など、状況を問わず起こる。突然始まり、10 分間程度で自然に治まる。発作中は「このまま気を失うのではないか」という強い不安を感じ、発作後には疲労感が残る。発作への恐怖から外出を控えるようになり、大学へ通うことが難しくなっている。修士論文の提出期限が迫っており、データ解析の遅れに強いプレッシャーも感じているという。
Aの病態評価のために行う心理検査として、最も優先度が高いものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.CAPS
- 2.HAM-D
- 3.LSAS-J
- 4.PDSS
- 5.STAI
答え
- 4.PDSS
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、A の症状からパニック症の病態を考え、その重症度評価に適した心理検査を選ぶことが求められています。
A には、突発的な強い不安、動悸、息苦しさ、胸部圧迫感、四肢のしびれ、短時間で自然に治まる発作、発作への恐怖による外出回避がみられます。これらはパニック発作とパニック症の評価に関係します。
解説
A は 25 歳の大学院生です。2か月前から、状況を問わず、突然始まり 10 分程度で自然に治まる強い不安発作を経験しています。
発作中には、動悸、息苦しさ、胸部圧迫感、四肢のしびれがあり、「このまま気を失うのではないか」という強い不安を感じています。さらに、発作への恐怖から外出を控え、大学へ通うことが難しくなっています。
この経過からは、パニック発作と、それに伴う予期不安や回避行動が中心にあると考えられます。病態評価のために優先される検査は、PDSSです。
PDSSは、Panic Disorder Severity Scale の略で、パニック症の重症度を評価する尺度です。パニック発作の頻度、苦痛、予期不安、回避行動、生活への支障などを評価します。
事例問題で見るポイント
不安症の鑑別では、発作が突然か、状況依存か、持続時間、身体症状、予期不安、回避行動、生活への支障を整理します。
公認心理師としての注意点
動悸や胸部圧迫感などの身体症状がある場合、心理的要因だけで断定せず、医師による身体疾患の鑑別も重要です。
A には修士論文の提出期限やデータ解析の遅れというストレスもありますが、中心は状況を問わないパニック発作と発作への恐怖です。そのため、STAI などの一般的な不安尺度より、PDSS が最も優先度が高いと判断します。
選択肢の確認
1.CAPS
判定:誤り。
CAPS は、PTSD の診断や重症度評価に用いられる面接尺度です。A には交通事故、災害、暴力被害などのトラウマ体験に関連する侵入症状、回避、認知と気分の変化、過覚醒が中心として示されていません。したがって最優先ではありません。
2.HAM-D
判定:誤り。
HAM-D は、うつ病の重症度評価に用いられる尺度です。A には疲労感や生活への支障はありますが、主症状は突発的な不安発作、身体症状、発作への恐怖、回避です。うつ病評価よりもパニック症評価が優先されます。
3.LSAS-J
判定:誤り。
LSAS-J は、社交不安症の症状評価に用いられる尺度です。A の発作は講義室や図書館だけでなく自宅でも起きており、人前で注目されることへの恐怖が中心とはいえません。したがって最も優先度が高い検査ではありません。
4.PDSS
判定:最も適切。
PDSS は、パニック症の重症度を評価する尺度です。A には突然の強い不安発作、動悸、息苦しさ、胸部圧迫感、しびれ、発作への恐怖、外出回避がみられるため、病態評価として最も優先度が高い検査です。
5.STAI
判定:誤り。
STAI は、状態不安と特性不安を評価する尺度です。A の不安の全体的傾向を把握する補助として使われる可能性はありますが、パニック発作と回避行動の評価には PDSS の方がより直接的で優先度が高いです。
覚えるポイント
- PDSSは、パニック症の重症度を評価する尺度です。
- パニック発作は、突然の強い恐怖や不安と身体症状が短時間で高まる発作です。
- 発作への恐怖や回避行動が生活に支障を及ぼす点も重要です。
- CAPS は PTSD、HAM-D はうつ病、LSAS-J は社交不安症、STAI は不安全般の評価に関係します。
9AM62
問題文
[9AM62]
20 歳の男性A、大学 2 年生。母親Bと精神科クリニックを受診した。Aによると、約 1 年前から、講義中に「前の座席の学生の頭を殴ってしまうのではないか」という考えが繰り返し浮かぶようになった。殴ったりはしないと分かっていても、不安で仕方がなく、気を紛らわせるため、つい爪をかんでしまう。また、 3 か月ほど前、ホームで電車を待っていると、目の前の人を線路に突き落としそうな気がして、強い不安に襲われた。その日以来、電車に乗る際は、Bに同行を求め、「僕は何もしないよね」と何度も確認するようになっており、通学にも大きな支障が出ているという。
Aの状況から考えられる病態を改善する効果が認められている技法として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.認知再構成法
- 2.曝露反応妨害法
- 3.習慣逆転療法〈HRT〉
- 4.持続エクスポージャー法
- 5.眼球運動による脱感作と再処理法〈EMDR〉
答え
- 2.曝露反応妨害法
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、A の症状から強迫症を考え、その治療技法として曝露反応妨害法を選べるかが問われています。
A には、「人を殴ってしまうのではないか」「線路に突き落としそう」という、自分の意思に反して繰り返し浮かぶ侵入的な考えと、それに伴う不安、確認行為がみられます。
解説
A は 20 歳の大学生です。約1年前から、講義中に「前の座席の学生の頭を殴ってしまうのではないか」という考えが繰り返し浮かぶようになっています。本人は実際には殴らないと分かっているにもかかわらず、不安で仕方がありません。
さらに、駅のホームで「目の前の人を線路に突き落としそう」という考えが浮かび、その後、電車に乗る際には母親 B に同行を求め、「僕は何もしないよね」と何度も確認するようになっています。
これは、本人の意思に反して浮かび苦痛を伴う強迫観念と、不安を下げるために繰り返される強迫行為がみられる状態と理解できます。母親に確認する行為は、安心を得るための確認行為として働いています。
強迫症に対して効果が認められている代表的な認知行動療法の技法が、曝露反応妨害法です。
曝露反応妨害法では、不安を引き起こす刺激や状況に段階的に向き合いながら、確認や回避などの強迫行為を行わないように練習します。これにより、不安が自然に下がることを経験し、強迫行為によって不安を下げる悪循環を断ちます。
事例問題で見るポイント
強迫症では、強迫観念、強迫行為、本人の不合理性の認識、生活への支障を確認します。
公認心理師としての注意点
曝露反応妨害法は、本人の同意と心理教育を十分に行い、無理に恐怖場面へ直面させるのではなく、段階づけて実施します。医師との連携も重要です。
選択肢の確認
1.認知再構成法
判定:誤り。
認知再構成法は、非機能的な自動思考や信念を検討し、より柔軟な考え方を形成する技法です。強迫症の支援で補助的に用いられることはありますが、本問の強迫観念と確認行為を改善する効果が特に認められている技法としては、曝露反応妨害法が最も適切です。
2.曝露反応妨害法
判定:最も適切。
曝露反応妨害法は、強迫症に対して効果が認められている代表的な技法です。不安を引き起こす状況に向き合いながら、確認や回避などの強迫行為を行わないようにすることで、強迫症状の維持要因に働きかけます。
3.習慣逆転療法〈HRT〉
判定:誤り。
習慣逆転療法は、チック症や抜毛症、皮膚むしり症など、習慣化した反復行動への支援で用いられます。A には爪かみがありますが、中心病態は「人を傷つけるのではないか」という強迫観念と確認行為であり、最も適切なのは曝露反応妨害法です。
4.持続エクスポージャー法
判定:誤り。
持続エクスポージャー法は、PTSD に対する治療法として知られ、トラウマ記憶や回避に働きかけます。A の主症状はトラウマ記憶ではなく、強迫観念と確認行為であるため、最も適切ではありません。
5.眼球運動による脱感作と再処理法〈EMDR〉
判定:誤り。
EMDR は、PTSD などトラウマ関連症状への治療法として用いられます。本事例では、トラウマ体験に関連した侵入記憶よりも、強迫観念と強迫行為が中心であるため、曝露反応妨害法が適切です。
覚えるポイント
- 強迫症では、強迫観念と強迫行為を確認します。
- 強迫症に対する代表的技法は、曝露反応妨害法です。
- 確認行為や回避は一時的に不安を下げますが、長期的には強迫を維持します。
- HRT はチックや抜毛などの習慣化した反復行動、EMDR や持続エクスポージャー法は PTSD と関連します。
9AM63
問題文
[9AM63]
26 歳の女性A、小学校教師。授業中の私語が多いことを悩んでいた。AがスクールカウンセラーBに相談したところ、学年主任と共に対応方法を検討することになった。Aによると、児童が私語をするたびに叱責しているが、私語が止むのは一瞬で、すぐにまた始まるという。Bも加わっての検討の結果、関係者への適切な倫理的配慮を行った上で実施する、次の取組を計画した。これによると、最初の 1 週間は 1 日当たりの「叱責回数」と「私語の回数」を記録する。次の 1 週間は、Aが叱責を控え、私語が止むまで黙って待ち、同様の記録を行い、私語に対する効果を検証する。
このような実践を説明する枠組みとして、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.経験サンプリング法
- 2.ランダム化比較試験
- 3.ケースコントロール研究
- 4.トランスレーショナル研究
- 5.シングルケース実験デザイン
答え
- 5.シングルケース実験デザイン
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、教育現場での実践を評価する研究法として、シングルケース実験デザインが問われています。
1つの学級または事例に対して、介入前と介入後の行動を継続的に記録し、介入効果を検証している点が重要です。
解説
A は小学校教師で、授業中の私語が多いことに悩んでいます。児童が私語をするたびに叱責していますが、私語が止むのは一瞬で、すぐにまた始まっています。
スクールカウンセラー B と学年主任を含めて検討し、まず 1 週間、1日当たりの「叱責回数」と「私語の回数」を記録します。次の 1 週間は、A が叱責を控え、私語が止むまで黙って待ち、同じ記録を続けます。
このように、介入前の状態を記録し、その後に介入を導入して、同じ指標を継続的に測定する方法は、シングルケース実験デザインとして理解できます。
シングルケース実験デザインでは、少数の対象や1つの事例に対して、ベースラインと介入期を比較し、行動の変化を検討します。臨床、教育、福祉、応用行動分析の実践研究でよく用いられます。
事例問題で見るポイント
介入前に記録を取り、介入後にも同じ指標で記録し、変化を見る場合は、シングルケース実験デザインを考えます。
教育領域での注意点
学校で実践研究を行う場合は、児童の不利益を避けること、関係者への説明、同意、個人情報保護、記録の扱いなど倫理的配慮が必要です。
選択肢の確認
1.経験サンプリング法
判定:誤り。
経験サンプリング法は、日常生活の中で、一定のタイミングやランダムなタイミングに、その時点の感情、行動、状況などを繰り返し記録する方法です。本事例では、介入前後で私語と叱責の回数を比較しているため、シングルケース実験デザインが適切です。
2.ランダム化比較試験
判定:誤り。
ランダム化比較試験は、参加者を介入群と対照群に無作為に割り付け、介入効果を比較する研究デザインです。本事例では、無作為割付や複数群の比較は行われていません。
3.ケースコントロール研究
判定:誤り。
ケースコントロール研究は、結果が生じた群と生じていない群を比較し、過去の曝露要因などを検討する観察研究です。本事例のように、介入を導入して前後の行動変化を検証する枠組みではありません。
4.トランスレーショナル研究
判定:誤り。
トランスレーショナル研究は、基礎研究の知見を臨床や実践に橋渡しする研究を指します。重要な概念ですが、本事例の介入前後の記録に基づく実践評価を最も直接に説明する枠組みではありません。
5.シングルケース実験デザイン
判定:最も適切。
シングルケース実験デザインは、1つまたは少数の事例について、ベースライン期と介入期を設定し、同じ指標を継続的に測定して介入効果を検討する方法です。本事例の取組に合致します。
覚えるポイント
- シングルケース実験デザインは、少数事例で介入効果を検討する方法です。
- ベースライン期と介入期を設定し、同じ指標を継続的に測定します。
- 学校現場での実践研究では、倫理的配慮と関係者との合意が重要です。
- ランダム化比較試験は、無作為割付による群間比較を行う研究です。
9AM64
問題文
[9AM64]
10 歳の女児A、小学 4 年生。登校しぶりを心配した母親Bに伴われて教育相談室を訪れた。Bによると、Aは学習意欲が高く、以前は学校を楽しんでいたが、 1 か月ほど前から朝になると腹痛や頭痛を訴えることが増えている。家庭ではBを手伝い、衣類や食器を整然と並べることを好む。また、家族の予定が変わると不安になり、繰り返し確認することもある。元来、食べ物の好き嫌いは多かったが、 3 か月ほど前、給食で苦手な食材を友達から無理に食べさせられたことをきっかけに、食べ物全般への拒否感が出現した。その後、匂いや食感に敏感になり、食事の量が減少し、体重も低下しているという。
Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.うつ病
- 2.強迫症
- 3.社交不安症
- 4.神経性やせ症
- 5.回避・制限性食物摂取症
答え
- 5.回避・制限性食物摂取症
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、食物摂取の回避や制限が中心となる回避・制限性食物摂取症の理解が問われています。
A は、苦手な食材を無理に食べさせられた体験をきっかけに、食べ物全般への拒否感が出現し、匂いや食感への敏感さ、食事量の減少、体重低下がみられています。
解説
A は 10 歳の小学4年生です。もともと食べ物の好き嫌いが多く、予定変更に不安になりやすい、衣類や食器を整然と並べることを好むなど、こだわりや感覚過敏を示唆する特徴があります。
3か月ほど前、給食で苦手な食材を友達から無理に食べさせられたことをきっかけに、食べ物全般への拒否感が出現しました。その後、匂いや食感に敏感になり、食事量が減少し、体重も低下しています。
この病態は、回避・制限性食物摂取症として理解するのが最も適切です。回避・制限性食物摂取症では、食物への関心の乏しさ、感覚的特徴への回避、食べることによる嫌悪的結果への恐怖などによって、食物摂取が制限されます。その結果、体重減少、栄養不足、心理社会的支障などが生じます。
本事例では、体重低下はありますが、神経性やせ症で中心となる体重増加への強い恐怖や、体型・体重への認知の歪みは示されていません。そのため、神経性やせ症ではなく、回避・制限性食物摂取症が適切です。
事例問題で見るポイント
摂食の問題では、体重低下だけで判断せず、体型や体重へのこだわりがあるか、感覚過敏や嫌悪体験があるか、発達特性が関係するかを確認します。
公認心理師としての注意点
児童の食事量減少や体重低下がある場合、心理支援だけでなく、小児科、児童精神科、栄養士、学校、保護者との連携が重要です。
選択肢の確認
1.うつ病
判定:誤り。
うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの低下、睡眠や食欲の変化、疲労感、集中困難などがみられます。A には登校しぶりや身体症状はありますが、中心は苦手な食材を無理に食べさせられた後の食物摂取の回避、匂いや食感への敏感さ、体重低下です。うつ病が最も適切とはいえません。
2.強迫症
判定:誤り。
強迫症では、反復する強迫観念と、それに伴う不安を下げるための強迫行為が中心です。A には予定変更への不安や確認、整然と並べる傾向がありますが、主訴は食物摂取の回避と制限です。病態理解として最も適切なのは回避・制限性食物摂取症です。
3.社交不安症
判定:誤り。
社交不安症では、人前で否定的に評価されることへの強い恐怖や回避が中心です。A は学校場面での出来事をきっかけに登校しぶりを示していますが、中心は社交場面への評価不安ではなく、食べ物への拒否感、感覚過敏、食事量減少です。
4.神経性やせ症
判定:誤り。
神経性やせ症では、体重増加への強い恐怖、やせ願望、体型や体重に対する認知の歪みが重要です。A には体重低下がありますが、やせたいという願望や体型へのこだわりは示されていません。したがって最も適切ではありません。
5.回避・制限性食物摂取症
判定:最も適切。
回避・制限性食物摂取症では、感覚的特徴への過敏さ、食べることへの嫌悪体験や恐怖、食への関心の乏しさなどにより、摂食が回避・制限されます。A は苦手な食材を無理に食べさせられた体験後に食べ物全般への拒否感が出現し、匂いや食感への敏感さ、食事量減少、体重低下があるため、本問の病態理解として最も適切です。
覚えるポイント
- 回避・制限性食物摂取症では、体型や体重へのこだわりではなく、食物回避や摂取制限が中心です。
- 感覚過敏、嫌悪体験、食への関心の乏しさが関係することがあります。
- 神経性やせ症では、体重増加への恐怖や体型への認知の歪みが重要です。
- 児童の体重低下がある場合は、医療、家庭、学校との連携が必要です。
9AM65
問題文
[9AM65]
35 歳の男性A、システムエンジニア。朝の起床がつらく、疲労感が抜けないと訴えて内科クリニックを受診した。Aによると、納期に追われ、深夜まで仕事をすることが多い。就寝時間が遅くなっているにもかかわらず、寝ようとしても眠れない。このため、会社の始業時間に間に合うように起床することが難しくなっている。朝起きても熟睡感がなく、身体がだるい。日中も強い眠気があり、会議に集中できなかったり、車の運転中に危険を感じたりする。仕事のパフォーマンスも低下し、上司から注意を受けることが増えている。週末は昼過ぎまで寝てしまい、何もできないまま終わってしまうという。
Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.うつ病
- 2.適応障害
- 3.特発性過眠症
- 4.パラソムニア
- 5.概日リズム睡眠・覚醒障害
答え
- 5.概日リズム睡眠・覚醒障害
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、睡眠の量だけでなく、睡眠と覚醒のタイミングのずれに注目して、概日リズム睡眠・覚醒障害を考えることが求められています。
A は深夜まで仕事をする生活が続き、就寝時刻が遅れ、始業時間に合わせて起床することが難しくなっています。日中の眠気、集中困難、運転中の危険、仕事のパフォーマンス低下もみられます。
解説
A は 35 歳のシステムエンジニアで、納期に追われ、深夜まで仕事をすることが多くなっています。就寝時間が遅くなっているにもかかわらず、寝ようとしても眠れず、朝は会社の始業時間に間に合うように起きることが難しくなっています。
このような状態では、本人の体内時計による睡眠・覚醒リズムと、社会的に求められる生活時間がずれていると考えられます。これが概日リズム睡眠・覚醒障害の理解に合います。
概日リズム睡眠・覚醒障害では、眠るべき時間に眠れない、起きるべき時間に起きられない、日中に眠気が強い、学業や仕事に支障が出るなどの問題が生じます。睡眠相後退型では、眠気が生じる時刻と起床可能な時刻が遅くずれます。
A は、週末に昼過ぎまで寝てしまい、何もできないまま終わることもあります。これは、平日の睡眠不足やリズムの乱れを補うように睡眠時刻がさらに遅れる悪循環として理解できます。
事例問題で見るポイント
睡眠の問題では、眠れないことだけでなく、就寝時刻、起床時刻、平日と休日の差、日中の眠気、生活への支障、安全リスクを確認します。
産業・労働領域での注意点
長時間労働や深夜作業が背景にある場合、本人の生活習慣だけに原因を求めず、業務量、納期、勤務体制、職場環境、産業医との連携も検討します。
選択肢の確認
1.うつ病
判定:誤り。
うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの低下、疲労感、睡眠障害、集中困難などがみられます。A には疲労感や集中困難がありますが、中心は深夜労働に伴う睡眠時刻の遅れ、起床困難、日中の眠気であり、概日リズム睡眠・覚醒障害が最も適切です。
2.適応障害
判定:誤り。
適応障害は、明確なストレス因に対する情緒面や行動面の反応が生活に支障をきたす状態です。A には納期に追われるストレスがありますが、本問で最も中心となるのは睡眠・覚醒リズムのずれと、それに伴う起床困難や日中の眠気です。
3.特発性過眠症
判定:誤り。
特発性過眠症は、十分な睡眠をとっても日中の強い眠気が続く睡眠障害です。本事例では、深夜までの仕事、就寝時刻の遅れ、寝ようとしても眠れない、始業時間に起きられないというリズムの問題が中心です。特発性過眠症より概日リズム睡眠・覚醒障害が適切です。
4.パラソムニア
判定:誤り。
パラソムニアは、睡眠中や睡眠覚醒移行期に生じる異常行動や体験を指します。睡眠時遊行、夜驚、悪夢などが含まれます。A には睡眠中の異常行動は示されておらず、睡眠・覚醒リズムのずれが中心です。
5.概日リズム睡眠・覚醒障害
判定:最も適切。
概日リズム睡眠・覚醒障害は、体内時計のリズムと社会的に求められる睡眠・覚醒時間がずれることで、眠るべき時間に眠れない、起きるべき時間に起きられない、日中の眠気や生活機能低下が生じる状態です。A の病態理解として最も適切です。
覚えるポイント
- 概日リズム睡眠・覚醒障害は、睡眠と覚醒のタイミングのずれが中心です。
- 睡眠相後退では、寝る時刻と起きる時刻が遅くずれます。
- 日中の眠気、集中困難、運転中の危険は重要な評価ポイントです。
- 長時間労働が背景にある場合、職場環境や産業保健との連携も考えます。
9AM66
問題文
[9AM66]
21 歳の女性A、大学生。半年ほど前、親しい友人Bから「ときどき、話している相手がAじゃないように感じる」と言われた。それ以来、Bとの関係が次第にぎくしゃくしてきたことが気になり、大学の学生相談室を訪れた。Aによると、以前、気が付くと見知らぬカフェで見覚えのない人と話しており、パニックになったことがある。その際、財布の中には立ち寄った覚えのない店のレシートが入っており、買い物リストの筆跡も自分とは異なっていたという。面談室では、声のトーンや話し方が別人のように急変する場面があったが、Aはそのことを後で説明されても思い出せず、混乱していた。
Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.てんかん
- 2.解離性健忘
- 3.統合失調症
- 4.一過性全健忘
- 5.解離性同一症
答え
- 5.解離性同一症
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、A にみられる同一性の交代と記憶の空白から、解離性同一症を考えることが求められています。
A は、気が付くと見知らぬカフェにいた、見覚えのない人と話していた、覚えのないレシートがあった、筆跡が自分と異なっていた、面談中に声のトーンや話し方が別人のように変化した、という特徴を示しています。
解説
解離性同一症は、複数の同一性状態が存在し、行動、記憶、意識、自己感、感情、知覚などに不連続性がみられる状態です。日常的な物忘れでは説明しにくい記憶の空白を伴うことがあります。
本事例では、A は自分では覚えていない行動の痕跡を経験しています。見知らぬカフェにいたこと、立ち寄った覚えのない店のレシート、筆跡の異なる買い物リストなどは、単なる忘れ物ではなく、記憶の連続性が途切れていることを示唆します。
また、面談室で声のトーンや話し方が別人のように急変し、そのことを後で説明されても思い出せないという点は、同一性状態の交代と、それに伴う健忘を考える重要な所見です。
事例問題で見るポイント
解離症では、記憶の空白、自己感の変化、周囲から見た人格の変化、現実感の変化、生活への支障を整理します。
公認心理師としての注意点
解離症が疑われる場合でも、神経疾患、物質使用、睡眠障害、精神病性障害などの可能性を除外するため、医療機関との連携が重要です。本人の混乱や恐怖を受け止め、安全感を確保しながら支援します。
本問では、記憶の空白だけでなく、別人のような話し方への変化がみられるため、解離性健忘よりも解離性同一症が最も適切です。
選択肢の確認
1.てんかん
判定:誤り。
てんかんでは、発作に伴う意識変容や記憶の欠落が生じることがあります。そのため医学的な鑑別は重要です。しかし本事例では、筆跡の違い、見知らぬ場所での会話、面談中の声や話し方の急変など、同一性状態の交代を示唆する情報が中心であり、病態理解としては解離性同一症が最も適切です。
2.解離性健忘
判定:誤り。
解離性健忘は、通常の物忘れでは説明できない重要な自伝的情報の想起困難を特徴とします。本事例にも健忘はみられますが、声のトーンや話し方が別人のように変化するなど、同一性の交代を示す所見があるため、解離性同一症の方が適切です。
3.統合失調症
判定:誤り。
統合失調症では、幻覚、妄想、思考のまとまりにくさ、陰性症状などがみられます。本事例では、幻聴や妄想よりも、記憶の空白と同一性状態の変化が中心です。そのため、統合失調症より解離性同一症が最も適切です。
4.一過性全健忘
判定:誤り。
一過性全健忘は、突然の前向性健忘を中心とし、通常は短時間で回復する一過性の記憶障害です。人格状態の変化や筆跡の違い、別人のような話し方の変化を説明する概念ではありません。
5.解離性同一症
判定:最も適切。
解離性同一症では、複数の同一性状態が存在し、行動や記憶に不連続性がみられます。A には、覚えのない場所や行動、筆跡の違い、面談中の別人のような話し方の急変、その後の健忘がみられるため、本問の病態理解として最も適切です。
覚えるポイント
- 解離性同一症では、同一性状態の交代と記憶の空白が重要です。
- 解離性健忘は、記憶の想起困難が中心で、同一性の交代までは必須ではありません。
- てんかんや一過性全健忘など、神経学的疾患との鑑別も重要です。
- 解離症の支援では、本人の混乱を受け止め、安全感を高め、医療機関と連携します。
9AM67
問題文
[9AM67]
32 歳の女性A。第一子Bを出産して 12 日後、様子の変化を心配した夫Cに連れられて、分娩した産科クリニックを受診した。CによるとAは、退院直後は穏やかであったが、数日前から、急に奇異な言動がみられるようになった。「赤ちゃんがいなくなった」と叫んで家の外に飛び出したこともある。Cが声をかけると、Aは、「赤ちゃんに申し訳ない」、「赤ちゃんが死んでしまう」と涙を流しながら訴えた。食事も摂らず、夜も眠っていない。日中はBに触れようとせず、「自分は母親ではない」と繰り返すという。医師による診察中、Aは怯えた様子をみせたり、診察室から逃げ出そうとしたりした。
Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.適応障害
- 2.産後うつ病
- 3.統合失調症
- 4.産じょく期精神病
- 5.マタニティー・ブルーズ
答え
- 4.産じょく期精神病
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、出産後まもない時期に急激に出現した精神症状から、産じょく期精神病を考えることが求められています。
A は出産 12 日後で、数日前から急に奇異な言動がみられ、赤ちゃんに関する強い不安や妄想的内容、不眠、食事摂取不良、逃げ出そうとする行動がみられます。
解説
産じょく期精神病は、出産後まもない時期に急性に発症する重篤な精神状態です。混乱、幻覚、妄想、激しい不安、興奮、不眠、気分の変動、現実検討の低下などがみられることがあります。
本事例では、A は第一子を出産して 12 日後です。退院直後は穏やかでしたが、数日前から急に奇異な言動がみられています。「赤ちゃんがいなくなった」と叫んで家の外に飛び出す、「赤ちゃんが死んでしまう」と訴える、「自分は母親ではない」と繰り返すなど、産後の急性精神病状態を示唆する内容があります。
さらに、食事を摂らず、夜も眠っていないこと、診察室から逃げ出そうとすることも重要です。本人と児の安全に関わるリスクがあるため、緊急性の高い状態として理解します。
事例問題で見るポイント
周産期の問題では、出産後の日数、発症の急激さ、睡眠、食事、現実検討、児への関わり、自傷他害や児への危険の有無を確認します。
公認心理師としての注意点
産じょく期精神病が疑われる場合、心理面接だけで対応しようとせず、産科、精神科、家族、保健師などと速やかに連携し、母子の安全確保を優先します。
マタニティー・ブルーズは一過性の涙もろさや気分変動が中心で、通常ここまでの奇異な言動や現実検討の低下は中心ではありません。産後うつ病も重要ですが、本事例は急性の精神病症状が目立つため、産じょく期精神病が最も適切です。
選択肢の確認
1.適応障害
判定:誤り。
適応障害は、明確なストレス因に反応して情緒面や行動面の症状が生じる状態です。本事例では、産後まもなく急に奇異な言動、妄想的な訴え、強い混乱、不眠、食事摂取不良がみられます。適応障害よりも産じょく期精神病が適切です。
2.産後うつ病
判定:誤り。
産後うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの低下、疲労感、罪責感、睡眠障害などがみられます。A には罪責感や涙もろさもありますが、「赤ちゃんがいなくなった」と叫んで飛び出す、「自分は母親ではない」と繰り返す、逃げ出そうとするなど、急性の精神病状態を示す所見が強いため、産じょく期精神病が最も適切です。
3.統合失調症
判定:誤り。
統合失調症でも幻覚や妄想、まとまりにくい言動がみられることがあります。しかし本事例では、出産後 12 日という時期に急性に発症しており、周産期に特有の重篤な病態として産じょく期精神病を考えるのが最も適切です。
4.産じょく期精神病
判定:最も適切。
産じょく期精神病は、出産後まもない時期に急性に発症する重篤な精神状態です。A には、産後 12 日での急激な奇異な言動、赤ちゃんに関する妄想的な訴え、不眠、食事摂取不良、逃避的行動がみられるため、本問の病態理解として最も適切です。
5.マタニティー・ブルーズ
判定:誤り。
マタニティー・ブルーズは、産後数日頃にみられる一過性の涙もろさ、気分変動、不安などを指します。通常は短期間で軽快し、現実検討の著しい低下や危険行動を伴うものではありません。本事例の重篤さからは産じょく期精神病が適切です。
覚えるポイント
- 産じょく期精神病は、産後まもなく急性に発症する重篤な精神状態です。
- 妄想、混乱、不眠、食事摂取不良、児への関わりの異常、危険行動に注意します。
- マタニティー・ブルーズは一過性で比較的軽い気分変動です。
- 周産期の急性精神症状では、母子の安全確保と医療連携を最優先します。
9AM68
問題文
[9AM68]
70 歳の男性A、元会社員。定年退職後も嘱託として働いている。最近、元気がなくなったことを心配した妻Bと共に、精神科クリニックを受診した。Bによると、 6 か月ほど前から口数が減り、身体が動くにもかかわらず、趣味の庭仕事にも関心を示さなくなった。Bが誘っても、Aは「また今度」とだけ話し、興味を失っている様子である。たまに庭仕事に出てきても段取りが悪い。糖尿病の服薬管理や金銭管理は自立できているが、通院日を間違えることがあるという。診察室でAは、「近頃、物忘れが多くなったので、メモ帳が欠かせなくなりました」と心配そうに語る。夜は眠れており、食欲も変わらないという。
Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.うつ病
- 2.軽度認知障害
- 3.持続性抑うつ障害
- 4.前頭側頭型認知症
- 5.レヴィ小体型認知症
答え
- 2.軽度認知障害
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、高齢者の物忘れや意欲低下を、うつ病や認知症と鑑別しながら軽度認知障害として理解できるかが問われています。
A は物忘れを自覚して心配しており、通院日を間違えるなどの認知機能低下がみられます。一方で、服薬管理や金銭管理は自立しており、日常生活の自立は大きく失われていません。
解説
軽度認知障害は、年齢相応よりも認知機能の低下がみられるものの、日常生活の基本的な自立はおおむね保たれている状態です。認知症の前段階として扱われることがありますが、すべてが認知症に進行するわけではありません。
本事例の A は 70 歳で、6か月ほど前から口数が減り、趣味の庭仕事への関心が低下しています。庭仕事をしても段取りが悪く、通院日を間違えることがあります。また本人も「物忘れが多くなった」と心配し、メモ帳を使っています。
一方で、糖尿病の服薬管理や金銭管理は自立できています。夜は眠れており、食欲も変わりません。このため、認知症として生活機能が明らかに低下している段階というより、認知機能の低下はあるが生活の自立が保たれている軽度認知障害が最も適切です。
事例問題で見るポイント
高齢者の認知機能低下では、本人の自覚、家族からの情報、ADL、IADL、服薬管理、金銭管理、通院管理、睡眠や食欲、気分症状を整理します。
公認心理師としての注意点
高齢者の物忘れでは、うつ病、せん妄、薬剤の影響、睡眠障害、身体疾患も鑑別が必要です。医師、家族、地域包括支援センターなどとの連携を考えます。
A には意欲低下もありますが、うつ病で中心となる持続的な抑うつ気分、睡眠・食欲の変化、強い罪責感などは示されていません。したがって、軽度認知障害が最も適切です。
選択肢の確認
1.うつ病
判定:誤り。
うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの低下、睡眠や食欲の変化、疲労感、罪責感などがみられます。A には意欲低下や興味低下がありますが、夜は眠れており、食欲も変わりません。また、本人の物忘れの自覚や通院日の間違い、段取りの悪さが目立つため、軽度認知障害が最も適切です。
2.軽度認知障害
判定:最も適切。
軽度認知障害では、認知機能の低下がみられるものの、日常生活の自立はおおむね保たれています。A は物忘れを自覚し、通院日を間違えることがありますが、服薬管理や金銭管理は自立しているため、本問の病態理解として最も適切です。
3.持続性抑うつ障害
判定:誤り。
持続性抑うつ障害は、慢性的に抑うつ気分が続く状態です。本事例では、6か月ほど前からの変化であり、睡眠や食欲の変化も示されていません。中心は認知機能の低下と生活自立が保たれている点であり、軽度認知障害が適切です。
4.前頭側頭型認知症
判定:誤り。
前頭側頭型認知症では、脱抑制、常同行動、人格変化、共感性の低下、食行動の変化、言語障害などが目立つことがあります。A にはそのような顕著な人格変化や脱抑制は示されておらず、服薬管理や金銭管理も自立しています。
5.レヴィ小体型認知症
判定:誤り。
レヴィ小体型認知症では、認知機能の変動、具体的な幻視、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害などが特徴です。A にはこれらの特徴は示されていません。病態理解としては軽度認知障害が適切です。
覚えるポイント
- 軽度認知障害は、認知機能低下があるが日常生活の自立が大きく失われていない状態です。
- 認知症との違いは、生活機能の障害の程度です。
- 高齢者の意欲低下では、うつ病と認知機能低下の鑑別が重要です。
- 服薬管理、金銭管理、通院管理などの IADL を確認します。
9AM69
問題文
[9AM69]
6 歳の男児A、保育園年長児。父親は所在不明で母親Bと二人暮らしである。Aの発育は順調であったが、乳幼児健康診査時に、Bは「育児書どおりにできない」と泣いた。生真面目な性分で自責感が認められたため、保健師が粘り強く家庭訪問をして医療機関につなぎ、公認心理師Cがほどよい育児の大切さを繰り返し伝えた。Aは年齢相応に育ったが、就学が近づくと、Bは小学校時代の自身のいじめ被害を語り出した。Aの卒園と就学への不安を訴え、就学時健康診断を欠席し、Aの登園も滞りがちになった。CはBの思いを聴きつつ、就学予定校への事前相談を提案したが、Bは拒否した。
このような状況でAとBの支援を検討する場として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.地域ケア会議
- 2.教育支援委員会
- 3.自立支援協議会
- 4.地域連携推進会議
- 5.要保護児童対策地域協議会
答え
- 5.要保護児童対策地域協議会
解説
正答
5
この問題のポイント
この問題では、就学前の子どもと保護者に対して、福祉、保健、医療、教育が連携して支援を検討する場として、要保護児童対策地域協議会を選べるかが問われています。
A は年長児で、就学時健康診断を欠席し、登園も滞りがちです。母親 B は自身のいじめ被害体験と就学への強い不安を抱えており、就学予定校への相談を拒否しています。
解説
要保護児童対策地域協議会は、要保護児童、要支援児童、特定妊婦などに対して、関係機関が情報を共有し、支援方針を協議するための仕組みです。
本事例では、A 自身の発育は年齢相応ですが、就学時健康診断の欠席、登園の滞り、母親 B の強い不安、学校との接点を拒否する状況がみられます。A の就学準備や安定した登園、母子への支援を、個別機関だけで抱えるのは難しい状況です。
B は過去のいじめ被害に関連した不安を語り、A の卒園と就学に強い不安を示しています。これにより、A の教育機会や生活リズムに影響が出ています。この段階では、B を責めるのではなく、母子を支えるために関係機関が連携する場が必要です。
要保護児童対策地域協議会では、保健師、児童相談所、市町村の子ども家庭支援担当、保育園、学校、医療機関、公認心理師などが情報を共有し、A と B の支援方針を検討できます。
事例問題で見るポイント
子どもの問題では、本人の発達だけでなく、保護者の不安、登園・登校状況、就学準備、関係機関の連携、支援拒否の有無を確認します。
福祉領域での注意点
要保護児童対策地域協議会は、虐待が確定している場合だけでなく、支援が必要な児童や家庭について関係機関が協議する場として重要です。
本問では、教育だけの問題ではなく、保護者の心理的困難と子どもの就学・登園への影響を含むため、要保護児童対策地域協議会が最も適切です。
選択肢の確認
1.地域ケア会議
判定:誤り。
地域ケア会議は、高齢者の支援や地域包括ケアの推進に関わる会議です。高齢者の生活支援、介護予防、地域課題の検討などを扱います。本事例の 6 歳児と母親の支援を検討する場としては適切ではありません。
2.教育支援委員会
判定:誤り。
教育支援委員会は、障害のある児童生徒等の就学先や教育的支援について検討する場として関係します。本事例では、A に特別支援教育の対象となる発達上の困難が示されているわけではなく、母親の不安による登園や就学準備への影響が中心です。したがって最も適切ではありません。
3.自立支援協議会
判定:誤り。
自立支援協議会は、障害者総合支援法に基づく地域の障害福祉に関する連携や支援体制の協議に関係します。本事例の就学前児童と母親への支援を検討する場としては、要保護児童対策地域協議会が適切です。
4.地域連携推進会議
判定:誤り。
地域連携推進会議は、地域の関係者が施設や事業所の運営、地域との連携などを協議する場として用いられることがあります。本事例のように、支援が必要な児童と家庭について関係機関が支援方針を検討する場としては、要保護児童対策地域協議会が適切です。
5.要保護児童対策地域協議会
判定:最も適切。
要保護児童対策地域協議会は、要保護児童、要支援児童、特定妊婦などについて、関係機関が情報を共有し、支援方針を検討する場です。A の就学時健康診断欠席や登園の滞り、B の強い不安と支援拒否を踏まえ、母子を多機関連携で支える場として最も適切です。
覚えるポイント
- 要保護児童対策地域協議会は、支援が必要な児童と家庭について多機関連携で協議する場です。
- 子どもの登園・登校の滞りや保護者の強い不安は、家庭全体への支援として捉えます。
- 教育支援委員会は、障害のある児童生徒の教育的支援や就学に関係します。
- 地域ケア会議は高齢者支援、自立支援協議会は障害福祉の地域支援に関係します。
9AM70
問題文
[9AM70]
62 歳の男性A、86 歳の母親Bと二人暮らし。Aは、同じく高齢の親と同居している友人に誘われ、自宅近くに出来た認知症カフェを訪れた。スタッフCが家族の近況について尋ねると、Aは「Bは元気にしており、要介護認定はまだ受けていない」と語った。一方で、気がかりなこととして、 1 年ほど前からBは、火を点けたままで鍋を放置したり、財布や鍵を無くしたりすることが少しずつ増えている。また、Aが物忘れを指摘すると、「そんなことはない」と怒り出し、けんかになることもある。食事や入浴は、現時点では自立しているという。
CがAに提案すべきサービスや機関として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.特別養護老人ホーム
- 2.地域包括支援センター
- 3.小規模多機能型居宅介護
- 4.訪問リハビリテーション
- 5.介護予防通所リハビリテーション
答え
- 2.地域包括支援センター
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、認知症が疑われる高齢者と家族が、まだ要介護認定を受けていない段階で相談すべき機関として、地域包括支援センターを選べるかが問われています。
B は食事や入浴は自立していますが、火の不始末、財布や鍵の紛失、物忘れの指摘への怒りがあり、A は介護や安全面への不安を抱えています。
解説
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。介護予防、権利擁護、認知症支援、介護保険サービス利用の相談、家族支援、地域資源の紹介などを行います。
本事例では、B は 86 歳で、1年ほど前から火を点けたまま鍋を放置する、財布や鍵をなくすことが増えるなど、認知機能低下が疑われる変化があります。食事や入浴は現時点で自立しているため、すぐに施設入所や介護サービス利用を決める段階とは限りません。
また、A が物忘れを指摘すると B が怒り、けんかになることもあります。家族だけで対応しようとすると、関係が悪化したり、火の不始末などの安全リスクが高まったりする可能性があります。
この段階では、まず地域包括支援センターに相談し、認知症の相談、医療受診へのつなぎ、要介護認定の申請、介護予防サービスや地域資源の利用、家族への助言を受けることが適切です。
事例問題で見るポイント
高齢者支援では、認知機能、ADL、IADL、安全リスク、家族の介護負担、要介護認定の有無を整理します。
公認心理師としての注意点
認知症が疑われる場合、本人を責めたり説得だけで解決しようとしたりせず、家族支援と地域資源の活用を考えます。火の不始末などの安全面は早めに共有します。
認知症カフェは家族が相談につながる大切な場ですが、具体的な制度利用や地域の支援調整につなぐには、地域包括支援センターが最も適切です。
選択肢の確認
1.特別養護老人ホーム
判定:誤り。
特別養護老人ホームは、常時介護が必要で在宅生活が困難な高齢者が入所する施設です。B は食事や入浴が自立しており、要介護認定もまだ受けていません。現段階で最初に提案すべきものとしては適切ではありません。
2.地域包括支援センター
判定:最も適切。
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。認知症が疑われる変化、火の不始末、家族の対応困難、要介護認定の未申請という状況から、まず相談先として提案する機関として最も適切です。
3.小規模多機能型居宅介護
判定:誤り。
小規模多機能型居宅介護は、通い、訪問、泊まりを組み合わせて在宅生活を支える介護保険サービスです。利用には要介護認定などが関係します。現段階では、まず地域包括支援センターに相談し、必要なサービスや申請手続きを検討することが適切です。
4.訪問リハビリテーション
判定:誤り。
訪問リハビリテーションは、医師の指示に基づき、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅でリハビリテーションを行うサービスです。本事例では、身体機能のリハビリテーションが主な課題として示されていません。
5.介護予防通所リハビリテーション
判定:誤り。
介護予防通所リハビリテーションは、要支援者などを対象に、通所でリハビリテーションを行うサービスです。B は要介護認定をまだ受けておらず、まずは地域包括支援センターで相談し、必要に応じて認定申請やサービス利用を検討する段階です。
覚えるポイント
- 地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。
- 要介護認定前でも、認知症や介護不安について相談できます。
- 火の不始末は安全リスクとして早めに対応を検討します。
- 認知症支援では、本人への配慮、家族支援、医療受診、介護保険申請、地域資源の活用を組み合わせます。
9AM71
問題文
[9AM71]
15 歳の女子A、中学 3 年生。担任教師の勧めで、母親と共に教育相談センターに来談した。Aは小学生の頃から、テストの点は常に悪く、身支度に時間を要して遅刻が多かったが、明るい性格で、学校生活に問題はなかった。中学生になり、バレーボール部に所属した。Aは当初、フォーメーションの理解に苦労したが、優れた身体能力を活かし、チームに貢献した。高校でもバレーボールを続けることを希望している。一方で、部内で金銭の不適切な貸借が判明した際、Aだけが損をしていることに気付いていなかったことがある。全ての科目の成績は学年最下位付近で低迷が続いている。
Aの状態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.限局性学習症
- 2.軽度知的発達症
- 3.高次脳機能障害
- 4.注意欠如多動症
- 5.自閉スペクトラム症
答え
- 2.軽度知的発達症
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、A の学業面、生活面、社会的判断の困難を総合して、軽度知的発達症として理解できるかが問われています。
A は小学生の頃から全般的に成績が低く、身支度に時間がかかり遅刻が多く、部活動ではフォーメーション理解に苦労しています。また、金銭の不適切な貸借で自分だけが損をしていることに気付けなかったという社会的判断の弱さも示されています。
解説
知的発達症では、知的機能の困難だけでなく、日常生活で必要となる適応機能の困難も重視します。
適応機能には、次のような領域があります。
- 概念的領域:学習、読み書き、計算、時間や金銭の理解など
- 社会的領域:対人関係、社会的判断、だまされやすさ、状況理解など
- 実用的領域:身支度、生活管理、学校生活、仕事、金銭管理など
本事例では、A は明るく学校生活に大きな問題はなかった一方で、全科目の成績が学年最下位付近で低迷しています。これは特定の教科だけでなく、学習全般の困難を示しています。
また、身支度に時間がかかる、遅刻が多い、フォーメーションの理解に苦労する、金銭の不適切な貸借で自分の不利益に気付けないといった点は、実用的領域や社会的領域の適応機能の弱さを示唆します。
一方で、A には優れた身体能力があり、バレーボールでチームに貢献しています。軽度知的発達症では、すべての能力が低いわけではなく、得意な活動や強みがあることも重要です。
事例問題で見るポイント
知的発達症では、知能検査の数値だけでなく、学習、生活管理、対人関係、金銭理解、学校生活での適応を総合して考えます。
公認心理師としての注意点
A の強みであるバレーボールへの意欲や身体能力を大切にしながら、学習面、進路選択、金銭管理、生活スキルについて具体的な支援を考えることが重要です。
この段階では、心理検査や発達歴、学校での様子、家庭での生活機能を確認し、本人の自己理解と合理的配慮につなげていくことが求められます。
選択肢の確認
1.限局性学習症
判定:誤り。
限局性学習症は、読み、書き、計算など特定の学習領域に著しい困難がある状態です。A は全ての科目で成績が学年最下位付近で低迷しており、身支度や金銭判断など学習以外の適応面にも困難がみられます。特定領域に限られた学習困難としては説明しにくいため、最も適切ではありません。
2.軽度知的発達症
判定:最も適切。
軽度知的発達症では、知的機能と適応機能に困難がみられます。A は小学生の頃から学業全般が低迷し、身支度や時間管理、社会的判断、金銭面での理解にも困難が示されています。一方で、部活動では身体能力を活かして貢献できており、軽度知的発達症の理解として最も適切です。
3.高次脳機能障害
判定:誤り。
高次脳機能障害は、脳損傷後に記憶、注意、遂行機能、社会的行動などに障害が生じる状態です。本事例では、事故や脳疾患などの後天的な脳損傷の情報は示されておらず、小学生の頃から困難が続いています。したがって最も適切ではありません。
4.注意欠如多動症
判定:誤り。
注意欠如多動症では、不注意、多動性、衝動性が中心になります。A には遅刻やフォーメーション理解の困難がありますが、全科目の長期的な低迷や金銭面での社会的判断の弱さを含めて考えると、注意欠如多動症だけでは説明しにくく、軽度知的発達症がより適切です。
5.自閉スペクトラム症
判定:誤り。
自閉スペクトラム症では、社会的コミュニケーションの困難、対人相互作用の困難、限定された興味や反復行動、感覚の特徴などがみられます。本事例では、明るい性格で学校生活に問題はなかったとされており、自閉スペクトラム症に特徴的な対人コミュニケーションの質的困難は中心ではありません。
覚えるポイント
- 軽度知的発達症では、知的機能と適応機能の両方を確認します。
- 全般的な学業低迷、金銭理解の弱さ、生活管理の困難は重要な手がかりです。
- 限局性学習症は、読み書き計算など特定領域の学習困難が中心です。
- 支援では、本人の強みを活かしつつ、生活スキル、進路、合理的配慮を検討します。
9AM72
問題文
[9AM72]
6 歳の男児A、小学 1 年生。入学時から授業中に離席したり、周囲の児童に大きな声で話しかけたりすることが目立ち、授業の進行を妨げる状態が続いている。担任教師Bは、その都度注意をしていたが、Aは、にやりとするだけで改善が認められなかったため、スクールカウンセラーCに相談した。Cによる観察では、Aは注意の持続が難しく、授業中、突然離席することが多い一方で、座って課題に取り組む時間も確認された。また、Aは自分の関心がある活動には集中できるが、こだわりが強く、一部のおもちゃ以外、興味を持てないものにほとんど反応しない傾向も認められた。
CがBに提案する、Aへの支援法として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.Aが離席した際には、集団のルールをAと確認する。
- 2.Aが集中できなかった課題の内容を記録し、保護者に伝達する。
- 3.Aの離席行動について記録を取り、授業後にAと一緒に行動を振り返る。
- 4.Aが座って課題に取り組めているとき、その場で「いいね」と声かけを行う。
- 5.Aと授業中は離席しないよう約束し、離席しなかった日は下校時にスタンプを与える。
答え
- 4.Aが座って課題に取り組めているとき、その場で「いいね」と声かけを行う。
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、授業中に離席や大声での話しかけがみられる児童に対し、応用行動分析の視点から、望ましい行動を増やす支援を選ぶことが問われています。
A には離席行動がありますが、座って課題に取り組めている時間も確認されています。そのため、問題行動への注意だけでなく、望ましい行動が起きている瞬間に強化することが重要です。
解説
A は小学1年生で、授業中に離席したり、大きな声で周囲の児童に話しかけたりしています。担任教師 B はその都度注意していましたが、A はにやりとするだけで改善がありませんでした。
この状況では、教師の注意そのものが A にとって注目という強化になっている可能性があります。離席するたびに教師が反応すると、結果的に離席行動が維持されることがあります。
一方、C の観察では、A が座って課題に取り組む時間も確認されています。したがって、A が望ましい行動をしているときに、すぐに肯定的な声かけを行うことが有効です。
即時強化は、特に年齢が低い児童や注意の持続が難しい児童にとって重要です。望ましい行動と結果のつながりが分かりやすくなるためです。
教育領域での注意点
問題行動を減らすだけでなく、代わりに増やしたい行動を明確にして、その行動が起きたときにすぐ強化します。
アセスメントの視点
離席行動が、注目を得るためなのか、課題から逃れるためなのか、感覚刺激を得るためなのかを観察し、支援を調整します。
本問では、A が座って課題に取り組めているときに、その場で「いいね」と声をかける対応が最も適切です。
選択肢の確認
1.Aが離席した際には、集団のルールをAと確認する。
判定:誤り。
離席した際にその都度ルール確認をすると、A にとって教師から注目を得る機会になり、離席行動を強めてしまう可能性があります。ルール確認が必要な場合もありますが、本事例では望ましい行動をその場で強化する支援が優先されます。
2.Aが集中できなかった課題の内容を記録し、保護者に伝達する。
判定:誤り。
課題内容を記録し、保護者と情報共有することは補助的には有用です。しかし、それだけでは授業中の望ましい行動を増やす直接的な支援になりにくいです。まずは教室内で、座って取り組めている行動を即時に強化することが重要です。
3.Aの離席行動について記録を取り、授業後にAと一緒に行動を振り返る。
判定:誤り。
行動記録はアセスメントとして有用ですが、授業後の振り返りは即時性に欠けます。A は小学1年生で注意の持続が難しいため、行動直後に望ましい行動を強化する方が効果的です。
4.Aが座って課題に取り組めているとき、その場で「いいね」と声かけを行う。
判定:最も適切。
A が座って課題に取り組めている望ましい行動を、その場で肯定的に強化する対応です。問題行動に注目するのではなく、望ましい行動を増やす支援として最も適切です。
5.Aと授業中は離席しないよう約束し、離席しなかった日は下校時にスタンプを与える。
判定:誤り。
約束やスタンプは支援として使われることがありますが、下校時のスタンプでは強化のタイミングが遅く、A にとって「どの行動がよかったのか」が分かりにくい可能性があります。本事例では、その場での具体的な声かけがより適切です。
覚えるポイント
- 問題行動だけでなく、望ましい行動が出ている瞬間を見つけて強化します。
- 注意を向けること自体が、問題行動を強化する場合があります。
- 小学1年生や注意が続きにくい児童には、即時で具体的なフィードバックが有効です。
- 教室支援では、観察、機能分析、環境調整、肯定的強化を組み合わせます。
9AM73
問題文
[9AM73]
15 歳の男子A、中学 3 年生。数学の授業内容は理解できるが、テストでケアレスミスが多いことを気にしていた。教師がいくつかの学習方略を教えたところ、Aは「今月中に、毎週の小テストでケアレスミスを 1 つ以下にする」という目標を自ら設定し、問題を解くときには「注意すべき箇所に印を付ける」、「必ず検算する」という方略を用いることに決めた。毎日の宿題でもそれらの方略を用いるよう意識した。毎週の小テスト後、ケアレスミスの数を数え、どこでミスをしたかを自ら確認し、学習計画を見直しながら、意欲を維持している。
このAの取組の背景となる心理学概念として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.制御焦点
- 2.潜在学習
- 3.発見学習
- 4.自己調整学習
- 5.アンダーマイニング効果
答え
- 4.自己調整学習
解説
正答
4
この問題のポイント
この問題では、学習者が自分で目標を設定し、方略を選び、結果をモニタリングし、学習方法を調整していることから、自己調整学習を選ぶことが求められています。
A は、目標設定、方略使用、自己モニタリング、計画の見直し、意欲の維持を行っています。
解説
自己調整学習とは、学習者が自分の学習を主体的に調整する過程です。単に勉強するだけでなく、自分の目標、学習方略、進み具合、結果、動機づけを自分で確認しながら学習を進めます。
本事例では、A は数学の授業内容は理解できるものの、テストでケアレスミスが多いことを気にしています。教師から学習方略を教えられた後、A は自ら次のような取組をしています。
- 「今月中に、毎週の小テストでケアレスミスを1つ以下にする」という目標を設定する。
- 「注意すべき箇所に印を付ける」「必ず検算する」という方略を決める。
- 宿題でも方略を使うよう意識する。
- 小テスト後にミスの数や内容を確認する。
- 学習計画を見直す。
- 意欲を維持する。
これは、自己調整学習の典型です。
教育領域での注意点
学習支援では、正解を教えるだけでなく、学習者が自分で目標を立て、方法を選び、結果を振り返れるよう支援することが重要です。
自己調整学習では、認知的方略だけでなく、メタ認知や動機づけの調整も重要です。A は自分のミスを確認し、計画を見直しているため、メタ認知的な学習調整も行っています。
選択肢の確認
1.制御焦点
判定:誤り。
制御焦点は、目標達成において、促進焦点と予防焦点のように、何を重視して行動するかに関する動機づけの理論です。A の取組には目標志向性も含まれますが、学習目標、方略、モニタリング、見直しを総合して説明する概念としては自己調整学習が適切です。
2.潜在学習
判定:誤り。
潜在学習は、明確な強化がなくても学習が成立しており、必要な場面でその学習が表れることを指します。本事例では、A が意識的に目標を設定し、方略を用い、結果を確認しているため、潜在学習ではありません。
3.発見学習
判定:誤り。
発見学習は、学習者が自ら法則や概念を発見するように進める学習です。本事例では、数学内容の概念を発見することではなく、ケアレスミスを減らすために学習を自己管理している点が中心です。
4.自己調整学習
判定:最も適切。
自己調整学習は、学習者が自分で目標を設定し、学習方略を使い、成果をモニタリングし、必要に応じて学習計画を見直しながら学ぶことを指します。A の取組に合致します。
5.アンダーマイニング効果
判定:誤り。
アンダーマイニング効果は、内発的に動機づけられていた活動に外的報酬を与えることで、かえって内発的動機づけが低下する現象です。本事例では、外的報酬による動機づけ低下は示されていません。
覚えるポイント
- 自己調整学習は、目標設定、方略使用、自己モニタリング、計画修正、動機づけ調整を含みます。
- 学習者が自分の学びを管理しているかが判断のポイントです。
- 潜在学習は、意識的な目標設定なしに成立する学習です。
- アンダーマイニング効果は、外的報酬による内発的動機づけの低下です。
9AM74
問題文
[9AM74]
30 歳の女性A、会社員。ジムで知り合った男性Bと 2 年間交際していた。しかし、半年前、妻と子どもを大切にしたいという理由で、Bから一方的に別れを告げられた。Bが既婚者であることを知らされていなかったAは激怒し、その直後から、SNS にBの誹謗中傷を執ように投稿するようになった。さらに、Bの自宅を突き止め、火を放とうとしたところを発見され、放火未遂の容疑で逮捕・起訴された。取り調べに対しAは、「私をだましたBを許せず、Bの幸せを壊してやりたかった」と語った。Aは以前にも恋愛問題でトラブルを起こしたことがある。
Aの情状鑑定を依頼された公認心理師がテストバッテリーに含めるべき心理検査として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.TEG
- 2.CAPS
- 3.P-F スタディ
- 4.Vineland-Ⅱ
- 5.ベンダー・ゲシュタルト検査
答え
- 3.P-F スタディ
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、情状鑑定において、A の欲求不満場面での反応様式や攻撃性の方向を把握する心理検査として、P-F スタディを選べるかが問われています。
A は、交際相手 B が既婚者であったことを知らされず、一方的に別れを告げられた後、誹謗中傷や放火未遂に至っています。怒り、恨み、攻撃性の表れ方を評価する視点が重要です。
解説
P-F スタディは、欲求不満場面における反応の仕方を評価する投映法です。P-F は Picture-Frustration の略で、日常的な欲求不満場面が描かれた絵に対して、登場人物が何と言うかを回答してもらいます。
この検査では、欲求不満に対して、怒りや責任をどこに向けるか、どのように対処するかを検討します。例えば、他者を責める、自己を責める、問題解決を図る、攻撃的に反応するなどの傾向が評価の手がかりになります。
本事例では、A は B にだまされたと感じ、SNS で執ように誹謗中傷を行い、さらに B の自宅に放火しようとしています。情状鑑定では、事件に至った心理的背景、怒りや欲求不満への反応、対人葛藤時の対処様式、攻撃性の方向などを把握する必要があります。
司法・犯罪領域での注意点
情状鑑定では、心理検査の結果だけで結論を出さず、生活歴、犯行状況、供述、精神状態、対人関係、再犯リスクなどを総合して検討します。
アセスメントの視点
テストバッテリーでは、目的に応じて複数の検査を組み合わせます。本問では、欲求不満場面での反応様式をみる P-F スタディが最も適切です。
選択肢の確認
1.TEG
判定:誤り。
TEG は、交流分析に基づいて自我状態の特徴を把握する質問紙です。対人傾向の理解に役立つ場合はありますが、本事例の情状鑑定で欲求不満場面における攻撃性や反応様式を把握する検査としては、P-F スタディの方がより適切です。
2.CAPS
判定:誤り。
CAPS は、PTSD の評価に用いられる面接尺度です。A にはトラウマ体験に関連した侵入症状、回避、過覚醒などが中心として示されていません。情状鑑定で本事例の怒りや欲求不満反応を評価する目的には適しません。
3.P-F スタディ
判定:最も適切。
P-F スタディは、欲求不満場面での反応様式を評価する投映法です。A のように対人葛藤や裏切られた体験に対して強い怒りや攻撃行動を示した事例では、欲求不満への反応、攻撃性の方向、責任の帰属などを把握する検査として適切です。
4.Vineland-Ⅱ
判定:誤り。
Vineland-Ⅱ は、適応行動を評価する尺度です。発達障害や知的発達症などで、コミュニケーション、日常生活スキル、社会性などを把握する際に用いられます。本事例の情状鑑定で中心となる怒りや欲求不満反応の評価には最も適切ではありません。
5.ベンダー・ゲシュタルト検査
判定:誤り。
ベンダー・ゲシュタルト検査は、視覚運動統合や脳機能の状態を把握するために用いられることがあります。本事例では、視覚運動統合や器質的脳障害の評価が中心ではなく、対人葛藤に伴う欲求不満反応の評価が重要です。
覚えるポイント
- P-F スタディは、欲求不満場面での反応様式を評価します。
- 攻撃性の方向、責任の向け方、対処の仕方をみる手がかりになります。
- 情状鑑定では、検査結果だけでなく、犯行状況、生活歴、供述、精神状態を総合します。
- CAPS は PTSD、Vineland-Ⅱ は適応行動、TEG は自我状態の把握に関係します。
9AM75
問題文
[9AM75]
33 歳の男性A、会社員。糖尿病と高血圧の治療で内科クリニックに通院中である。Aは初診の際、ぶっきらぼうな態度に終始したが、主治医との関係が深まるにつれて、少しずつ自らの過去について語り始めた。それによると、Aの両親は不仲で、幼少期は常に父親の虐待を受けていた。中学 3 年生のとき、両親が離婚し、中学校卒業後、非行集団に加わった。21 歳のときに強盗致傷容疑で逮捕され、有罪判決を受け、6 年間服役した。しかし、出所後、保護司の支援を受け、職業訓練校でプログラミングを学んだ。現在は、保護司の知人に誘われ、小さなベンチャー企業に勤務している。
この事例の背景を説明する用語として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.直線的因果律
- 2.社会的比較理論
- 3.小児期逆境体験
- 4.家族ホメオスタシス
- 5.ストレス脆弱性モデル
答え
- 3.小児期逆境体験
解説
正答
3
この問題のポイント
この問題では、A の幼少期からの背景を説明する概念として、小児期逆境体験を選べるかが問われています。
A には、両親の不仲、父親からの虐待、両親の離婚、その後の非行集団への加入、犯罪、服役という経過が示されています。
解説
小児期逆境体験は、子どもの時期に経験する虐待、ネグレクト、家庭内暴力、家族の精神疾患、親の離婚、家族の服役、家庭の機能不全など、発達に大きな影響を及ぼしうる逆境的体験を指します。
本事例では、A は幼少期に父親から常に虐待を受け、両親は不仲でした。中学3年生のときには両親が離婚し、その後、非行集団に加わっています。これらは、子どもの安全感、愛着、自己評価、対人信頼、感情調整、社会的適応に影響しうる背景です。
A は21歳で強盗致傷容疑で逮捕され、6年間服役しています。一方で、出所後は保護司の支援を受け、職業訓練校でプログラミングを学び、現在は就労しています。小児期逆境体験は、その後の困難を理解する重要な視点ですが、A の人生を一方向に決定するものではありません。
司法・犯罪領域での注意点
小児期の逆境体験は、非行や犯罪の背景理解に役立ちます。ただし、逆境体験があるから犯罪をする、と単純に決めつけてはいけません。保護因子や回復過程も同時に見ます。
公認心理師としての注意点
事例理解では、リスク要因だけでなく、保護司の支援、職業訓練、就労継続などの保護因子にも注目します。
本問では、幼少期の虐待や家庭の不安定さが事例背景として示されているため、小児期逆境体験が最も適切です。
選択肢の確認
1.直線的因果律
判定:誤り。
直線的因果律は、ある原因が一方向にある結果を生むという考え方です。本事例では、虐待、家庭不和、離婚、非行、服役、保護司の支援、就労など複数の要因が関係しています。事例背景を表す用語としては小児期逆境体験が適切です。
2.社会的比較理論
判定:誤り。
社会的比較理論は、人が自分の能力や意見を他者との比較によって評価するという理論です。本事例の幼少期の虐待や家庭環境、非行歴を説明する用語ではありません。
3.小児期逆境体験
判定:最も適切。
小児期逆境体験は、虐待、ネグレクト、家庭内の不和、親の離婚など、子どもの発達に影響を及ぼしうる逆境的体験を指します。A の幼少期の父親からの虐待や両親の不仲、離婚などを説明する用語として最も適切です。
4.家族ホメオスタシス
判定:誤り。
家族ホメオスタシスは、家族システムが一定の均衡状態を保とうとする働きを指します。家族療法の文脈で重要ですが、本事例の幼少期の虐待や逆境体験の背景を表す用語としては小児期逆境体験が適切です。
5.ストレス脆弱性モデル
判定:誤り。
ストレス脆弱性モデルは、個人の脆弱性にストレスが加わることで精神疾患などが生じるという考え方です。本事例では精神疾患の発症モデルよりも、幼少期の虐待や家庭機能不全といった逆境体験が背景として示されています。
覚えるポイント
- 小児期逆境体験には、虐待、ネグレクト、家庭不和、親の離婚などが含まれます。
- 逆境体験は、感情調整、対人関係、健康、非行リスクなどに影響しうる背景です。
- 逆境体験は運命を決めるものではなく、保護因子や支援による回復も重要です。
- 司法・犯罪領域では、リスク要因と保護因子を両方見ることが大切です。
9AM76
問題文
[9AM76]
28 歳の女性A、会社員。仕事に集中できなくなったと訴え、心療内科クリニックを受診した。Aは半年前に配置転換があり、多忙でストレスの多い部署に移った。その頃から、頭痛が次第に増えた。 2 か月前から業務中に注意が散漫になり、ミスが多くなっている。頭痛は週末に多い。右側頭部に強い拍動性の痛みがあり、吐き気を伴っている。市販の鎮痛薬を服用しているが、十分な効果は得られていない。最近は、頭痛の頻度が週 2 回から 3 回に増え、仕事を休むこともあった。Aは、「営業成績が下がるのでは」と不安を抱え、夜眠れないこともあるという。神経学的検査で異常は認められなかった。
Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.うつ病
- 2.片頭痛
- 3.群発頭痛
- 4.緊張型頭痛
- 5.全般不安症
答え
- 2.片頭痛
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、頭痛の性質から片頭痛を見分けることが問われています。
A の頭痛は、右側頭部の強い拍動性の痛みで、吐き気を伴い、仕事を休むほどです。これは片頭痛の特徴に合います。
解説
片頭痛は、発作性に生じる中等度から重度の頭痛で、拍動性の痛み、片側性、悪心や嘔吐、光や音への過敏、日常動作による悪化などがみられることがあります。
本事例では、A は配置転換後、多忙でストレスの多い部署に移り、その頃から頭痛が増えています。頭痛は週末に多く、右側頭部に強い拍動性の痛みがあり、吐き気を伴っています。頻度も週2回から3回に増え、仕事を休むこともあります。
神経学的検査で異常は認められていないため、脳腫瘍や神経学的疾患を強く示す情報はありません。ストレス、不眠、疲労、生活リズムの乱れは片頭痛の誘因になることがあります。
事例問題で見るポイント
頭痛では、痛みの部位、性質、持続時間、頻度、吐き気、光や音への過敏、神経症状、生活への支障、薬剤使用状況を確認します。
医療・保健領域での注意点
頭痛が増悪している場合や市販薬で十分な効果がない場合、公認心理師は心理的ストレスだけに還元せず、医師による評価と治療方針の確認を重視します。
A には不安や不眠、仕事のミスもありますが、中心は片側の拍動性頭痛と吐き気を伴う反復性頭痛です。そのため、片頭痛が最も適切です。
選択肢の確認
1.うつ病
判定:誤り。
うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの低下、睡眠や食欲の変化、疲労感、集中困難などがみられます。A には集中困難や不眠がありますが、中心症状は右側頭部の拍動性頭痛と吐き気であり、片頭痛が最も適切です。
2.片頭痛
判定:最も適切。
片頭痛では、片側性、拍動性、中等度から重度の頭痛、吐き気、日常生活への支障などがみられます。A の右側頭部の強い拍動性の痛み、吐き気、反復する頭痛、仕事を休むほどの支障は片頭痛に合致します。
3.群発頭痛
判定:誤り。
群発頭痛は、片側の眼窩部や側頭部に激しい痛みが一定期間集中的に起こり、流涙、結膜充血、鼻閉、鼻汁、眼瞼下垂などの自律神経症状を伴うことが多い頭痛です。A にはそのような眼周囲の激痛や自律神経症状は示されていません。
4.緊張型頭痛
判定:誤り。
緊張型頭痛は、締め付けられるような両側性の痛みが比較的多く、片頭痛ほど強い拍動性や吐き気を伴わないことが多いです。A の右側頭部の強い拍動性の痛みと吐き気からは、片頭痛がより適切です。
5.全般不安症
判定:誤り。
全般不安症では、さまざまな出来事への過剰な不安や心配が持続します。A は営業成績への不安や不眠を訴えていますが、主訴は拍動性頭痛と吐き気を伴う反復性頭痛です。病態理解としては片頭痛が最も適切です。
覚えるポイント
- 片頭痛は、片側性、拍動性、吐き気、生活への支障が手がかりです。
- 緊張型頭痛は、締め付けられるような両側性の痛みが典型です。
- 群発頭痛は、眼周囲の激痛と自律神経症状が特徴です。
- 心理的ストレスは頭痛を悪化させることがありますが、身体疾患としての評価も重要です。
9AM77
問題文
[9AM77]
35 歳の女性A、事務職。Aと上司Bは、健康管理室の公認心理師Cによる職場復帰後のフォローアップを受けている。Aは真面目で、Bの信任も厚く、新しい業務を任されていた。半年前から、時間内に仕事が終わらないなど業務が過重になり、不眠と抑うつ感が出現し、うつ病の診断で、 3 か月間休業した。症状の改善がみられたため、時間外労働を禁止する就業制限を行って職場復帰をした。Aによると、職場復帰後、 1 週間ほどは問題がなかったが、再び不眠が出現したという。
この段階におけるCの対応として、適切でないものを 1 つ選べ。
選択肢
- 1.Bに、Aの勤務状況や業務遂行能力について尋ねる。
- 2.Aに、主治医と相談して再休職の手続をとるように勧める。
- 3.Bに、職場の同僚に過度な負担がかかっていないかを尋ねる。
- 4.Bに、職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認する。
- 5.Aに、病状や今後の見通しについて、主治医からどのように聞いているかを尋ねる。
答え
- 2.Aに、主治医と相談して再休職の手続をとるように勧める。
解説
正答
2
この問題のポイント
この問題では、うつ病で休業後に職場復帰した労働者に対するフォローアップ場面で、この段階では適切でない対応を選ぶことが求められています。
A は職場復帰後 1 週間ほどは問題がありませんでしたが、再び不眠が出現しています。ここで直ちに再休職の手続を勧めるのではなく、勤務状況、復職支援プラン、主治医の見解、職場負荷を確認することが必要です。
解説
A は、業務過重を背景に不眠と抑うつ感が出現し、うつ病の診断で3か月休業しました。症状改善後、時間外労働を禁止する就業制限を行って職場復帰しています。
職場復帰後、不眠が再び出現したことは重要なサインです。ただし、この段階で公認心理師 C がすぐに「再休職の手続をとるように」と勧めるのは早すぎます。
まず確認すべきことは、次のような点です。
- A の勤務状況や業務量は復職支援プラン通りか。
- 時間外労働禁止などの就業制限が守られているか。
- A の業務遂行能力や疲労感はどの程度か。
- 上司 B や同僚に過度な負担が生じていないか。
- A は主治医から病状や見通しをどのように説明されているか。
- 産業医や主治医と連携すべき状況か。
産業・労働領域での注意点
復職支援では、本人の症状だけでなく、業務負荷、就業制限、職場環境、上司の対応、同僚への影響、主治医・産業医との連携を含めて判断します。
公認心理師としての注意点
公認心理師が独断で休職や再休職を決めるのではありません。本人の状態を丁寧に確認し、必要に応じて主治医や産業医、人事労務と連携して支援方針を検討します。
本問は「適切でないもの」を選ぶ問題です。選択肢2は、情報収集や支援プランの確認を十分に行う前に再休職の手続きを勧めているため、この段階では適切ではありません。
選択肢の確認
1.Bに、Aの勤務状況や業務遂行能力について尋ねる。
判定:適切。
A の再不眠が、業務負荷や職場での遂行状況と関係している可能性があります。上司 B に勤務状況や業務遂行能力を確認することは、復職後フォローアップとして適切です。ただし、本人の同意や情報共有範囲への配慮が必要です。
2.Aに、主治医と相談して再休職の手続をとるように勧める。
判定:正答。適切でない。
再び不眠が出現していることは重要ですが、この段階で直ちに再休職の手続を勧めるのは早すぎます。まず、症状の程度、勤務状況、復職支援プランの実施状況、主治医の見解、就業上の配慮を確認する必要があります。再休職の判断は、本人、公認心理師だけで決めるものではなく、主治医や産業医、人事労務などとの連携が必要です。
3.Bに、職場の同僚に過度な負担がかかっていないかを尋ねる。
判定:適切。
復職支援では、A 本人だけでなく、職場全体の業務配分や同僚への負担も確認する必要があります。同僚に過度な負担がかかると、職場内の不満や支援体制の崩れにつながる可能性があるため、確認は適切です。
4.Bに、職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認する。
判定:適切。
A は時間外労働を禁止する就業制限で復帰しています。復職支援プランが守られているか、業務量が段階的に調整されているかを確認することは非常に重要です。再不眠の背景を把握するためにも適切な対応です。
5.Aに、病状や今後の見通しについて、主治医からどのように聞いているかを尋ねる。
判定:適切。
A が主治医から病状や今後の見通しをどのように説明されているかを確認することは、本人の理解や不安を把握するうえで適切です。必要に応じて、本人の同意を得たうえで主治医や産業医と連携することも検討します。
覚えるポイント
- 復職後に不眠が再出現した場合、すぐに再休職と決めず、まず状況確認を行います。
- 確認すべき点は、症状、勤務状況、業務負荷、復職支援プラン、就業制限、主治医の見解です。
- 再休職の判断は、公認心理師が単独で進めるものではありません。
- この問題では「適切でないもの」を選ぶため、選択肢2が正答です。
